PLAINニュース第178号
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宇宙情報システム講義第2部
これからの衛星データシステムはこうなる

(第5回 機能オブジェクト3)

山田 隆弘
宇宙情報・エネルギー工学研究系

 今回は機能オブジェクトの話の3回目です。

 前々回前回で簡単な例としてXという搭載機器を機能オブジェクトとして規定する方法を説明しました。今回は、この機能オブジェクトの機能で前回までの説明では出てこなかったものについて説明します。

 この搭載機器は、状態がONの時、機器内部でエラーが発生しているかどうかを自分で検出する機能を持っています。また、どのような種類のエラーを検出するかは外部から設定できるようになっています。

 この搭載機器に対応した機能オブジェクトは、このエラー検出機能に関連したオペレーションを一つとアトリビュートを二つ持っています。オペレーションは、どのような種類のエラーを検出すべきかを外部からこの機器に設定するためのものであり、X_SetCheckMode という名前が付いています。このオペレーションはパラメータ付きであり、エラー検出のモード名がパラメータになります。このオペレーションは、この機器の状態が ON の時しか実行できませんが、このオペレーションを実行しても状態の遷移は引き起こしませんので、このオペレーションは前々回と前回に示した状態遷移図には現れていません。

 アトリビュートは、現在設定されているエラー検出モードを示す X_CheckMode と検出されたエラーの名前を示す X_ErrorStatus の二つです。X_SetCheckMode オペレーションを使用してエラー検出モードを設定すると、それに従って X_CheckMode アトリビュートの値が変化します。すなわち、X_SetCheckMode オペレーションは、X_CheckMode アトリビュートの値を設定するためのオペレーションであると解釈することもできます。X_ErrorStatus は最も最近に検出されたエラーの名前を保持するためのアトリビュートです。

 さて、ここで搭載機器Xの実例から離れて、一般の機能オブジェクトの話に戻ります。機能オブジェクトは、今までに説明した機能の他にアラートという機能を持つことができます。これは、機能オブジェクトが何かが起こったこと(例えば異常を検出したこと)を外部に対して通知するためのメカニズムです。アラートは、テレメトリメッセージとして何らかの通信手段(通常はパケット)を用いて外部(衛星に搭載されているデータ処理系あるいは地上の管制系)に伝送されます。また、アラートはパラメータを持つこともできます。

 機能オブジェクト内部で何かが発生したことは、アトリビュートの値を定期的にモニタしていれば、アトリビュートの値の変化として外部でも知ることができます。しかし、このアラートの機能は、何かが発生したことをなるべく早く知ってもらいたい、あるいは、単なるアトリビュートの値の変化以外に重要な意味を外部に伝えたいというときに使用します。

 さて、また搭載機器Xの話に戻りますが、この搭載機器は、ErrorDetect というアラートを持っています。これは先ほど説明したエラー検出機能が何らかのエラーを検出したことを外部に通知するためのものです。具体的には、X_ErrorStatus アトリビュートの値が Normal 以外の値に変化したときにこのアラートが発生されます。また、このアラートは X_ErrorStatus アトリビュートの変化後の値をパラメータとして持ちます。

 今回追加された情報を前回の表に追加したものが以下の表です。これが、この搭載機器に対する SIB2 の内容になります。

搭載機器Xに対する SIB2 の内容(改訂版)

オペレーション

X_Power_On

X_Power_Off

X_Run

X_Stop

X_SetCheckMode

A, B, OFF

アトリビュート

X_OnOff

OFF, ON

X_RunStop

RUN, STOP

X_CheckMode

A, B, OFF

X_ErrorStatus

Normal, U_Error,
V_Error, …

状態

OFF

X_OnOff=OFF

ON

X_OnOff=OFF

STOP

X_RunStop= STOP

RUN

X_RunStop=RUN

状態遷移

OFF

ON

X_Power_On

ON

OFF

X_Power_Off

STOP

RUN

X_Run

RUN

STOP

X_Stop

アラート

X_ErrorDetect

X_ErrorStatus

 次回 は、衛星監視制御プロトコルについて説明します。 

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