No.241
2001.4


ISASニュース 2001.4 No.241 

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XEUS計画


 “より遠くを見たい”,これは常に天文学の最先端のテーマである。2010年代中期のX線観測計画として議論が進められているXEUS計画は,宇宙の構造形成の初期に形成されたと考えられる最初のブラックホール,さらに最初の銀河群の形成に始まる宇宙の再過熱と熱い宇宙の形成の歴史を,その最初から現在まで明らかにすることを第一の目標としている。これは冷たい宇宙の歴史を調べる可視光や赤外線の観測と相補的関係にあろう。

 この観測の実現のためにはわずかな数のX線光子を集める大面積の望遠鏡が必要である。X線望遠鏡ではこれは長い焦点距離を意味する。XEUSのめざす直径10mの望遠鏡では50mの焦点距離が必要である。これを実現するには軌道上に巨大な建造物をつくるよりもX線望遠鏡衛星と焦点面検出器衛星の二つの衛星を編隊飛行させるほうが理にかなって,必然的に編隊飛行の技術が必要となる。

 XEUSはヨーロッパ(ESA)が中心となって議論されている計画であるが,計画の重要性と大きさから地球規模の国際協力ですすめるべきものであろう。我々も検出器衛星を担当することを念頭に,参加の可能性を検討している。

 編隊飛行においては検出器衛星が非ケプラー軌道を飛行することを想定しており,この軌道制御のための推進燃料と電池が検出器衛星の重量の大部分をしめる。検出器衛星は実は巨大な電気推進衛星なのである。図には宇宙研の理工の有志の集まりで検討した結果に基づく検出器衛星の概念図を示した。電気推進系を効率よく運用する工夫を行ったことにより,ESAの案よりも2トンの重量削減に成功した。しかし宇宙研案でもまだ4トンの重量が必要である。この計画の実現には克服すべき大きな技術的な開発課題が残されているが,衛星の大きさに見合った大きな科学的成果が期待される。ぜひ我が国も参加して実現したい。

 なおXEUS(X-ray Evolving-Univserse Spectroscopy)は「ゼウス」と読んでいるが,英語の発音は「ズース」である。

(満田和久 他 次期X線天文衛星ワーキンググループ) 


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超高角分解能X線望遠鏡衛星計画
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