No.302
2006.5

ISASニュース 2006.5 No.302

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アメリカ・台湾出張記 

固体惑星科学研究系 安 部 正 真 


 3月は年度末の慌ただしい中、2回の海外出張があった。一つはアメリカ、一つは台湾である。

 アメリカ出張は、先月号の「東奔西走」に出村さんが寄稿したヒューストンでのLPSC(月惑星科学会議)参加なので、ここであらためて詳しくは書かない。「はやぶさ」ミッションの科学的な成果を世界中にアピールできた、歴史的な1週間であった。


山道を登って鹿林天文台へ

 その興奮と感動も冷めやらぬうち、翌週には天体観測のために台湾に出張した。観測は、台湾中部にある鹿林天文台で行った。鹿林天文台へは、台湾北部の中正国際空港から車で5時間以上かけて移動する。台湾では国際免許証が使えないので、車の運転は天文台のアシスタントにお願いした。天文台は標高2862mにあり、最後の30分は車を降りて、自力で山道を登って、ようやくたどり着く。鹿林天文台の近くには、日本の富士山よりも標高が高い玉山(標高3952m)があり、登山客が訪れるようなところである。

 今回の観測ターゲットは、「はやぶさ」に続く次の小惑星探査の候補天体である。台湾の中央大學の研究者との共同研究で、鹿林天文台を年数回使わせていただいている。前回私が訪れたのは約1年前で、その際は20年ぶりの大雪に見舞われ、まともな観測ができなかったばかりか、最終日に山を降りることもできないという経験をした。今回の天候はまずまずで、目的の成果が得られ、大変有意義な出張であった。


テレビ電話のおかげで

 最近は世界中どこへ行ってもインターネットにつなげる状況で、アメリカのホテルや学会会場はもちろん、台湾の山奥の観測所でも状況は同じである。出張中、アメリカでは日中は会議に出席し、夜中にホテルで日本とメールのやりとりを行う。一方、台湾では夜中は観測で起きているが、日中に日本とのメールのやりとりを行うので、常に睡眠不足である。

 今回の出張では、初めて日本にいる家族とインターネットを用いて電話をしてみた。スカイプというツールをご存知の方も多いと思うが、最新版はビデオ画像も送信できるので、回線がそれなりに太ければCCDカメラを接続することで、無料でテレビ電話をかけることができる。今回、我が家のパソコンにもCCDカメラを取り付けて、出張先から何度かテレビ電話の試験を行った。月の半分以上も海外出張すると、家族の不満もそれなりに高まり、家庭不和の危機にさらされることになるのだが、今回はこのツールのおかげで、電話をかけると家族も喜んでくれた。皆さんも、お試しあれ。


台湾の楽しみ

 最近の出張は時間的に余裕がないせいか、滞在中に観光的なことをする暇がないのだが、食事をとると海外に来たことを実感する。

 アメリカではいつも食事に苦労をして、1週間もいると身体の調子がおかしくなるのだが、台湾ではそのようなことはない。同じアジアだということもあるが、台湾での食事は、何を食べてもおいしいと感じる。観測所では現地スタッフの人々が手料理をごちそうしてくれるので、いつも食事の時間が楽しみである。また今回、観測が終わって、台湾北部にある中央大學に戻る長時間の移動の途中、嘉義という町の食堂で昼食をとったのだが、ここで食べたどんぶり飯(魯肉飯)とスープ(貢丸湯)も非常においしかった。

 アメリカと台湾の出張が重なって、どちらも同じ重要度だったとしたら、きっと私は台湾出張を選ぶでしょう。

観測が終了した後、観測ドームから撮影した台湾・鹿林天文台周辺の夜明けの風景。雲海が朝焼けに照らされてきれいですが、この雲海が観測中に上がってくると観測ができなくなって困ります。

(あべ・まさなお) 


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