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PLAINセンターニュース第164号 |
情報通信技術を宇宙科学にどう活用するか?(番外編)〜Google Earth を使った 新しい取り組み〜
齊藤 昭則
京都大学大学院理学研究科 村田 健史
1. はじめに(村田) STARS を中心に話を進めてきた本稿であるが、今回は、特別編として京都大学の齊藤昭則先生が開発している Dagik の紹介をしたい。数年前に Google 社から Google Earth が公開され、GIS 関係者だけではなく一般ユーザは度肝を抜かれた。PC 上に地球を全球表示するアイデアもさることながら、高解像度の衛星写真(特に都市部)まで拡大することができる Ajax 技術にも驚かされた。私も、さっそく Google Earth が採用している XML である KMLを 少しかじり、STARS でも現在、REIMEI 衛星の軌道を Google Earth 上で表示する機能を実装した。 京都大学理学部の齊藤先生は、Google Earth を利用した Dagik というサービスシステムを開発中である。Dagik では、Google Earth 上に多くのデータを同時に表示することができる。表示するデータ期間が 1日と固定されているが、その制約を活かして多くのデータサイトから KML を収集している。今後も発展が期待される Dagik であるが、その利用方法などを齊藤先生に寄稿していただいた。 2. Dagik によるジオスペース・データのクイック・ルック(齊藤) 2.1 KML/KMZ ファイルのスムーズな共有のための仕組み Google Earth を使ったジオスペース・データのクイック・ルック・システムの Dagik(ダジック:Daily Geospace data in KML)をいくつかの研究機関の研究者の協力を得て、2007年 3月から開発中です。Dagik は Google Earth 上へのプロットのリンク集の様なもので、いろいろなデータを簡単にまとめて表示することを目的としています。Dagik のクイック・ルックで興味を持ったら、それぞれのデータベースへアクセスして使ってもらう、という形態を想定していることから、データの入り口的な役割になると期待しています。KML とは Google Earth で表示するデータ形式で、KMZ はその zip 圧縮ファイルです。 2.2 共有のための工夫:Dagik ルール Google Earth へデータをプロットすることは、多くの方が始められていますが、そのデータファイルである KML/KMZ ファイルをスムーズに共有することが出来れば、複数のデータを合わせて表示できるので、便利ではないか、というのが出発点です。異なるデータのファイルを同時に表示する場合に、いくつかルールを守って作成すると共有が容易になることから、Dagik では以下の3つのルールを決めました。
(1) は異なる時間幅のデータがあると表示が困難になるためです。例えば 2007年 1月 1日から 12月 31日までのデータと 2007年 1月 1日0時から 1時までのファイルが混在すると、Google Earth 上では見たい時間を表示させるのが難しくなります。(2) は地理上ではなく画面上に表示するパネルの大きさを揃えると、上に図を重ねることで、時間的な比較が可能になります。現在の Dagik の中の SYM 指数と AE 指数の図などがこの例になります。(3) は、それらの KML/KMZ ファイルを Dagik に登録することで、KML/KMZ の所在がどこであれ、簡単にダウンロードし表示することを可能にするためです。図は ACE 衛星太陽風データ、地磁気 SYM 指数(月間、一日)、GPS 全電子数、GEOTAIL 衛星 footprint を表示した例です。
図 Dagik によるデータ表示の例 2.3 Dagik 利用の目的 Dagik を利用する目的としては、主に以下の3つを想定しています。
2.4 Dagik の使い方 以下の3ステップで Dagik のジオスペース・データの表示が出来ます。
2007年 6月現在、Dagik はまだテスト段階のため、データには不正確なものがありますので、ご注意下さい。 2.5 Dagik へのデータの追加 京都大学以外に、名古屋大学太陽地球環境研究所、情報通信研究機構、宇宙科学研究本部などの研究者にご協力いただき、Dagik で表示されるデータを増やしています。以下の3ステップで、お手持ちのデータを Dagik に加えていただけます。
2.6 Dagik データ・センターの役割 私ども Dagik データ・センターの役割は以下の3点です。
(2) の Dagik tool box では、地磁気座標の表示、観測所情報の表示、3次元単語集などデータ以外のツールの整備を進めています。(3) は、KML/KMZ 作成プログラム、KML ガイドなどを提供することで、データを持っている方がデータを KML/KMZ ファイルに変換することを支援しています。また、2007年 5月の地球惑星科学連合大会で展示しました、Dagik を半球状のスクリーンに投影することで、立体的に表示する "Dagik ball" の仕組みも、その作成の know-how の情報などを提供させて頂いております。 3. Dagik の今後(齊藤) 現在はシステムの確認のためのテスト段階ですが、システムの安定性が確認できた時点で、データとして利用していただく目的での公開をしたいと思います。また、現在、いくつかのデータを追加するための作業を進めております。その中には、GEOTAIL 衛星などの磁気圏衛星の磁力線に沿った foot print(PLAIN センターの宮下さんが準備中)、熱圏・電離圏数値モデルの結果、電離圏経験値モデル、放射線帯粒子データなどがあります。このほかにも様々なデータを表示することで、さらに新しい可能性が広がると思いますので、Dagik にデータを追加することに興味を持たれる方は、 「情報通信技術を宇宙科学にどう活用するか?」バックナンバー 村田 健史 (155号から続く)
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