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速度の変換則

先に考えた$K$系で運動する物体を$K'$系で見たときの速度を考えよう。 $K$系における物体の速度、$K'$系における物体の速度、$K$系と$K'$系の 相対速度を区別する必要があることに注意。

先と同じく、$K'$系は$K$系の$+z$軸方向に、$K$に対して速度$v$で動いているとする $\left(\gamma=1/\sqrt{1-(v/c)^2}\right)$。 物体の運動も、$K$系から見て$+z$軸方向とし、その速度を$u$とする( $u_x=u_y=0,u_z=u$)。 $K'$系から見た物体の速度を$u'$とする。 また、 $1/\sqrt{1-(u/c)^2}=\gamma_u, 1/\sqrt{1-(u'/c)^2}=\gamma_{u'}$とする。

\begin{figure}\centerline{\epsfig{figure=20071126/KKdash2.eps,height=6cm,angle=0} %
}
\end{figure}

ローレンツ変換の式(120)と、四元速度の定義(137)から、

\begin{displaymath}
\left(\begin{array}{c}
\gamma_{u'} u'_x \\
\gamma_{u'} u'_y...
...0 \\
0 \\
\gamma_u u \\
\gamma_u ic \\
\end{array}\right).
\end{displaymath} (139)

これから、
$\displaystyle u_x'=u_y'=0$     (140)
$\displaystyle \gamma_{u'}\: u_z'= \gamma \gamma_u (u-v)$     (141)
$\displaystyle \gamma_{u'} = \gamma \gamma_u \left(1-\frac{v}{c^2} u\right).$     (142)

(141)と(142)から、
\begin{displaymath}
u_z' = \frac{u - v}{1 - v u/c^2}.
\end{displaymath} (143)

$x',y'$方向の速度成分がないことがわかったので、単純に、$u_z'=u'$と書くことにする。 上式を解釈してみよう。まず、$u=0$のとき、$u'=-v$であるが、$K$系に静止しているものを $K'$系から見たら、$-z'$方向に速さ$v$で遠ざかることは自明である。

日常生活においては、 物体の移動速度は光速に比べてはるかに小さいので、$vu/c^2=0$と近似してよい。すると 上式は$u'=u-v$と言う、見慣れた式になる[*]

$u=c$のときには、$v$の値には関わらず、$u'=c$になる。これは光速度不変の原理に他ならない。 $u=-0.9c$, $v=0.9c$としてみよう。非相対論的に考えると、$K'$系から見て、物体は $u-v=-1.8c$で遠ざかっていくことになるが、そんなことは実際にはありえない。 式(143は、$-0.9945c$を与える。物体の運動の速度が光速を越えることは ありえないのだ。



Ken EBISAWA 2011-02-08