No.196
1997.7


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「はるか」,干渉実験に成功

 電波天文衛星「はるか」は,地上電波望遠鏡とのスペースVLBI干渉実験を,5月7日に行いました。観測天体はクェーサーPKS1519-273,観測周波数帯は1630-1646MHz帯で,「はるか」の受信信号は臼田宇宙空間観測所の10mテレメトリーアンテナに中継されました。共同観測局として臼田64mアンテナ,通信総合研究所関東支所(鹿島)34mアンテナが参加しました。
 3局で記録された磁気テープは,衛星軌道データをもとに,国立天文台で運用されているVSOP相関器で相関処理され,5月13日,「はるか」- 臼田間で,S/N比13(200秒積分)の干渉縞が検出されました。
 さらに,5月13日のクェーサー1504-167での同様の実験では,「はるか」- 臼田間のみならず,「はるか」- 鹿島間でも,5月21日に干渉が確認されました。3局で成功すると,映像作成に重要な Closure Phase という情報が得られますが,これは良好な結果で,映像作成へむけて大いに期待できるものでした。
 これにより,「はるか」の工学実験としての最大目標であるスペースVLBIの可能性が実証され,VSOP観測への歴史的な途を拓くことができました。
 外国グループとも懸命な干渉実験を続けていましたが,6月12日,カナダのドミニオン電波天文台の相関器が,「はるか」のゴールドストーン局のテレメトリーに対して,オーストラリア3局の電波天文台との相関検出を知らせてきました。
 6月13日には,アメリカ国立電波天文台ソコロの相関器が,「はるか」のグリーンバンク局テレメトリーに対して,VLBA(8,000kmにひろがるVLBI専用電波望遠鏡群の25mアンテナ10局のうちの8局)とVLA(25mアンテナ27基がまとまって130mアンテナ相当として稼働)との干渉に成功しました。
 VSOP計画の世界の運用エレメントは急速に立ち上がりつつあります。更に超高分解能イメージングの実験も始めています。

(平林久)


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ASTRO-Eの構造モデル試験

 わが国第5番目のX線天文衛星ASTRO-Eは,2000年1〜2月期の打上げをめざし,まもなくフライトモデルの製作が始められる。その製作に先立ち,衛星構体や搭載される大型観測装置の構造設計にまちがいのないことを確認するため,この5月末より構造モデル試験が,宇宙研を中心に行われている。6月20日現在,三軸方向の振動試験のうちのX軸・Z軸方向の試験と衝撃試験を 無事終了し,6月30日からは,宇宙開発事業団筑波宇宙センターの設備をお借りして音響試験が行われる。
 ASTRO-E衛星は,総重量約1650kg,衛星の直径約1.9m,打上げ状態での衛星の高さ約5m(軌道上では,X線望遠鏡の鏡筒部がさらに約1.5m伸展される)という宇宙研にとってこれまでにない大型の衛星である。さらに,ASTRO-Eには,X線マイクロカロリメーターと呼ばれる新しいX線検出器が世界ではじめて宇宙X線観測用に搭載される(日米協力で製作が進められている)。これは,天体からやってくるX線光子一つ一つのエネルギー(波長)を,約摂氏マイナス 273度(絶体温度約0.1度)に冷やした検出器への熱入力(X線受光素子の温度変化)としてはかるもので,これまでのX線検出器の波長分解能を格段に上回る,画期的なX線検出器である。しかしながら,そのX線受光部をたいへんな低温に冷却する必要があるため,大量の冷媒(固体ネオンと液体ヘリウム)を必要とし,総重量約 400kg(これだけで「あすか」の総重量に匹敵する)の大型観測装置である。これら大型の衛星構体や伸展式光学ベンチ,X線マイクロカロリメーター用の大型デュワーは,それぞれ振動・衝撃条件に対しぎりぎりの設計になっており,このまま何とか無事に構造モデル試験を切り抜けてほしいと祈るような気持ちの毎日が続いている。

(井上 一)


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平成9年度第1次大気球実験

 平成9年度第1次大気球実験は,平成9年5月19日より6月10日まで三陸大気球観測所において実施された。実験開始当初は雨が8日間も続き予定期間に全ての気球実験ができるか危ぶまれたが,放球した気球はEV01型1機,B5型2機,B100型1機とB150型1機の計5機であった。尚,当初予定していたB150-1号機は上層の風が速く長 時間観測に適さないため,第2次大気球実験に延期した。 B100-5号機は,液体ヘリウムを用いたクライオサンプリング法で成層圏大気を採取し,それに含まれる微量成分(クロルフルオロカーボン,CH4,CO2等)の高度分布および経年変化を観測する目的で行われた。実験は気球をゆっくり降下させながら12本の試料容器に高度別の大気を採取することに成功し,試料容器は無事完全な形で回収された。また,本実験は今年度南極昭和基地で行うことが計画されており,隊員の放球訓練および受信システムの試験もあわせて行われた。
 B150-2号機は,シンチレーションファイバーを用いた観測器によりエネルギー10GeVから数百GeV領域の宇宙一次電子の観測を目的に行われた。8時間の飛翔中に電子を含む宇宙線が観測器中で起こす約6万イベントのカスケードシャワーの観測に成功した。観測器は日本海沿岸で無傷で回収された。 B5-136号機,B5-135号機およびEV01-2号機は,何れも将来の長時間飛翔を目的に開発が行われいる気球の飛翔性能試験であった。前者の2機は,気球に内圧をかけるオーバープレッシャー気球の開発の一環として,後者は現在使用している気球材料と異なる特性を持つエバールフィルム(エチレン・ビニル・アルコール)で製作した気球の性能試験であった。3機の気球とも予定高度まで飛翔し,所期の目的を果たし今後の気球開発に有益なデータを取得することができた。

