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衛星のオイラー角を用いて、衛星座標と天球座標の変換を行うことができる。
観測装置の視野は、衛星座標に固定されている。それが、与えられた姿勢のとき、
天球上のどこに投影されるか、という問題である。
衛星座標系と赤道座標系の基底ベクトル間変換は、(54)で与えられるので、
衛星の姿勢を表すZYZオイラー角を
とすると、
衛星座標系に於ける成分,
, と赤道座標系における成分,
,
の間の変換は、同じ行列を使って以下の通りである。
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(64) |
具体的な例を考えてみよう。「すざく」衛星搭載のX線CCDカメラは、XY軸に沿った、
の正方形の視野を持っている。
その視野が、あるオイラー角で表される姿勢のときに、天球上のどこに来るか?
それがわからなければ、いったい空のどこを見ているのかわからなくなってしまう。
また、視野が軸対称ではないので、拡がった天体を観測するときには、視野の傾きを正確に知る必要がある。図4からわかるように、CCDカメラの正方形の視野に入ってくる
X線は、天球上にそれを投影した正方形に含まれる領域から発せられたものである。
CCDの中心にくるX線の到来方向の方向ベクトルは衛星座標系で
であることはただちに
わかるだろう。それ以外のX線については到来方向の方向ベクトルは
から少しだけ
ずれている。その方向ベクトルをまず衛星座標系でもとめ、それをオイラー角を使って
赤道座標系に変換すれば,対応する天球上の位置がわかる。
2006年10月15日から17日にかけておこなわれた銀河面観測のデータを見てみよう(シーケンス番号=500009020)。
https://darts.jaxa.jp/cgi-bin/judo/draw_fits_suzaku?seq_no=500009020&group=SUZAKUを見てみたらわかるように、この観測のオイラー角は以下の通りである。
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(65) |
さて、すざく搭載X線CCDカメラは衛星のZ軸の方向を向いており、その
の正方形の視野の辺はX軸、Y軸に沿っている。
つまり、衛星のXY平面上で、視野の4つの角は以下のXY座標を持つことがわかる(単位は度)。
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(66) |
また、人工衛星座標における、これら4つの角に対応する方向ベクトル(図4では赤で示した)は以下の通りであることがわかるだろう
(
radであることに注意。)。
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(67) |
(65)を(64)に代入して、この観測における、衛星座標上の方向ベクトル成分から
天球座標上の方向ベクトル成分への変換は、
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(68) |
となる。これに(67)を代入すると、赤道座標系におけるX線CCDカメラの4隅の方向ベクトル成分は、
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(69) |
であることがわかる。これを赤経,赤緯に直すには、(13) を用いれば良い。
結局、CCDカメラの4隅の赤道座標は、
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(70) |
であたえられる。JUDO (https://darts.jaxa.jp/astro/judo/?center_lng=281.004¢er_lat=-4.078&pa=0&ext=30&crd=equatorial&scl=log&img=color&selectedLayer=0,1,2,3,10,11,12,13,15,16,18,19,21,22,23,24,25,26,27,28&layer1=scl:log,img:color,op:1.00&layer4=scl:log,img:color,op:1.00&layer7=scl:log,img:color,op:1.00&layer10=scl:log,img:color,op:1.00&layer23=scl:log,img:color,op:1.00&layer26=scl:log,img:color,op:1.00&search_lng=266.404996&search_lat=-28.936172&search_crd=equatorial&search_radius=0.02)を使って、確認してみよう
。
実際、JUDOの中では上記のような計算をしている訳だが。
Ken EBISAWA
2011-05-30