IKAROSでは,2010年12月の定常運用終了以降,後期運用を継続しています.後期運用
での研究テーマの一つに「膜面挙動・膜面形状の変化を積極的に引き出して展張状態の
力学モデルを構築する」ことを掲げていますが,そのための一実験として,IKAROSの
スピンを逆方向にする「逆スピン運用」を以下のスケジュールで実施する予定です.


 実施スケジュール: 10月18日(火)~10月22日(土)
 バックアップスケジュール: 10月25日(火)~10月30日(日)


このスケジュールは,以下2点のIKAROSの状況を踏まえて設定しました.これらの限られた
状況の中で,今回「逆スピン運用」にチャレンジすることが,現状の運用を継続してデータ
の価値を高めることと比較して,最も価値があり有用な知見,成果が得られると考えて
います.


・通信状況
  IKAROSは地球から遠ざかっており,以下の実績のように通信状況が悪化しています.
 10月下旬からは,姿勢を調整してもテレメトリの取得が非常に厳しくなる見通しです.
  5~8月:テレメトリ運用(8~16bps)
  9~10月:テレメトリ運用(8bps),または,ビーコン運用

・残推進薬量
  IKAROSは打上げ時に推進薬を20kg搭載していましたが,9月3日時点の残推進薬量は
 約3.4kgと推測しています.IKAROSでは,膜面に太陽光が当たるとスピンレートが変化
 する「風車効果」が発生しているため,スピンレートの制御を適宜実施しています.
 このため,現在の運用を基本として続けた場合でも11月~1月には推進薬が枯渇する
 見通しです.


<逆スピン運用の概要>
 IKAROSは,スピンの遠心力によって膜面を展張し,姿勢を安定させていますが,逆スピン
に移行するときに,一時的にスピンレートがゼロになる瞬間が発生するため,逆スピン運用
はこれまでの運用に比べリスクが大きくなります.
 逆スピン運用の前段階として,すでに低スピン運用を実施しました.これまで1rpm
(1分間に1回転)以上を維持してきたスピンレートを最小0.055rpm(1分間に0.055回転)
まで低下させました.一般にスピンレートが小さくなると膜面が大きくたわむと予想され
ますが,モニタカメラで膜面の状態を観測したところ,予想とは一致しない状態(たわみが
殆ど無い状態)も見られ,力学モデルの構築のための貴重なデータが得られました.
逆スピン運用を実施することで,膜面挙動・形状についてさらに理解を深めるためのデータ
を取得する予定です.