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特集

極限エネルギー宇宙を超広角望遠鏡で探るEUSO計画

 EUSO(Extreme Universe Space Observatory)計画は,発生起源が謎とされている超高エネルギー宇宙線(1020電子ボルト ※1 )が作る空気シャワーを衛星軌道上から観測する宇宙科学ミッションです。2010年ごろ,超広角望遠鏡EUSOを高度約400kmの軌道上の国際宇宙ステーションに装着し,半径約250kmの領域の地球大気を一度に観測します(図1)。EUSOは口径約2.5mで約60度の視野を持ち,瞬間的な観測可能面積 ※2 は,現在建設中のほかの実験の200倍以上にもなります。


図1
図1 EUSOが国際宇宙ステーションのコロンバスモジュールに取り付けられた様子(概念図)とEUSOの断面図


 宇宙から到来する極限的なエネルギーを持つ宇宙線は,地球の大気の原子核と衝突して,主に電子・陽電子から成る巨大な空気シャワーを生成します。EUSOはこのとき励起された窒素原子から放射される蛍光紫外線を数マイクロ秒間隔で撮像し,空気シャワーの発達を3次元的に再構築します(図2)。これによりその到来方向を0.2度から数度の角度分解能で決定し,その発生起源の謎に迫ります。


図2
図2 EUSOが空気シャワーに沿って発生する微弱な光を観測している様子


 EUSO計画は,欧州宇宙機関(ESA)を中心に,日本・米国・欧州が協力して推進しており,日本は焦点面検出器を,米国は光学系を,欧州は回路や電気系統および打上げの責任を負う予定です。

 EUSO計画の詳細については,http://euso.riken.jp/をご覧ください。


(梶野文義[甲南大]ほか,EUSO Collaboration)


※1  1020電子ボルト:ピッチャーの投げた硬式ボールが持つエネルギーに相当する。1020電子ボルト宇宙線とは,陽子などの極小粒子が加速されて,たった1粒でこのように高いエネルギーを持つようになったもののこと。
※2  観測可能面積:1020電子ボルトのエネルギーを持つ宇宙線の到達頻度は1km2,1世紀当たり1個と非常に低いので,観測例を増やすために大きな観測面積が必要である。そこで,宇宙から大気蛍光法により空気シャワーを観測する方法が考案された。


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