宇宙科学談話会

ISAS Space Science Colloquium & Space Science Seminar

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国際協力で推進する核融合エネルギー研究開発の新展開

栗原 研一(Kenichi KURIHARA)
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 核融合エネルギー研究開発部門 那珂核融合研究所

核融合反応は、太陽などの恒星の中で起こっている反応です。同様の反応を地上で実現する核融合エネルギーは、容易に反応を止められるので安全性に優れている、燃料が枯渇することのない重水素である等の特長を備えており、未来を切り拓くエネルギー源といえます。研究開始は古く、1950年代以降、世界中で様々な核融合の実現方法が考案され、特に原子核がむき出しになる状態-「プラズマ」-を高温にして閉じ込める装置が、試されては消えて行きました。半世紀近くプラズマと格闘した結果、プラズマを磁場で閉じ込める「トカマク方式」が、核融合発電への最有力候補との共通認識が出来上がりました。しかしその装置建設には高度な製造技術と巨額の経費が必要になるため、世界の主要国(日本、欧州、アメリカ、ロシア、中国、韓国、インド)が協力して「国際熱核融合実験炉ITER (発音は「イーター」)」を作ることで合意し、2007年から、南仏で建設を開始しています。目指すは、50万キロワットの核融合エネルギーの発生を世界で初めて実証することです。2025年の運転開始が近づき、構成機器類が着々と出来上がって来ていて、直径30m高さ30mの巨大な本体の組み立ても間近となっている中で、この装置製作と建設が大きく進展しています。一方、このITER計画と並行して、魅力的な核融合発電の早期実現に必要不可欠な技術を開発するため、日欧だけの協力プロジェクトを2007年より推進しています。その一つは直径20m高さ15m超伝導トカマクJT-60SAの建設プロジェクトです。その組立ては順調に進み、いよいよ来年2020年3月に装置が完成、半年の調整後に運転に移行する予定です。完成まで残り1年を切った今、装置の組立ては最終段階に入りました。

講演では、核融合研究の歴史から始まり、エネルギー実現に向けて様々な困難を克服してきたことにも触れます。上記2つの巨大プロジェクト等が大きく進む中、核融合発電実現へ向けた研究開発戦略を紹介します。

Place: A 2F Conf. hall(1236) / A棟2階会議場(1236号室)