No.191
1997.2

ISASニュース 1997.2 No.191

- Home page
- No.191 目次
- 研究紹介
- お知らせ
- ISAS事情
- でっかい宇宙のマイクロプロセス
+ 東奔西走
- パソコン活用術
- いも焼酎
- 編集後記

- BackNumber

渉外・教育・広報・大概

宇宙科学研究所   的川泰宣

 昨年12月5日に成田を発って,12月14日に羽田に降り立つまで,ついに東京には一度も立ち寄れないめまぐるしい旅となった。成田・ヒューストン・ココアビーチ・成田・福岡・内之浦・鹿児島・内之浦・羽田。 出張は,長くても一か所に滞在するのならば気が楽だが、今回のように猫の目のように滞在場所が変わっていくと,非常に忙しく切なくなる。とくに成田から直接飛んだ福岡のホテルで洗濯をしている時の侘しさは表現のしようもないものだった。
 NASAでは,広報と渉外と教育とは別の部署によって管轄されている。今回の連続出張は,図らずもこのすべての分野にわたるものとなった。


【広報】

 最初の目的地ヒューストンでは,NASAの広報を調査する機会があった。NASAの広報活動は,その創立当初から「国民は知る権利があり,NASAは報せる義務がある」という確固たる基礎がある。アポロ計画の頃は,NASAの活動も上昇期にあり,放っておいても宇宙活動への根強い支持があったので,広報の義務は事実を正直にマス・メディアに伝えることで事足りた。それがチャレンジャー事故の後になると,NASAのトップが事実を隠したりする態度も出てきたため,それまで「宇宙プロ」として情熱を持って取材してきたフリーの記者が愛想づかしをして他の分野に去っていった。その反省に立って,現在NASAは国民の信頼を回復すべく必死の努力を開始している。その広報活動から,国民への義務意識の薄い日本の宇宙関係者が学ぶことは多い。マス・メディアの与える影響は大きい。アメリカのマス・メディアに比べて,日本のそれは若干自虐的な性格を持っていることは否めないが,そこはお互いに我慢をして,学びながら共に成長する態度が大切であることを実感した。
 毛利衛・土井隆雄・若田光一の三飛行士と会った。特に今年シャトルで飛ぶことに決まった土井さんの明るさが目立った。飛行士に選抜されてから11年,待ちに待った宇宙へ行くことが決定されて,晴れ晴れとした輝きに溢れていた。よかったねえ。


【渉外】

 ヒューストンの次はIACG(宇宙科学関係機関連絡協議会)である。IACGは,ハレー彗星探査に関わる1981年以来の4つの宇宙機関の定期協議の場。4つの機関というのは,NASA,ESA(ヨーロッパ宇宙機関),IKI(ロシア宇宙研究所),ISAS(宇宙科学研究所)である。ハレーの去った1986年以降は,太陽地球系科学が協力の柱となった。
 太陽地球系科学の諸ミッションもほぼ100%打ち上がった。今年のIACGでは次の4機関の協力の柱を決めるという大切な課題があった。それは月・火星探査をふくむ太陽系科学に落ち着いた。この件は別稿を参照されたい。久しぶりで訪ねたココアビーチの中華料理屋「バンブー・パンダ」のチャンポンが、まあまあの味だったので救われた。


【教育】

 12月14日の夕方,成田に着いた。東京を横目で見ながら福岡へ飛ぶ。ちょうど土・日にかかったので,日本宇宙少年団の子どもたちの合宿学習の応援に駆けつけた。場所は福岡郊外の夜須少年自然の家。水ロケット,星空観察,太陽系旅行ゲームと,盛り沢山の楽しい催し。若く頼もしいリーダーたちが日本の各地で続々と育ちつつある。世代のギャップを埋めていく努力をもっと旺盛に展開しなければ,科学技術立国は危うい。100人を越す子どもたちの輝く瞳がまぶしい。

- Home page
- No.191 目次
- 研究紹介
- お知らせ
- ISAS事情
- でっかい宇宙のマイクロプロセス
+ 東奔西走
- パソコン活用術
- いも焼酎
- 編集後記

- BackNumber

【渉外】

 さてどんじりに控えしは……鹿児島県と内之浦町の協力会。まずは内之浦へ走って新精測レーダーの竣工式。21世紀の宇宙科学を支える力強い味方の誕生である。19日は鹿児島県の協力会。協力会もここ数年はマンネリ化の気配を感じている。協力される側としての情熱・誠意がもっと前面に出る会議にしなければ。20日が内之浦町の協力会。やはり同じことを感じる。21日,KSC職員の忘年会。新年のバイパー・ロケット打上げに向けて,職員の意気軒昂。この意気込みは1月に確かに花開いた。頼もしい仲間たち。宴たけなわの時に新聞社からの電話,C・セーガン氏逝去。


【大概】

 内之浦から羽田へ移動したのが21日。宇宙学校,来年に開催されるコスパー総会(名古屋)の準備,打上げの窓を拡げるための漁業者との折衝,……まだまだ対外協力の東奔西走はつづく。
 宇宙科学研究所の対外協力室はしばしば「大概」協力室とも呼ばれる。誰に頼めばいいか分からない問題は,対外協力室に「つい」来てしまうのである。
 渉外・教育・広報・大概……そのいずれもが管理部や広報委員会その他の強力な同志がいなければどうしようもない。口では強がりを言っても,本当は心から感謝しているのです,皆様。
 そして今回の旅ガラスも、対外協力室とデータ・センターの面々との久しぶりの対面で心がなごんだ。

(まとがわ・やすのり)


#
目次
#
ISAS流パソコン活用術
#
Home page

ISASニュース No.191 (無断転載不可)