IKAROSチームの山本高行(やまもとたかゆき)です.

実は今週から観測ロケットの打ち上げ準備のため,内之浦に来ています.
出張先でイカロス君から無茶ぶりを受けるとは思いませんでした.
ちなみにこの夏は,内之浦からS-520-25号機が打ち上げられます.
http://www.isas.ac.jp/j/topics/topics/2010/0809.shtml
私の主な仕事は風を計測して,ロケットの軌道計画を立案するのですが,今回は早朝5時の打ち上げなので,毎朝4時前に起きて,打ち上げ時刻の5時に風計測のためのゾンデを放球しています.

私の専門は軌道計画や誘導制御なのですが,ソーラー電力セイル絡みでは人材不足のためSSSAT(注1)の頃から推進系を担当しています.IKAROSではさらにシステム安全や(主に「あかつき」側から)H-IIAロケットとの軌道インターフェースを担当しました.システム安全とは,地上試験中からロケットによる打ち上げまで,人や施設,ロケットなどに危害を与えないように,設計・製造の妥当性や試験手順を検討して,事故の起こらないようにする一連の作業のことを言います.IKAROSはピギーバック扱いなので,主探査機である「あかつき」に危害を加えないようにするのも大事です.イカロス君があかつき君に噛みたかったけど届かなかった,と言っているのはこのことですね.

自己紹介ということで,簡単な経歴をしましょう.
修士の頃から学生として宇宙科学研究所(以下,宇宙研)で研究をしていました.このころは主に「はやぶさ」の小惑星タッチダウンシミュレータ(実態は高所作業車)の制御に関する研究を行っていました.
その後,一度民間会社に就職したのですが,宇宙開発への夢を捨て切れず退職して再び宇宙研で博士課程へと進みました.博士課程では,スペースプレーンの軌道最適化,誘導制御に関して研究を行ないました.
一年間ポスドクとして過ごした後,運良く中途採用に受かり,JAXA宇宙研に配属されました.子供の頃からの夢だった宇宙開発の現場についにたどり着き,趣味と実益を兼ねられるというのは,とても幸せなことです.

しかしどんな仕事でも同じだと思いますが,宇宙開発にも厳しい面が存在します.3月に結婚したのですが,その一週間後から約二ヶ月(途中一週間ほど間がありますが)に渡ってIKAROS打ち上げのため出張となりました.しかもその出張中に祖父が急に亡くなったとの連絡を受けました.とても可愛がってもらっていたのですが,孫の中で私だけが葬式に参列することができませんでした.そんなこともありIKAROSが順調に航行を続けているのは,大変励みになります.

さて宇宙以外の趣味もいくつかあります.その中でも最も時間を割いているのはマラソンです.年に1,2回旅行を兼ねてフルマラソンを走るのですが,昨年はボストンマラソンでサブスリー(注2)を達成しました.まだ次回どこで走るか決めていないのですが,今募集中の東京マラソンに出てみたいです.なにせこれまで4年連続抽選漏れなので,来年こそはという思いです.

最後に,IKAROSが途中で宇宙研からJSPEC(注3)に移ったにも関わらず,チーム内でJSPECの併任になっていないのは私だけです.なので津田さんがIKAROSのサブリーダというのを,このブログで初めて知ったというのは内緒です.

(注1)2006年にM-V-7号機のサブペイロードとして打ち上げられた超小型のソーラー電力セイル
(注2)42.195Kmを3時間以内で走ること
(注3)相模原キャンパスにある月・惑星探査プログラムグループ.宇宙研とは別組織.