6/11の運用は、受信した電波の強さ(受信レベル)が少し不安定な時間が
ありましたが、何とか予定していた運用(健康状態の確認、データレコーダに
蓄積されたデータ再生、その他一部の機器の動作結果確認、スピンアップ)が
行えました。

 IKAROSは、本日も順調に、そして健康に深い宇宙の中を航行しています。

 次回の運用予定は来週火曜日(6/14)です。

 
 今日は、昨日の臼田局の紹介つながりで、「IKAROSの軌道を決める作業」
について簡単にお話しします。
 軌道を決める作業と言っても大きく分けて「今の軌道を決める」、「今後の
軌道を予測する」、「今後の軌道を決める」と3種類あります。


①「今の軌道を決める」
 この作業のためには、IKAROSと通信した時の情報が欠かせません。主に
以下の4つの情報です。
 ・IKAROSと臼田局との間の距離
 ・IKAROSと臼田局との間の距離が変化する様子(距離変化率情報)
 ・臼田局のアンテナの向き(アンテナ角度情報)
 ・IKAROSの姿勢(太陽や地球に対して向いている方向やスピンの速さ等)

 ある程度長い時間(IKAROSの場合、ある条件下で運用3回分)でのこれらの
情報が集まれば、IKAROSが深い宇宙の中のどこら辺りを、どのくらいのスピードで、
どっちの方向に向かって動いているというのがわかります。


②「今後の軌道を予測する」
 IKAROSの軌道が決まったら、明日は、明後日は、来週は、1か月後はという
将来はどこにいるかをちゃんと予測しておかないといけません。
 予測がないと臼田局で次に運用する時にアンテナをどっちの方向に向けて
おけば良いか、運用中はどの方向に向けて動かしていけば良いかがわかりません。
また、受信する電波の強さや周波数がわからなくて、電波をちゃんと捕捉すること
ができず、安定した運用もできなくなります。(距離の変化する様子次第で
周波数は変わっていきます)
 予測するためには、決定した軌道をもとに、太陽や惑星の重力の影響、
IKAROSが受ける太陽光圧の影響等のIKAROS以外の要素から受ける影響と
IKAROS自身の姿勢の影響を考慮して計算します。


③「今後の軌道を決定する」
 IKAROSのミッション達成のためには、IKAROSに「この軌道を飛行してほしい」
というのがあります。でも、②の予測の結果、放っておくと違う方向に飛んで
いってしまうという場合には、IKAROSの向きを変えたり、スピンの速さを変えたり
して希望の軌道へ飛行していくようにIKAROSの運用イベントとその実施タイミング
を設定し、今後の軌道(運用方針)を決定し、運用作業に反映します。 


 これらの作業は、本当はもっと複雑に絡みあっているのですが、今日はなるべく
簡単に表現してみました。(イカロスチームメンバーのあの人ならもっと簡潔に
理解しやすい表現で説明できたかもしれませんが、まだ沖縄に・・・)
 
 私のつたない表現でもご理解頂けたら幸いです

( KY )



 
 


6/11のIKAROS
太陽距離: 1.06AU
地球距離: 117269451km, 赤経=9.2°, 赤緯=-0.2°
金星距離: 1.30AU(195205224km)
姿勢:スピンレート=0.8rpm, 太陽角=6.6deg

Today's IKAROS
Sun Distance: 1.06AU
Earth Distance: 117269451km, RA=9.2deg, Dec=-0.2deg
Venus Distance: 1.30AU(195205224km)
Attitude: Spin Rate=0.8rpm, Sun Angle=6.6deg



今日(6月11日)は何の日?

 ・月周回衛星「かぐや」月面GILクレーター付近へ制御落下(2009年)
   詳細はこちら↓↓↓
    http://www.jaxa.jp/press/2009/06/20090611_kaguya_j.html

 ・火星探査車(マーズ・エクスプロレーション・ローバー)「スピリット」
  打上げ(2003年/アメリカ)




P.S.

 昨日宣言した発表内容ですが、JAXA公式Blogでこんな事を書いていいのか?
と内外からお叱りを受けるかもしれませんが、これはあくまで本日のblog
担当者個人の近況報告の一つということで、どうかお許しください。


***** 以下、あくまで妄想の中でのフィクションです *****
  
            発表文

    「国際IKAROS運用室学会が制定する新しい単位」。

                         2011年6月11日
      国際IKAROS運用室学会

 国際IKAROS運用室学会は、イカロス君がたまに発する「無茶ブリ」の単位を
「muri」として制定しました。
 数々の無茶ブリの無茶さ加減を客観的に数値で表すことは無理であるとされて
いましたが、この度、イカロスチームメンバーが解析を重ねた結果、世界で初めて
一つの指標を定義できたため、学会内でも議論を重ねた結果、この基準が採用
されました。


「muri」の基準の「概要」については以下のとおりです。
  1[muri] = イカロス君が地球角0°、太陽角90°、スピンレート1.0rpmで
       「うすださんおはよー。」と臼田局運用開始前にもかかわらず、
        お話しを要求し始めた場合の無茶ブリ。

  使用例:
     (1)臼田局運用開始後の「臼田さんおはよー」 = -1[muri]
     (2)チームメンバーに自己紹介を強要 = 107[muri]
(3)チーズケーキ配達要求 = 570×配達距離(m)

  制定に至る経緯:
     一部地域では1[mucha]として古くから使われていたという説もあるが、
   「無茶をする」時にも同じ表現で使用されていたことから、またイカロス君
   からの「無茶ブリ」に実現できそうにない内容も多々あることから、国際
   IKAROS運用室学会は「無茶を言うな!!そんなの無理に決まっている」と
   いう意味も含めて[muri]を採用することにした。



 なお、本学会は、同時に以下の単位も制定しました。

  1[neruneru/h] = 仕事場において、椅子に座り背中の曲げ具合0°の時、
          呼びかけても起きない深い眠りに1時間おちいりながら、
          次のミッションイベントを練っている状態。

  使用例:O氏の日常的な睡眠状態 = 5万[neruneru/h]×3時間=15万[neruneru]
  

  1[菓子] = 差し入れをありがたく頂きながらの1可視内でのコーヒー運用パス

  1[茶菓子] = 差し入れをありがたく頂きながらの1可視内でのお茶運用パス



*****繰り返しますが、あくまで妄想の中でのフィクションです*****




本日も最後までお読み頂き、また、今週のJAXA公式blogでの”ほんのちょっとの”
私の暴走を暖かく見守って頂き、本当にありがとうございました。

これからもIKAROS、並びにイカロス君の応援をよろしくお願いいたします。