(山上隆正)


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NASA長官との会談

 6月2日に,来日中のNASA長官ゴールディン氏ら8名と,宇宙研の西田所長ら日本側8名が,文部省の会議室で会談する機会を持ちました。西田所長からの,M-Vの初号機と衛星「はるか」の成功の紹介に対し,最大級の賛辞を頂戴した後,日・米の宇宙科学の長期的な課題と,相互協力を中心に,45分間の会談を行いました。
 ゴールディン長官が,日本の宇宙科学の現状を大変よく理解し,高く評価していること,NASAがすっかり自信を取り戻していることが,印象的でした。この後,同長官は,文部省の井上事務次官を表敬訪問しました。

(中谷一郎)


ゴールディン長官(左から5人目)と,米側列席者

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小杉文部大臣来所

 去る6月13日,小杉文部大臣が宇宙科学研究所相模原キャンパスを視察された。午後1時過ぎ,キャンパス内の研究・管理棟の玄関に着かれ多数の教職員の出迎えを受け,約1時間半の短時間に,宇宙科学に関する展示物や本研究所の科学衛星による観測成果等を見ていただいた。
 到着後先ず,所長室に御案内し,所長室では,西田所長,松尾企画調整主幹,廣澤教授,松本管理部長が対応し,今回の視察に随行の文部省の中西審議官と及川研究調整官の同席のもと,本研究所の概要と将来計画,科学衛星「はるか」の成果について説明の後,M-V型ロケットの打上げビデオを御覧になっていただいた。
 展示ロビーではロケットの歴史や模型等,宇宙飛行士若田さんが回収したSFU搭載の宇宙赤外線望遠鏡を見学された。そのほか,飛翔体環境試験棟では、ASTRO−Eの衛星,特殊実験棟では「ようこう」で観測した太陽のX線画像についての説明を受けられた。説明のなかで共同研究等で来所中の外国の研究者に質問されるなど,宇宙科学の研究成果と国際協力の現状等に関心を示された。

(伊谷賢二)

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山口宇宙開発委員長代理,野村前委員長代理来所

 6月19日,山口開生宇宙開発委員長代理と野村民也前委員長代理が宇宙研を訪問された。昼食をはさんだ概要説明ののち,折から振動試験準備中の次期X線天文衛星ASTRO-Eの構造モデル,“ようこう”の解析室等をご覧になった。また棚次教授による空気吸込式エンジンATREXの開発,黒谷助教授による宇宙生物学の実験,廣澤教授による“はるか”の現況等のトピックスにつき詳論を,訪問時間を延長の上お聞き頂いた。
 “ようこう”のX線による太陽画像の説明ののち,野村先生から“このようにキチンとした説明を聞くのははじめてである。どうも(私を)馬鹿にしていたのではないか”とのご感想があった。滅相もありませんが事実とすればまことに怪しからん話であります。

(松尾弘毅)

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宇宙研ビデオ「私たちの太陽系」奨励賞受賞!

 宇宙研ビデオ「私たちの太陽系」第5巻が,文部省・通産省・毎日新聞社が後援する日本産業映画ビデオコンクールで奨励賞を受賞しました。受賞式は6月23日に如水会館で行われ,138件応募の中から選ばれて,評価されたという事は宇宙研にとってうれしい事です。内容は太陽系の進化についてこれまでどんなことがわかっているのか。また現在どのような課題をもって,どのような夢がある探査計画が展開されようとしているのかを紹介したビデオです。製作委員の方々は短い期間で写真を各所から探して歩いたり,長い時間帯ビデオのナレーションとか音楽録りに立ち会ったりして大変な思いをして製作に当たられました。こうしてできあがったものをこの受賞を機会に,多くの人に見てもらいたいと思っています。(ビデオは(財)宇宙科学振興会で有償で入手することができます。)今後のビデオ製作にとって楽しみのひとつである予感がします。製作委員の方々有り難うございました。

(渡邊遊喜枝)

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野村民也名誉教授に勲二等旭日重光章

 本研究所,野村民也名誉教授が,この度の春の叙勲で,勲二等旭日重光章を受章されました。野村先生が,我が国の宇宙開発の草分けとして,御尽力されて以来の,赫赫たるご功績は,今更申し上げるまでもありませんが,今回の受章は,私達にとってもひときわ喜ばしいことであります。

(中谷一郎)

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新しい小惑星を「マトガワ」と命名

 このたび国際天文連合(IAU)は,1992年10月1日に北海道北見の円館金さんと札幌の渡辺和郎さんによって発見された小惑星6526(1992GZ)を,宇宙科学研究所の的川泰宣教授に因んで「Matogawa」と命名しました。冨田弘一郎氏(元国立天文台)の推薦文には,「的川教授は,ロケット工学・宇宙科学の発展,その国際協力に多大の貢献をし,さらに日本宇宙少年団の活動等を通じて子どもたちに大きな夢を与えたから」とあります。なお「番号の6526のうち,26は三鷹の望遠鏡の口径をインチで,65はそれをセンチで表わしていて面白い」とは,冨田氏の弁。
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