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VSOPチームがIAAの2005年チーム栄誉賞を受賞

スペースVLBI(超長基線干渉計)を世界最初に実現したVSOP(VLBI Space Observatory Programme)チームが、IAA(国際宇宙航行アカデミー:International Academy of Astronautics)の2005年チーム栄誉賞(Laurels for Team Achievement Award)を受賞しました。福岡で開催の第56回国際宇宙会議の初日の10月16日の総会で、プロジェクトマネジャーの平林久教授によって、 「Space-VLBI - A Radio Telescope Bigger than the Earth」 と題した講演が行われ、引き続くIAC夕食会の席では授賞式が行なわれました(受賞についてのQ&Aはこちら)。

表彰は IAA恒例のAwards Dinnerの席上で行われた。受賞メンバーと、IAAのストーン会長、コンタント事務総長、そしてIAC国内委員会委員長の松尾氏で記念撮影。受賞会場となったソラリア西鉄ホテル8階「雪の間」にて。
プロジェクトマネージャーの平林教授は向かって前列右端、前プロジェクトマネージャーの廣澤名誉教授はそのすぐ後ろ。

VLBIは、波長が長いために単一の望遠鏡では低い空間分解能しか持ち得ない電波での天体観測を、可視光やその他の波長の望遠鏡と比べて最も高い空間分解能を実現する観測装置です。VSOPは電波天文学者の長年の夢であった長い基線を、衛星「はるか」によってスペースにまで延長し、世界各国の衛星追 尾局、電波望遠鏡、そして 相関局などと協力してスペースVLBI観測を実現し成功させました(「はるか」の成果参照)。この夢を実現させたVSOPチーム全体を代表して、中心的役割を果たして来たISAS/JAXAの平林久教授、廣澤春任名誉教授、村田泰宏助教授はじめ、国立天文台 からは 井上允、川口 則幸、小林秀行各教授、また折井武氏(NEC東芝スペース)、 三好一雄氏(三菱電機)、および外国から、P. Dewdney(カナダDRAO)、E.Fomalont(米国NRAO)、L. Gurvits(オランダJIVE)、D. Jauncey(オーストラリア CSIRO)、R.Preston(米国JPL)、J. Romney(米国NRAO)、J. Smith(米国JPL)各氏のメンバーが受賞しました。

VSOPは、1989年に宇宙科学研究所(当時)が中心となり、国立天文台をはじめとした世界の研究機関との協力でスタートした国際ミッションで、1997年2月12日に打ち上げられた電波天文衛星「はるか」が加わることによって地球のサイズを超える壮大な国際VLBI観測ネットワークを作りあげました。これは世界14か国の25台の電波望遠鏡、日本、米国、スペイン、オーストラリアの5カ所に配備された衛星追尾局、国立天文台三鷹、米国、カナダの3局の相関局、および宇宙科学研究本部と米国の衛星軌道決定チーム、等々の緊密な国際協力とチームワークによって実現したものです。

衛星「はるか」は遠地点と近地点高度がそれぞれ21,400 kmと560 kmの長楕円軌道に投入され、およそ6時間20分の周期で地球を一周します。VLBI観測では広範囲に配置された電波望遠鏡で同時に同一天体を観測して、デジタル化した信号を磁気テープに記録します。「はるか」の8m電波望遠鏡と地上のたくさんの電波望遠鏡達とで同時観測された信号は相関局で合成されて、地球の直径の2倍以上の望遠鏡と同じ空間分解能を持つデータとなります。観測周波数1.6 GHzと5 GHzのたくさんの電波画像は、これまでに無い最も細かい構造を示すものとなりました。

衛星「はるか」は工学的にもおおいに注目されるものです。軌道上で8mの大型高精度のアンテナを展開し、地上と精密な基準信号を往復させて衛星の時刻系を正確に保ち、観測データを128 Mbpsの広帯域で地上に伝送、さらに衛星軌道を正確に決定すること、など、どれも今まで誰もなし得なかったことです。

衛星「はるか」は780回ものVSOP観測を行ないました。主なものは活動銀河中心核(AGN)の中心にある超巨大ブラックホールから噴き出す、相対論的なジェットです。「はるか」の2/3の観測は、世界中から応募された観測提案の中から国際審査によって選ばれたものです。残りの1/3は、ミッションが主導して行なったAGNの5 GHzサーベイ観測です。これらの超高解像度をもつ電波画像は、宇宙の中で最もコンパクトで高い活動性を示すAGNやブラックホールの解明に大きく貢献しています。

本チーム栄誉賞は2001年に創設され、宇宙航空関係の分野で科学者、工学者、マネージャー達が一体となって輝かしい成果をあげたチームに授与されています。これまでの受賞はロシアのミール宇宙ステーションチーム(2001年)、米国スペースシャトルチーム(2002年)、SOHO(太陽・太陽圏観測所)チーム(2003年)、とハッブル宇宙望遠鏡チーム(2004年)でした。

<Q&A>

Q.ローレル賞とはどのような賞ですか。(歴史、何回目かなど)
A.2001年に創設されたもので、下記のIAA説明にありますように、チームとして優れた業績のあった宇宙プロジェクトに対して授与されるものです。特に国際協力プロジェクトが高く評価されるようです。
The Board of Trustees has created in 2001 this special Award to recognize extraordinary performance and achievement by a team of scientists, engineers and managers in the field of Astronautics.

Q.過去の主な受賞チームは。日本の受賞は過去にあったのですか。
A.2001 - The Russian Mir Space Station Team
  2002 - The US Space Shuttle Team
  2003 - The SOHO Team
  2004 - The Hubble Team

Q.はるかチームのどのような成果が賞にふさわしいと判断されたのですか。
A.衛星を使ってのスペースVLBIを実現し、優れた科学的成果を挙げたこと、我が国 だけでなくひろい国際チームで複雑で高度なミッションを達成し たことなどが高く評価されました。

2005年10月18日

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