No.197
1997.8

ISASニュース 1997.8 No.197

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エーゲ海の「ノー・プロブレム」

   星野真弘

 エーゲ海に浮かぶパロスと呼ばれる島で,磁気圏物理学関連の国際会議 「Solar-Terrestrial Coupling Processes」がありました。日本からの参加は4名,全体で50名程度の中身の濃い会議でした。国際会議は時々リゾート地で行うことがありますが,今回の会議もまさに夏のバカンス地といったところでしょうか,青く澄み切った空と海,まばゆいばかりの白塗りの家々が並ぶ風景,そして燦々と降り注ぐ太陽を浴びながらのギリシャでの会議でした。

 エーゲ海は日本から遠く,ヨーロッパの都市で一泊しないと行けません。私はフランクフルト,アテネ経由でパロス島に向かいます。さて少々疲れ気味でアテネに着いた途端,いつもの在り来たりの海外出張とは違う何かが始まりました。アテネ空港でパロス島への飛行機の搭乗手続きを済ませてゲート前までいくと,知り合いを何人か見つけます。「やあやあよく来たね」といつもの挨拶をして仕事の話などをしているとアナウンスがあり,「テクニカルな理由により飛行機が遅れます」と放送が入ります。パロス行きだけでなく他の便も遅れているようです。1時間ほど待っても「テクニカルな理由で飛行機が遅れます」と何度も放送するだけ。業を煮やして航空会社の人に状況を聞いても「ノー・プロブレム」の返事が返ってくるだけ。一緒に待っていた米国やドイツの友人は,「ギリシャはこんなところさ,驚かないね」と,特に気に留めていないようです。1時間半置きに数便アテネからパロスへの飛行機があったと思いますが,続々と会議に参加する人たちがやってきて,「君は何時の便か」「飛行機が遅れているから君のは3時間は待つぞ」などとやっています。スケジュール通りに動いていないのを,皆さん楽しんでいる(?)ようですが…ところが,実は「テクニカルな理由」とは,航空管制官のストライキが急に始まったからで,夕方の便以降はすべてキャンセル,そして殆どの人が船に乗り換え6時間かけて辿り着くという有り様でした。おまけに夜の9時アテネ港発,朝の午前3時パロス着のエーゲ海クルーズ(?)です。(私は午後の最初の便を予約していたので,夕刻には飛行機に乗れて無事パロスまで着きました。いつも人生こうだといいんだけれど。)

 さて話題を変えてレストランの話。例えばフランスでは「ビストロ」と書かれているのは気さくな感じのレストランの位置づけで,ギリシャではそのランクのレストランを「 TAVERNA(食べるな)」と呼びます。「タベルナ」ではドイツの友人に勧められて地酒の「ウゾ」を飲んでみました。葡萄の皮から作った白っぽい色をした甘い香りのする飲み物です。ウェイターも嬉しそうな顔をして運んでくるので,察しはついたのですが…お勧めします。私のようにお酒に弱い者には,とんでもない飲み物です。

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 さて会議も終わり帰宅の旅路に着くときまたハプニングがありました。殆どの参加者は会議の会場となっているホテルに宿泊しますが,私を含めて数名は予約が溢れてしまい,約3km程離れた別のホテルに泊まっていました。朝夕の「通勤」を含め足が必要なときは,会場となっているホテルがワンボックス車を出してくれました。ハプニングは会議も終わりチェックアウトの朝。私と会議で知り合ったイタリア人は,パロス空港より9時55分の飛行機でアテネに戻るので,空港まで送っていってもらえるかどうか前日に確認し,朝8時半に我々のホテルまで迎えに来てくれるようお願いしておきました。ところが8時45分頃になってもホテルの車はやってきません。心配になりホテルに電話すると「今行く,ノー・プロブレム」です。アテネに着いたときからこの言葉は何度も聞いているので,またかとあきらめ気味。9時になってもやってきません。これは大変,空港まで20km以上はあります。もう一度会議場のホテルに電話すると,「空港に宿泊客を送っていっているので,その後迎えにいく」と,とんでも無いことを言います。怒りを抑えてタクシーを呼ぶことにしましたが,そのタクシーも「今すぐ行く」と言っておいてなかなかやってきません。なんと迎えに来たのが9時30分。大慌てでタクシーに乗り込み,未舗装の道路を土煙を立てて飛ばし空港に着いたのが,9時55分。チェックインカウンターにかけ込み「遅れたけれど飛行機に乗れるか」と聞くと,飛行機を指さして「ノー・プロブレム。」なんとのんびりした所なんだろうか。

 ギリシャは日本とは時間の捉え方が違うのでしょうか。色々ハプニングがありましたが,それでもエーゲ海はとても良いところでした。ある日会議を終えてから,崖に立つ灯台までハイキングをしましたが,爽やかな風に吹かれて眼下を見るとイルカが泳いでいます。旅情を満喫させてくれます。いつものように本や書類を抱えて出かけたのに,殆ど何も仕事はやらずに帰ってきました。(いつもは宇宙研では出来ない仕事が海外出張中にできるのに)それくらい優雅な会議でした。

(ほしの・まさひろ)


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