PLAINニュース第177号
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宇宙情報システム講義第2部
これからの衛星データシステムはこうなる

(第4回 機能オブジェクト2)

山田 隆弘
宇宙情報・エネルギー工学研究系

 今回も 前回 に引き続き機能オブジェクトの話をします。

 前回 は、機能オブジェクトのエッセンスを簡単な例を用いて説明しました。この連載の第2部の 1回目 で説明したように、機能オブジェクトという概念は、そもそもは衛星の機能に関する情報を衛星情報ベース (SIB) に格納するために考えた物です。衛星の機能に関する情報をデータベースに格納できるようにするためには、衛星の機能設計の方法を統一する必要があり、そのための道具として考え出したのが機能オブジェクトなのです。

 今回は、前回 説明した機能オブジェクトの例を機能設計のデータベース化という観点で説明します。前回 はXという搭載機器を機能オブジェクトとして規定する方法を説明し、この機能オブジェクトが状態遷移図で表現できることを示しました。この状態遷移図をもう一度ご覧下さい(図1)。


図1 搭載機器Xの状態遷移図

 前回 説明した範囲での搭載機器Xの機能は、図1の状態遷移図に凝縮されて表現されています。現在開発中の衛星状態ベース2 (SIB2) では、この状態遷移図で表されている搭載機器の機能情報がそのままデータとして格納できるようになっているのです。

 前回 説明したように、機能オブジェクトはオペレーションを実行し、機能オブジェクトの様子はアトリビュートの値で表されます。また、機能オブジェクトの動作の規則は状態遷移図で表されます。これらの事実を言い換えると、機能オブジェクトは、オペレーション、アトリビュート、状態遷移図という要素の組み合わせによって規定されることになります。従って、 SIB2 には、機能オブジェクト毎に、その機能オブジェクトの有する要素の定義を格納するようになっているのです。

 搭載機器Xに対応する機能オブジェクトを SIB2 に登録するときは、以下のような情報を入力します。まず、この機能オブジェクトの持つオペレーションを列挙します。オペレーションは実はパラメータを持ってもいいのですが、今回説明する範囲ではパラメータ付きのオペレーションはありませんので、これについてはこの連載の先の方で説明します。次に、この機能オブジェクトの持つアトリビュートを列挙します。アトリビュートは値を持ちますので、以下の表のアトリビュートの行の3番目の列はアトリビュートの取り得る値を示しています。その次は、状態を列挙します。また、それぞれの状態について、その状態にあることがどのアトリビュートの値で示されるかも記入します。最後に、状態遷移を列挙します。遷移毎に、遷移元の状態と遷移先の状態を記入し、さらにその遷移を引き起こすオペレーション名を記入します。できあがった表が図1の状態遷移図に対応していることは、すぐにお分かり頂けると思います。

搭載機器Xに対する SIB2 の内容

オペレーション

X_Power_On

X_Power_Off

X_Run

X_Stop

アトリビュート

X_OnOff

OFF, ON

X_RunStop

RUN, STOP

状態

OFF

X_OnOff=OFF

ON

X_OnOff=OFF

STOP

X_RunStop= STOP

RUN

X_RunStop=RUN

状態遷移

OFF

ON

X_Power_On

ON

OFF

X_Power_Off

STOP

RUN

X_Run

RUN

STOP

X_Stop

 現在の SIB は、衛星の試験時と運用時に衛星管制装置や QL 装置で使われるだけですが、SIB2 は搭載機器の設計時に設計情報を格納するための道具としても使って頂きたいと思っています。すなわち、搭載機器の設計時に、この状態遷移図レベルの設計ができたところで直ちにそれを SIB2 に入力し、SIB2 によって設計結果を電子的に管理して頂きたいと思うのです。

 次回 は、今回の設計結果およびそれの SIB2 データを更に詳細化する方法を説明します。 

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