No.190
1997.1


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 1996年6月,待ちに待った宇宙実験試料の電気炉からの取り出しが行われた。SFUが1月13日にエンデバーに回収されてから一日も早く実験試料を見たかったのである。回収後,SFUを日本へ輸送する準備のため,ケネディスペースセンター近くのアストロテック社で作業が行われたときにSFUを目の前にしながらも電気炉,実験試料がどうなっているのか見るすべもなくいらいらしていたのを覚えている。そんな待ちこがれた期待の気持ちと本当に試料がちゃんと結晶成長されているか不安の交錯する中で実験者と共にその瞬間を待った。

 カートリッジから試料アンプルを取り出し,実験者が緊張した眼差しで実験試料を嘗めるように上から下から観察している。その顔が綻びの顔に変わった。やったぁ!!

 SFUでは3つの電気炉(複合加熱炉:GHF,焦点加熱炉:MHF,単熱炉:IHF)により8テーマの化合物半導体結晶成長を行い,24個の実験試料の結晶成長を行った。回収後の試料の取り出し観察の結果,24個全ての試料で溶融,凝固が行われたことが確認され安堵するとともに,さあ,我々の宇宙実験はこれからだぞと力が入った。

●真夜中の会話

 1995年4月30日からSFUでの電気炉実験が開始され,8月30日に無事運用が終了した。電気炉との会話(実験運用)は,なぜか真夜中が殆どであった。1日の会話を終え帰途につくときには朝日が目に痛かった。実験運用は色々有ったが実験も電気炉も大きなトラブルもなく順調に行われた。

 電気炉運用においては実験パラメータを軌道上で変更できるようにしておいた,その結果,実験側の心の安静を保つ意味も含めて絶大な効果をもたらしてくれた。フライト前にコンティンジェンシー対策を沢山準備していたが(緊急停止のような全面的に止めるようなことばかりであったが),このようなものより,もう少し軽微の変更,たとえば実験時間や温度を僅かに変えるなどが実際の運用では重要な緊急対応であった。

●帰ってきた子供たち

 宇宙へ行ってきた子供たちは逞しい顔に成長して帰ってきた。現在,宇宙実験試料の評価解析の真っ最中である。今まで明らかとなった実験成果については次の通りである。

図30. CdTeの非接触結晶成長


●そして,これから

 微小重力下では熱対流が無くなり,拡散依存の移動が行われると宇宙実験関係者は当然のごとく言い放つ。わが国でも微小重力を利用して良いものを創製しようと考えている人は多い。だが,実際に自分の手で微小重力下で物を作り,どの様な物がどうできたのかという研究をできる人はごく限られた数である。我々はこの稀有の経験を意義のあるものにしたい。

 現在,さらに詳細な評価解析(欠陥評価,電気的特性評価等)を進めており,取得したデータに基づき宇宙での結晶成長メカニズムの解析も進め,これらの知見を地上技術に反映したいと考えている。

 今回のSFUによる化合物半導体結晶成長実験は多くの関係者にサポートされ実施された。関係した方々へ感謝を申し上げます。

(酒井 宏,(財)無人宇宙実験システム研究開発機構)


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