No.190
1997.1

新年のご挨拶   ISASニュース 1997.1 No.190

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所長  西田篤弘


 あけましておめでとうございます。

 新春の朝日に輝くKSCの整備塔では,M-Vの1号機が発射を待っています。森先生が所長をしておられた頃からの夢であったMロケットの大型化がようやく現実のものになる時が迫りました。M-Vの開発にはさまざまな新しいアイディアが盛り込まれ,関係者の創意と工夫が生かされています。技術的な課題も担当者の懸命の努力で克服されてきました。百点満点の打上げを期して,慎重に目を配りながら確実に作業をすすめていただきたいと思います。

 M-V-1で打上げられるMUSES-Bは,大型で精密な展開構造などの技術開発を主な目的とする工学衛星です。2.2mのノーズフェアリングに収納されたアンテナが 宇宙空間で展開され,直径約8mのパラボラを作ります。主鏡面はモリブデン線によるメッシュで,メッキされて金色に輝いています。ケーブルによる支持構造は蜘蛛の巣のようで,アイディアの面白さもさることながら製作はたいへん苦労の多いものでした。ユニークな設計思想と,これを現実のものとした工学グループと技術陣に敬意を表します。

 M-Vロケットの登場によって,太陽系への本格的な探査機や,従来よりも何倍も重い天文衛星を打上げることができるようになりました。MUSES-Bのパラボラは宇宙を探る電波望遠鏡です。地上にある電波望遠鏡と同時観測を行い,干渉計を形成することによって,「東京からシドニーの米粒を見分ける」ほどの分解能で活動銀河核などの構造を精密に観測し,その謎にせまります。アメリカなど世界中の電波天文台では準備を整えてMUSES-Bの打上げを待ちかまえています。干渉計のデータ処理では,国立天文台と密接に協力しながら解析をすすめて行くことになっています。

 私は昨年11月に招かれてパリで開催された「ヨーロッパの科学衛星:成果と展望」というシンポジウムに出席しましたが,将来計画についての講演のほとんどすべてが宇宙科学研究所の科学衛星の成果を踏まえ,それに基づいて次の計画を議論したのが印象的でした。今年も全国の宇宙理学者や工学者と力を合わせて,宇宙科学の最先端を切り開いて行きましょう。

(にしだ・あつひろ)


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