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第2組立オペレーション


 M-V型ロケットの各種のオペレーションは,今回の第号機からは簡略化を行うことになり,この第組立オペレーションは,ロケット機体の組立てはもとより,搭載機器についても,月に相模原で行われた噛合わせ後,はじめて「灯」が入れられる試験となった。作業は,連休前の23日から開始され,17日までの,25日間という長いものとなった。折しも,鹿児島大隅地方は,なたね梅雨がそのまま梅雨に突入したかのように,雨また雨,雨の連続で,ほとんど青空をのぞめない日々の連続だった。考えてみると,この時期にロケットの組立てなどのオペレーションを行ったことは,ほとんどなかったことということで,作業の進行には神経を使った。特に,時折現れる雷雲には手を焼き,雷検知器の指示にしたがって,しばしば作業の中断を余儀なくされるしまつだった。宮原への落雷で火災報知器が構内全域にわたって不通となったのが,唯一被害らしい被害だったが,落雷火災の発生に火災報知器は機能しないという,奇妙なシステム的な欠陥が見いだされた事例でもあった。当然のごとく雨となった消火訓練では,宇宙研側が「雨なので...」と訓練の延期を示唆したのに対し,地元消防署員は,「Proは雨でもやります」との弁で,老練のロケット担当者も Pro意識を新たにしたところだった。

 動物も春から夏へと気温の上昇にともなって,活動を切り替える時期でもあり,へびの出現もまた実験班を驚かせた。あろうことか,組立室のクリーンブースにへびが雨宿りしていたという珍事までおこり,課長をして「(組オペで)一番大事なのはへびです」と全打で言わせしめる一大事件となった。

 雨にもかかわらず,ロケットの Pro の作業は予定より日短縮され,ほとんどトラブルもなく無事に完了した。数々のエピソードを残しつつも,第号機の打上げに向けて,心ならずも緊張感がつのるオペレーションだった。

(川口淳一郎)

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「あなたの名前を火星に」 アルミ板 PLANET-B に取付け

 「あなたの名前を火星に」キャンペーンに応募された 27 万人余の名前を焼き付けたアルミ板 20 枚が,12日,探査機のバランスをとるための重りの一部として,アルミ板のサイズにくりぬかれた金属板の中に枚丁寧に組み込まれ,宇宙飛行中に剥がれたりすることのないよう接着剤で固定されました。その後揮発成分を飛ばす処理をし,23日,いよいよ PLANET-B への組付けです。探査機のバランスを計測した後,アルミ板の取付け場所が決定。多くの関係者が見守る中,火星への夢とさまざまな思いを載せた 27 万人の「名前」が探査機下面の枠組みにしっかりと取付けられました。

 PLANET-B は最終チェックのあとコンテナに詰められ,30日相模原キャンパスを出発,陸路鹿児島に向かい,日鹿児島宇宙空間観測所に到着,いよいよ打上げに向けての作業が始まります。PLANET-B は,再度入念なチェックを受けてから, M-V-3 号機の頭胴部に組み付けられます。PLANET-B を載せた M-V-3 号機の打上げは,日(土)午前26分。真っ暗な宇宙へ,オレンジの炎を引いて飛び立っていく姿が見られるのももうすぐです。

(周東三和子)


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1998年度第1次大気球実験

 1998年度第次大気球実験は,1998日から27日まで三陸大気球観測所において実施された。放球した気球は,B150機,EV1機の計機であった。尚,当初予定していたB120 -1号機は観測者の要望により第次大気球実験に行うことになった。

 B150 -1号機は,青山学院大学,山形工科アカデミー短期大学,神奈川大学,神奈川県立衛生短大,東大宇宙線研究所が開発したエマルションチェンバーを用いて高エネルギー一次電子のスペクトルを測定することにより宇宙線の銀河内伝播の情報および宇宙線電子の源を調べる目的で観測が行われた。気球の全飛翔時間は26時間35分であり,その間エネルギー100GeV 領域の質の良いデータの取得に成功した。

 EV1-2号機は,宇宙科学研究所気球工学部門が長時間飛翔用気球開発の一環として開発を進めている新素材エバールフィルム(エチレン・ビニルアルコールフィルム)で製作した排気口を持った容積1,000m3気球の飛翔性能試験であった。エバールフィルムを用いた気球が水平浮遊飛行に成功したのは,今回が初めてである。この実験により上昇速度変化,日没降下等の貴重なデータが得られ,今後の長時間飛翔用気球の開発に新たな発展をもたらすことになった。

 B150 -3号機は,神奈川大学,宇宙科学研究所,立教大学,芝浦工業大学,東大宇宙線研究所,山形工科アカデミー短期大学が開発したシンチレーションファイバーを用いた観測器によって10GeV から数百GeV 領域の宇宙一次電子の観測を行うことであった。全飛翔中,観測器は正常に動作し約13.6万個の宇宙線によるシャワーが観測された。そのうち,一次電子は10GeV 以上で約3,000個程度であった。

(山上隆正)

