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天球座標

Figure: 天球、赤道、黄道の関係
\begin{figure}\centerline{
\epsfig{file=Tenkyu.eps,height=8cm}
}\end{figure}

天文学では、天体の「見かけ」の位置を表すのに、仮想的な天球という概念を 用いる。宇宙が球であり、その中心に私たちがいる(地球がある)、というイメージである。 地球の自転軸を延ばしていって、天球とぶつかったところが、点の北極。地球の赤道を 拡げていって、天球とぶつかったところが天の赤道

地球の自転軸は、地球の公転面と垂直ではなく、 $23.^\circ44$傾いている[*]。 太陽が一年を通じて天球上で 通る道を黄道と呼ぶが、黄道は天の赤道と$23.^\circ44$傾いている。 太陽が天の赤道を南から北に横切る点が春分点、北から南に横切る点が秋分点。 太陽が赤道面からいちばん北向きに離れる点が夏至点、南向きに離れる点が冬至点。文字通り、 地球の公転運動によって、春分、秋分、夏至、冬至のときに太陽はこれらの点を通過する。

地球上の経度( $0^\circ\sim360^\circ$)、緯度( $-90^\circ\sim+90^\circ$)を定義し、それで地球上の位置を表すように、 天球上で、 赤経( $0^\circ\sim360^\circ$)、 赤緯( $-90^\circ\sim+90^\circ$) を定義し、それによって天体の位置を表す。グリニッジ天文台(経度=$0^\circ$)が地球上の経度の基準点であるように、 赤経の基準点は春分点である。このように、天の赤道面を基準にした 座標系が赤道座標である[*]。 同様に天の黄道面を基準にした座標系が黄道座標である。

地球上と同様、天球上でも方角を東西南北で表わす。天の北極の方向が北、南極の方向が南、 赤経が増える方向が東、減る方向が西。地球上(地球を外から 見ている)と天球上(天球を内から見ている)で東西の向きが逆になっている ことに注意。つまり地図を拡げたとき、北が上向きなら東は右 (右向きに経度が増加する)。一方、 「天球図」においては、 北が上向きなら、東は左 (左向きに経度が増加する)。

Figure: 赤道座標、黄道座標、銀河座標の関係
\begin{figure}\centerline{
\epsfig{figure=PlotCoordinates.ps,height=17cm,width=9.5cm}
}
\end{figure}

もう一つ良く使われるのが、我々の銀河系(天の川)を基準に取った、銀河座標である。 銀河中心の方向が銀経=0度で(左向きに銀経が増加)、銀河面が銀緯=0度に対応している。

任意の天体の位置を、赤道座標、黄道座標、銀河座標で 表すことができる。 図2は、これら3つの座標の間の変換を示したものである[*]

たとえば、以下の3つは天球上で同じ位置を表わす[*]

(赤経、赤緯)=( $\alpha, \delta$)=($281.^\circ00$, $-4.^\circ07$)
(銀経、銀緯)=($l,b$)=($28.^\circ463$, $-0.^\circ204$)
(黄経、黄緯)=( $\lambda, \beta$)=($281.^\circ608$, $18.^\circ927$)

どうやってこのような座標変換を計算するのだろうか[*]?以下では、それを考えてみよう。



Ken EBISAWA 2011-05-30