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はやぶさ近況

第二回はやぶさ国際科学シンポジウム,一般講演会が盛況

「はやぶさ」

図1 第二回はやぶさシンポジウム参加者全員が署名した
  学術雑誌『Science』のはやぶさ特集号   

 来春の地球帰還開始に備えて,現在,日々運用中の「はやぶさ」。小惑星イトカワの初期観測結果は,今年3月の月惑星科学会議(LPSC)や6月の学術論文誌『Science』で報告されました。続く7月に「はやぶさ」チームは,それらを超えた研究の進展を議論する「第二回はやぶさ国際科学シンポジウム」と,成果を一般の方に分かりやすく伝える「一般講演会:はやぶさの見た小惑星イトカワ」を開催しました。

 「はやぶさシンポジウム」の第一回は,イトカワ到着を1年後に控えた2004年秋に「総研大国際シンポジウム」に採択され,相模原キャンパスで開催されました。当時は地上観測,隕石・宇宙塵分析,軌道力学進化などの知見を総動員し,小惑星イトカワの姿を徹底的に予測しました。1年後にはやぶさ探査機が見たその正体は,予想通りの一面と,誰も想像できなかった新発見が入り混じったものでした。

 第二回の今回は,なぜイトカワのような微小天体があれほど変化に富んだ地形や構造を持つに至ったのか,つまり,微惑星成長過程の衝突破壊・合体の素過程の解明について,白熱した議論が交わされました。7月12〜14日に東京大学浅野キャンパスにある武田先端知ビル・武田ホールに,海外からの参加者24名を含む総勢73名の研究者が集いました。

 小惑星滞在時の詳細な運用実績を論じた後に,各科学観測機器のデータに基づいて,軌道力学,衝突実験,地質学,地上観測などで独自に得られた研究結果を解釈し直したり,「微小重力地質学」のような新しい研究課題が提案されたりしました。特に,母天体の衝突破壊後に再集積した微小天体が「瓦礫の寄せ集め(ラブルパイル)構造」を持ち得るというアイディアは,20年ほど前に前「はやぶさ」プロジェクトサイエンティストの藤原顕先生が自らの衝突実験結果から初めて提唱したものです。今回の議論を通じて,あらためてその先見性が高く評価されると同時に,「はやぶさ」が史上初のラブルパイル小惑星を発見したという縁に,感慨を深くした参加者も多かったようです。

 採取試料の初期分析の方向性についても,その場観測の結果を踏まえた議論が交わされました。また,スターダスト(彗星塵)とジェネシス(太陽風粒子)の回収試料の初期分析活動から得た貴重な教訓も,激励を込めて「はやぶさ」チームに伝授されました。さらに,「はやぶさ」に続く日本の始原天体探査プログラムへの大きな期待が,各国の研究者から表明されました。

 一般講演会は,シンポジウムに先立つ7月8日,福島県会津若松市の会津大学に100名以上の市民をお招きして開催されました。参加者全員に赤青メガネと地名入り地質図を配布して,自転するイトカワの立体画像を見せながらの「イトカワ名所巡り」を解説するなど,学術発表とは一味違った楽しい講演会でした。

 なお,はやぶさシンポジウムシリーズは,企画段階から3回連続で行い,地上観測(2004年),探査機によるその場計測(2006年),採取試料分析の各段階によって,小惑星に対する理解が深まる過程を追いかけていくという目的を掲げてきました。従って,第三回は地球帰還カプセルを回収して,採取試料の初期分析が行われる予定の2010年ごろに開催したいと希望しています。

図2 第二回はやぶさシンポジウム参加者の集合写真

(矢野 創) 


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