時々刻々と変化する人工衛星の姿勢を記述する「姿勢ファイル」の中身を見てみよう。
たとえば、「あすか」衛星の1993年9月28日の観測に対応する姿勢ファイルは
ftp://ftp.darts.isas.jaxa.jp/pub/asca2/10010120/aux/fa930928_0641.1435.gzに置いてある
これはFITS(Flexible Image Transportation System)という天文分野独自のフォーマットを持つが、その中身の一部
は以下のようなものである。
2.335207979544103E+07 -3.664577454889666E-01 4.253754826778572E-01 5.598341700062809E-01 6.093850355900631E-01 2.335208379541934E+07 -3.664573182646553E-01 4.253649060520620E-01 5.598375141751545E-01 6.093896030552058E-01 2.335208779543787E+07 -3.664571463319929E-01 4.253647582397316E-01 5.598375515033529E-01 6.093897753298769E-01 2.335209179521501E+07 -3.664635097319999E-01 4.253653064430918E-01 5.598271266903228E-01 6.093951430157092E-01 2.335209579523355E+07 -3.664768211073824E-01 4.253597832398843E-01 5.598082237138666E-01 6.094083582093963E-01一行目は、1993年の始まりからの経過秒、二行目のそれぞれの時刻に対する4つの数が、そのときの 人工衛星の姿勢を記述する単位四元数である。それぞれの時刻において、4つの数字の二乗和を計算してみよう。 1になっていることがわかるだろう。
多くの場合、人工衛星の姿勢を記述するのに、
四元数(quaternion)
が用いられる。四元数を使うと、任意の座標変換を連続的に表現できる、計算に三角関数が必要ない、9つの要素を持つ変換行列と比較して、パラメーター
が4つだけなので計算量が少くて済む、等のメリットがあるので、人工衛星の姿勢計算やコンピューターグラフィクスなどに広く
用いられている。また、オイラーの定理により、任意の座標変換はある回転軸のまわりの一回の回転で表される訳だが、四元数を用いて座標変換を表現すると、その回転軸と回転角が陽に表される。