太陽観測衛星「ひので」が撮影した日食の画像・動画を公開

ひので観測チーム


平成28年3月10日
宇宙航空研究機構 宇宙科学研究所
自然科学研究機構 国立天文台
米国 航空宇宙局

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、自然科学研究機構国立天文台、および米国航空宇宙局(NASA)は、3月9日に太陽観測衛星「ひので」が撮影した部分日食の画像・動画を公開しました。

公開した画像・動画は、「ひので」が平成28年3月9日午前9時8分頃(日本標準時)に高度680kmでインドネシア上空を飛翔している際、搭載されているX線望遠鏡(XRT)で撮影したものです。X線で輝く太陽コロナを背景に、新月状態の黒い月が太陽の南西(画像の右下側)から現われ、北に向けて太陽面を横切っていく様子がとらえられています。「ひので」から見ると太陽のほとんどが隠される(最大食分 0.978)、皆既食帯に入る一歩手前の部分日食でした。「ひので」の飛行速度は時速約27,000kmと非常に早いため、部分日食の開始から終了まで、わずか約15分です。

「ひので」は、この撮影の前後に、皆既日食が観測されたインドネシアで地上観測を行ったチームと国際共同観測を行いました。X線コロナ画像の撮影の他、コロナから発せられる紫外線輝線の観測を、極端紫外線撮像分光装置(EIS)で行いました。これらのデータは、皆既日食時に可視光で見られるコロナ構造とX線ジェットの因果関係や、高温なコロナ物質の物理的状態を調べる研究に用いられる予定です。

今回撮影したX線太陽画像・動画は下記からダウンロード可能です。

「ひので」がとらえた日食

解説:「ひので」観測データの伝送

「ひので」が取得した観測データ(テレメトリデータ)は、世界に点在する複数の地上受信局にて順次受信され、インターネット経由で神奈川県相模原市にある宇宙科学研究所に伝送されます。そこでデータ処理が施された後に公開しています。通常の観測では、取得した観測データは一旦搭載された記録レコーダに記録され、約半日から1日程度の遅れをもって順次地上局に向けて再生されます。

解説:「ひので」から見た月の移動の様子:

地球上空を周回する「ひので」から見た、太陽に対する月の移動の様子は、地上で見るのとは異なります。「ひので」の軌道は高度約680kmの太陽同期極軌道で、常に昼夜の境目を、1周回約98分で飛行しています(右のイメージ画像を参照)。


イメージ画像(クリックで拡大)

この「ひので」の軌道から月を見ると、太陽に対する月の移動の様子は、右の図の螺旋でかいたように、まわりながら右から左へ移動していきます。螺旋が月の中心の軌道です。実線の円が太陽、点線の円は最大食分0.978の日食が見られた際の月の位置を表しています。

この図をよく見ると、そのあとにもう1回、月が太陽の左端を隠す日食が見られたことが分かります。2回の日食の軌道を、クローズアップして見てみましょう。


クリックで拡大。
予報計算:相馬充(国立天文台)

第1回目をクローズアップしたのが、右の図です。「ひので」から見た部分日食は、月が太陽の南西(右下)から現われ、北(上)に向けて太陽面を横切りました。最大食分(月によって覆われた太陽の直径の度合い)が0.978と、皆既日食にかなり近い部分日食でした。今回公開した画像・動画は、この第1回目の日食のものです。

第1接触: 9:1:13 (JST) (0:1:13 UT)
最大: 9:8:31 (JST) (0:8:31 UT)
第4接触: 9:16:13 (JST) (0:16:13 UT)


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図中の時刻は世界時です。
予報計算:相馬充(国立天文台)

第2回目をクローズアップしたのが右の図です。「ひので」から見た部分日食は、月が太陽の北東(左上)から現われ、南東(左下)に向けて太陽面の左端を横切りました。

第1接触: 13:15:9 (JST) (4:15:9 UT)
最大: 13:20:38 (JST) (4:20:38 UT)
第4接触: 13:25:55 (JST) (4:25:55 UT)


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図中の時刻は世界時です。
予報計算:相馬充(国立天文台)

「ひので」について

「ひので」は、宇宙科学研究所が開発し打上げた日本の太陽観測衛星です。搭載された望遠鏡は、国立天文台が日本国内のパートナーとして、米国航空宇宙局(NASA)および英国素粒子物理学・天文学研究会議(STFC)が国際パートナーとして参加して、共同開発されました。また、これらの機関に加えて、欧州宇宙機関(ESA)とノルウェー宇宙局(NSC)が協力して、軌道上での科学運用を実施しています。

過去の観測例


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自然科学研究機構 国立天文台