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あきる野宇宙推進研究施設(仮称)の現状


 あきる野宇宙推進研究施設(仮称)は,駒場キャンパス48号館の代替施設として,あきる野市菅生の丘陵地を流れる鯉川のほとりに開設された。  駒場48号館は,推進系の基礎研究,開発研究の場として,また研究所職員や学生のための実践的な教育の場として有効活用されてきた。本施設は,その役割を引き継ぎ,従来型推進系の開発実験や将来型推進系の基礎研究および推進工学教育のための拠点として利用されることになる。

 研究室部屋と大実験室が一体となった研究実験棟は月末に完成し,駒場からの移転作業は月中に完了した。現在,月下旬の完成を目標に高々度高空性能試験システム( High Altitude Test Systm )の設置工事が進められている。これは,実験室レベルで小規模ロケットの高空性能試験を行うための試験設備で,上段推進系開発における様々な研究課題に取り組む際に大いに活躍するであろう。

 目下,本年度中に実行予定の開発実験は件(S-310 改設計データ取得試験件,LPM - DOM 領収試験, DASH - DOM 高空性能試験)で,その他に高性能,低公害推進薬や将来型推進システムの基礎実験が計画されている。

(徳留真一郎)

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34mアンテナの現状

 内之浦のテレメータ台地,記念碑的な18mアンテナが立っていた場所で,現在,新しい大型アンテナの建設工事が進んでいます。KSC の科学衛星の追跡を局体制のもとに行いたいと1993年頃から検討を行っていたものですが,1996年度に予算が認められ,19969798年をかけて製作,建設することとなりました。正式の名称は「KSC 科学衛星追跡管制設備」で,直径34mの大型アンテナと S/X 帯の追跡受信管制設備からなります。完成しますと,現在の20mアンテナとともに地球周回の科学衛星を追跡しますが,さらに,臼田の64m局に対するバックアップともなるように,深宇宙対応の機能も持たせてあります。

 テレメータ台地では,1997月,18mアンテナを解体撤去し,月から,ぺデスタルの工事を始めました。アンテナは瞬間最大風速90m/s の風が吹いても壊れないという堅固な使用で,今年月に工事を終えたぺデスタルも,外見は大きな建物の形を取っていますが,大変堅固な造りです。アンテナ本体の組立て工事は月から本格的になります。月後半からは S/X 帯追跡管制設備の機器も順次搬入されます。全設備は今年11月末に完成する予定で,地球を遠ざかっていく PLANET-B は恰好の試し運用の対象となります。

(廣澤春任)

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VSOP この頃

 「はるか」が最高観測周波数の 22GHz 帯で,Orion KL 天体の水メーザー線のフレアーを利用して干渉実験に成功したことは,この春一番の喜ばしい事でした。先月号に,Phill Edwards 博士の流暢な日本語で報じられたとおりです。 現在,サーベイ観測と AO1に基づいての科学観測とを,1.6GHz 5GHz 帯とで行っています。いくつかのイメージをセットにした論文もそろそろ目に止まるはずです。1999年観測の AO2 について 95 の観測提案が集まりました。この採用順位付けを2123日の VSOP 国際科学審査委員会で決めます。

 月中旬の名古屋 COSPAR 総会の折には,“ VSOP First Results and the Future ”というシンポジウムを日半にわたって開きます。また,COSPAR で,会期中の日間の朝一番の時半から人が,全員の前での講演をする事になりましたが,平林が17日の講演者として選ばれました。 VSOP を意識した電波天文学の講演になる予定です。

 今,「はるか」を中心に据えた世界初のスペース VLBI 観測計画( VSOP )をすすめていて,一番気になる事は,研究規模の大きさに較べて,人手の少ない事です。チームの研究者達はさまざまの創意工夫で必死で頑張っています。何とか頑張りとおして,素晴らしい成果の出始めた, VSOP の美酒に酔いたいと思っています。

(平林 久)

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第21回 ISTS 開催される

 さる25日(月)から30日(土)まで埼玉県大宮市のソニック・シティホールを会場にして,第21回宇宙技術と科学の国際シンポジウム( ISTS )が開催された。 ISTS は,日本の宇宙開発に携わる人々が手づくりで準備・運営する特色ある国際学会である。国内外から789名(うち海外の15カ国から116名)の参加を得た。初日は,開会式につづいて,

() 再利用宇宙輸送システム,
() 宇宙ステーション,
() 月惑星ミッション,
() 宇宙計画のコスト低減,

というつの基調講演が行われ,次いで各国の宇宙プログラムが紹介された。日目からはテクニカル・セッションに入り,推進・材料構造・誘導制御・流体力学・地上支援・宇宙輸送・宇宙環境利用・衛星通信・月惑星探査・宇宙科学・地球観測・ライフサイエンス・国際協力の分科会に分かれて日間にわたり発表・討論が展開された。27日(水)には学生セッションが開かれた。フィルム・イヴニングに加え薪能が開かれて好評を博したほか,吉田町の龍勢ロケット見学(30日)には参加者が530名を越し,大宮からパトカー先導で吉田町へ突っ走るなど印象深い学会となった。セッション最終日の29日(金)には,フェアウェル・パーティが開かれ,次回の第22回は岩手県盛岡市で松尾弘毅教授(宇宙科学研究所)を組織委員長として開催される旨発表があった。

(的川泰宣)

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