No.190
1997.1


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 SFUは宇宙実験のためのプラットフォームとして開発された。私が宇宙実験と付き合いはじめたのは,今は亡き大林辰蔵先生が始められた,スペースシャトルによる「粒子ビームを用いた宇宙科学実験(SEPAC)」への参加以来であるから,もう,ふた昔以上も前のことになる。ちょうど20年前の今頃は,河島先生の代理で初めて渡米し,ジョンソンスペースセンターの超大型真空槽で,栗木先生とともにSEPAC機器の試験を行っていた。SFU計画が一段落してほっとしたこの頃,そのころのことがつい先日のように思い出される。SEPAC実験は,初めての本格的な日米共同の宇宙科学実験として,1983年スペースシャトル9号機で実施された。実験後,しばらくの間,オービターから放射された電子やプラズマビームによって励起された様々な現象の解析に没頭したが,スペースシャトルのような大型でスラスターや水などの放出の活発な飛翔体の周辺には,自然の宇宙環境と大きく異なった飛翔体特有の宇宙環境が形成されることを実感として知った。このような環境の研究は,一種の天体現象として面白いだけでなく,人類が本格的に宇宙活動をする場合にも重要ではなかろうかと思っていた矢先,長友,栗木先生からSFU計画への参加の誘いを受けた。

図28. SFUに搭載された2台の環境計測器。
左はSPDP( Space Plasma Diagonostic Package ),
右はSEM( SFU Environment Monitor )。

 SFU計画では,宇宙環境計測装置の開発を担当することになり,SEPACでの経験を基にして,空間を掃引できる可動プローブを組み込んだ大がかりで野心的(?)な環境計測器を考えた。実際には,色々な制約のため当初考えたものより小ぶりになったが,それでも,SEPAC時代からの参加者の協力も得て,高エネルギー粒子以外の殆ど全ての主要な宇宙環境計測センサー(プラズマ,ガス分析,電磁波動,磁場,分光,マイクロG)を組み込んだ計測システムを開発することができた。空間掃引できないかわりに,センサーをできるだけ複数持ち,異なる場所に配置することにした。特にプラズマ,電位,電磁波動のセンサーについては,SFUの太陽指向面側に3カ所,逆の面に1個配置し,多点観測が可能なように工夫した。SFUで開発した2台の環境計測器(SPDPとEMS)を図28に示す。スペースシャトルをはじめ宇宙実験を目的とした飛翔体では,必ず宇宙環境モニターが搭載されるが,今回SFUで開発した宇宙環境の計測システムは,質・量ともにこれまでで最も充実したものであったと自負している。

図29. マイクロGセンサーで計測されたSFUの振動

 さて,肝心のデータであるが,アウトガスに支配されたガス環境の様子,太陽電池の起電力に振られたSFUの大きな電位変動,スラスタ噴射に伴う発光,ラムとウエイクで同時観測された10MHzまでの電磁波動など興味深いデータの多くが,まだひっそりと光ディスクの中に眠っている。ここでは,10Hz以上の周波数帯に存在したGジッターと呼ばれる未だに励起源が謎のSFUの振動現象を図29に示す。ホイールも含め機械的な可動部を全て停止しても存在していた不思議な振動で,その原因の解明が待たれる。

(佐々木 進)


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