エーゲ海の「ノー・プロブレム」
星野真弘
エーゲ海に浮かぶパロスと呼ばれる島で,磁気圏物理学関連の国際会議 「Solar-Terrestrial Coupling Processes」がありました。日本からの参加は4名,全体で50名程度の中身の濃い会議でした。国際会議は時々リゾート地で行うことがありますが,今回の会議もまさに夏のバカンス地といったところでしょうか,青く澄み切った空と海,まばゆいばかりの白塗りの家々が並ぶ風景,そして燦々と降り注ぐ太陽を浴びながらのギリシャでの会議でした。
エーゲ海は日本から遠く,ヨーロッパの都市で一泊しないと行けません。私はフランクフルト,アテネ経由でパロス島に向かいます。さて少々疲れ気味でアテネに着いた途端,いつもの在り来たりの海外出張とは違う何かが始まりました。アテネ空港でパロス島への飛行機の搭乗手続きを済ませてゲート前までいくと,知り合いを何人か見つけます。「やあやあよく来たね」といつもの挨拶をして仕事の話などをしているとアナウンスがあり,「テクニカルな理由により飛行機が遅れます」と放送が入ります。パロス行きだけでなく他の便も遅れているようです。1時間ほど待っても「テクニカルな理由で飛行機が遅れます」と何度も放送するだけ。業を煮やして航空会社の人に状況を聞いても「ノー・プロブレム」の返事が返ってくるだけ。一緒に待っていた米国やドイツの友人は,「ギリシャはこんなところさ,驚かないね」と,特に気に留めていないようです。1時間半置きに数便アテネからパロスへの飛行機があったと思いますが,続々と会議に参加する人たちがやってきて,「君は何時の便か」「飛行機が遅れているから君のは3時間は待つぞ」などとやっています。スケジュール通りに動いていないのを,皆さん楽しんでいる(?)ようですが…ところが,実は「テクニカルな理由」とは,航空管制官のストライキが急に始まったからで,夕方の便以降はすべてキャンセル,そして殆どの人が船に乗り換え6時間かけて辿り着くという有り様でした。おまけに夜の9時アテネ港発,朝の午前3時パロス着のエーゲ海クルーズ(?)です。(私は午後の最初の便を予約していたので,夕刻には飛行機に乗れて無事パロスまで着きました。いつも人生こうだといいんだけれど。)
さて話題を変えてレストランの話。例えばフランスでは「ビストロ」と書かれているのは気さくな感じのレストランの位置づけで,ギリシャではそのランクのレストランを「 TAVERNA(食べるな)」と呼びます。「タベルナ」ではドイツの友人に勧められて地酒の「ウゾ」を飲んでみました。葡萄の皮から作った白っぽい色をした甘い香りのする飲み物です。ウェイターも嬉しそうな顔をして運んでくるので,察しはついたのですが…お勧めします。私のようにお酒に弱い者には,とんでもない飲み物です。