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2010年度第二次気球実験の実施について

【実験期間】8月16日(月)〜9月18日(土)(実験予備期間を含む)
【実験場所】大樹航空宇宙実験場(北海道広尾郡大樹町)

9月8日のBS10-06実験を持って第二次実験を全て終了しました。

B10-01 気球を利用した超音速飛翔体の飛行実験(その1)

ジェットエンジンを用いた二段式スペースプレーンの開発を目指した研究の一ステップとして、スペースプレーンの実現に必要な主要技術を実証するための気球を利用した飛行実験システムを構築する。さらに、気球から供試体を落下させ、最大マッハ数2程度の超音速飛行状態において空気吸い込み式エンジンを着火、作動させ、水平尾翼のスケジュール操舵によって空気力を用いた機体の引き起こし動作を行って、水平滑空状態に移行することにより、ジェットエンジン技術の超音速(マッハ2)までの飛行実証を行う。
なお、本実験は2010年度第一次気球実験で予定し、気象条件が不適のため実施できなかったものである。

B10-02 成層圏大気のクライオサンプリング

成層圏での大気循環や大気微量成分の反応過程を知るために、-269℃の液体ヘリウムを用いて希薄な大気を固化して大量に採集するクライオサンプラーを用いて、35kmから10kmまでの大気試料を高度別に採集する。さまざまな大気成分の濃度および同位体を測定し、成層圏でのそれらの高度分布や経年変化の様子を詳しく調べる。これまでの観測では成層圏における同位体異常や重力分離効果などを発見しており、今回は地球温暖化にともなって成層圏の大気循環がどのように変化しつつあるかを中心テーマとし、温室効果ガス観測衛星「いぶき」の検証に資する観測データを取得すると同時に、さらに新たな発見も目指す。

B10-03 俵型気球の飛翔試験

高度35km程度を浮遊する飛翔経路を制御可能なパワードバルーンの実現には、通常のゼロプレッシャー気球より空気抵抗が一桁小さな形状の気球を必要とする。このような気球形状のひとつであるカボチャ型圧力気球を延長した形状である俵型圧力気球の開発の一環として、満膨張体積5,000m3の小型モデル機の飛翔性能試験を行い、成層圏環境下での気球の膨張過程を確認する。

BS10-06 高高度薄膜気球飛翔性能試験および成層圏オゾン・大気重力波の観測

これまでの折幅80cmのポリエチレンフィルムに比べて幅広の折幅140cmの3.4μm厚薄膜ポリエチレンフィルムを使用して、同じ満膨張体積でありながらゴア数を減らした高高度薄膜気球の飛翔性能試験を行う。ゴア数を減じることによって、製造コストの低下と気球重量の減少を実現できると考えており、高度50kmまでの宇宙科学観測をより容易に実施することを目指す。
同時に、2010年度第一次気球実験において観測機器の不具合により実施に至らなかった、上部成層圏オゾンの年々変動と大気重力波の高度毎の特徴を明らかにするための高度25km以下で精度の高いECCオゾンゾンデと高度20km以上で精度の高い光学オゾンゾンデを組み合わせた観測を行う。実績あるフィルター型光学ゾンデに加えて、新たに開発した小型分光計を用いた光学オゾンゾンデを搭載し、同時観測によってオゾン観測精度の検証を行い、さらに二酸化窒素の検出も試みる。

2010年8月5日

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