宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > 特集 > 第5回宇宙科学シンポジウム > 将来計画 > ダークバリオンの直接探査を目指した小型衛星計画DIOS

特集

ダークバリオンの直接探査を目指した小型衛星計画DIOS

 我々の宇宙は,ダークマターとダークエネルギーという未知の存在によりエネルギー的に支配されています。しかし,よく知っているはずの普通の物質(バリオン)ですら,存在するはずの量の半分以上が未検出で,ダークバリオンとなっています。宇宙の構造と進化を探るためには,直接検知可能なバリオンの観測が必須であり,ダークバリオンをとらえることは非常に重要です。

 ダークバリオンの多くは温度100万度ほどの希薄なガスとして,宇宙の大構造に沿って広く分布していると予想されています。小型衛星DIOS(Diffuse Intergalactic Oxygen Surveyor)は,ダークバリオンの電離酸素からの輝線放射をとらえ,それが描き出す宇宙の大構造を3次元的に明らかにします(図)。DIOSは,4回反射X線望遠鏡と撮像型X線マイクロカロリメータにより,これを世界で初めて実現します。このような広視野のサーベイ観測は,遠方の微弱天体の観測を目指す大型X線天文台では不可能で,DIOSのような小型衛星でこそ実現可能です。



図
図 宇宙論シミュレーションから予測されるダークバリオンの空間分布(左上),奥行き方向に積分したX線強度分布(右),DIOSで得られるX線スペクトル(左下)。X線スペクトルに見られるピークは電離酸素の輝線で,その赤方偏移から距離が分かる。


 衛星は重量約400kg,3軸制御を備え,視野約1度,有効面積約100cm2で0.3-1.6キロ電子ボルトのエネルギー範囲をASTRO-EIIをしのぐ2電子ボルトのエネルギー分解能で観測します。ダークバリオン以外にも,銀河系内や銀河団の高温ガスのダイナミクス,ガンマ線バーストのX線残光など,小型ながら非常に多くの科学的成果が期待されます。


(大橋隆哉[都立大・理],DIOSグループ)


※  ダークマターとダークエネルギー:極限エネルギー宇宙を超広角望遠鏡で探るEUSO計画」のページ参照


将来計画インデックスページへ