No.192 |
<研究紹介> ISASニュース 1997.3 No.192 |
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図1にハニカムコアのセル1つ分の有限要素モデルを示す。最も外側に厚さ tf の表皮があり,次に厚さ ta の接着シートがありその下に高さ tc のコアがある。中立軸(中心)から離れた所に剛性の高い材料を配置すればよいので,衛星・ロケットの構造のように,軽量化を追及する場合は,表皮に高剛性タイプのCFRPを使い,コア高さ tc を大きく,表皮厚さ tf を小さくする。これにより太陽電池パドルなどには表皮厚さが0.1@で,コア高さが2インチ(50.8@)というようなものまで使われている。表皮とコアは120℃で接着されるが常温に戻す間に,熱膨張係数の違いから(CFRPはほとんど0,アルミは6 x 10-6/℃であり接着剤はさらに多きな値である)表皮に圧縮,コアに引張の残留熱応力が発生し,上記の様に表皮が極めて薄い場合には,図2に示すような表皮にコアの周期に一致する細かい熱座屈(ディンプル)が生じ,板としての剛性,圧縮座屈荷重が大きく低下する。また,常温ではこれが顕著で無い場合でも,宇宙空間では日影になる時などには温度がさらに低下しディンプルが生じる。太陽電池セルを貼る場合には,くぼみに接着剤が入りすぎて,せっかくの軽量化が台無しとなるなどの問題も生じる。
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この現象は極めて複雑である。温度を下げていくと,表皮の熱による圧縮応力が増加し,それにより曲げ変形が大きくなるが,同時にその変形により応力が緩和される。熱応力解析と大変形解析と異方性(表皮は一層ではなく異なる特性の層からなる積層板である)の問題を同時に解かねばならない。図3に,b=9.5@,tf=0.1@,tc=20@,th=0.05@の場合の解析結果を示す。縦軸は温度の低下量で横軸はディンプル深さである。接着層が無い場合と0.1@の接着層を持つ場合を比較する。接着層が無しの場合は温度低下が50℃付近でディンプルが深くなり始めその後急激に増加し,最終的には180μmにも達する。一方,0.1@の接着層を持つ場合は80℃付近までディンプルはほとんど深くならず,その後緩やかに増加していくが,120℃でも75μmにすぎない。この結果からは、接着層は安全側に働くように見える。ところが,実際に衛星構造などに使われるものでは,よりいっそうの軽量化のためさらに薄いシート型接着剤を使い,接着剤は硬化後にはコア箔 と表皮の接合点付近のみに集まるように特殊な処理がなされている。そのモデル化をしたのが図4であり,最終的な熱変形(実際の50倍に拡大してある)を同時に示す。この様なモデル化を行うと,図3に“穴開き0.2@”として示すように、ディンプルは温度低下が少ない内からさらに大きく発生する事になり,より深刻な事態である事がわかる。
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軽量化による別な問題として,ハニカムサンドイッチ板が空気力により影響を受け,それが無視できなくなる事も近年発生してきている。有名なのは,大きな太陽電池パドルまたはアンテナが地上での振動試験において空気中で振動する際に,表面近くの空気を押しのける事でみかけの質量が増え,共振振動数が空気が無い場合に較べて低下する事として知られている。この問題については付加質量による近似解法により比較的容易に処理されてきている。一方,近年益々大型化,軽量化されてきた太陽電池パドルは,打ち上げ時には 蛇腹のように折り畳み収納される事が多くなっている。 これらは,打ち上げ時の振動に際し,パネル間に挟まれた空気層から大きな影響を受ける。実際に,平成4年に打ち上げられた地球資源衛星(ふよう)1号に搭載されていた合成開口レーダーは,縦2.3m x 横1.4m x 厚さ22@,質量15L/枚のハニカムサンドイッチ板が6@の間隔で8枚折り畳まれたものであった。振動試験において,面外方向の共振振動数は61Hzであったが,空気力を考慮しない有限要素法解析では52.1Hzと大きな差が生じた。間の空気層が板の振動に対して空気バネとして作用し,共振振動数をこのように17%も高くした。構造体の強度保証等を試験のみでの確認が不可能で,かなりの部分を解析により行っている衛星構造では大きな問題となる。
従来から造船などの分野において液体(重く圧縮されない)と構造の連成問題は比較的多く研究されてきているが,空気等の気体とのものはほとんど無い。我々は,空気と構造の連成振動の問題を有限要素法により統一的に解析することを試みた。解析した問題の一例を図5に示す。ここでは解析の簡単化のために,次の仮定をもうけた。多層板を一枚の柔軟な(もちろん非常に軽い)板と,両隣になる剛性の高い板(剛壁)でモデル化する。さらにそれらは紙面に垂直な方向に無限に続いているとする事により,二次元問題として扱った。ここで板(梁)の長さを1とし,空気層の厚さを da とし,それらを変えて計算した。最低次共振振動数の結果を図6に示す。
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横軸は空気層の幅を板の長さで割った無次元空気層厚さであり,縦軸は空気を考慮した時の振動数を空気力が無い時のもので無次元化した振動数である。板の長さが0.2mのように短い時には振動数は常に1より小さく,空気の付加質量効果により振動数は低下することがわかる。0.5mの場合は,空気層が薄い時にはバネ効果で振動数は高くなり,空気層が厚い時には付加質量効果により振動数は低下する。0.8mの場合も同様である。空気層が薄い場合にモードが二つ存在するのは空気の流れの挙動が異なるためである。この事から,空気の付加質量効果とバネ効果がどういう場合にどのように現れるかを示すことができた。(わたなべ・なおゆき)
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