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南極周回気球実験「BESS-Polar」の実施

打上げクレーン車につられたBESS-Polar測定器と,
ヘリウムガスを注入中のNASAの大気球。


 日米共同気球実験BESS-Polarを,南極マクマード基地にて実施した。同実験はJAXA宇宙科学研究本部,高エネルギー加速器研究機構(KEK),東京大学,神戸大学,NASA/GSFC,メリーランド大学を参加機関とし,反陽子や反物質などの宇宙線観測によって初期宇宙における素粒子現象の探索を目指している。超薄型超伝導ソレノイドコイルと粒子検出器群から成る新しく開発された気球搭載型超伝導スペクトロメータ(総重量約2トン)を南極周回気球に搭載し,長時間飛翔することで,従来のカナダでの実験より1桁高い統計量の観測が可能となる。

 現地での1ヶ月半の準備期間の後,測定器は12月13日に体積110万m3の大気球により打ち上げられた。高度約38kmにおける8日半の南極周回飛翔の間,9億の宇宙線事象を総計2テラバイトのデータとして記録した。ロス棚氷上にパラシュートにより緩降下した測定器は,航空機を用いてすべて回収した。今後詳細なデータ解析が進められる。

 現地への遠征には筆者を含め日米から計約10人が参加した。気球の打上げはNASA/NSBF(米国立科学研究施設)が担当し,マクマード基地での活動はNSF(米国立科学財団)が運営している。なお,NASAの南極周回気球プロジェクトも,西村純先生をはじめとする日本の提案に端を発していることを申し添える。

参照URL http://balloon.isas.jaxa.jp/~fuke/antarctica2004/

(福家 英之) 


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「第5回宇宙科学シンポジウム」開催



 年明け早々(1月6日,7日)の2日間,宇宙科学研究本部で「第5回宇宙科学シンポジウム」が開催された。このシンポジウムは,将来の宇宙科学飛翔体計画の選定を左右する最も重要なシンポジウムとして4年前に発足したもので,毎年,ミッション提案されたプロジェクトを中心に,活発かつ真剣な議論が行われている。今年は,M-Vを中心とするミッションのほかに,新しく小型衛星計画も含め,熱心な議論が行われた。

 その時々のタイムリーな話題を取り上げるセッションとして,「JAXAの中での宇宙研」という新しい環境をどう積極的にとらえ,宇宙科学の発展につなげるかという観点から,2つのセッションが企画された。1日目のセッションは,「JAXA長期ビジョンと宇宙科学」と題し,現在作成中のJAXAの「長期ビジョン」の内容の報告を中心に議論が行われた。4人の講演者の迫力のある議論を聞いて,将来の展望が具体的にわいてきた人も多かったのではないかと思う。2日目の企画セッションは,「宇宙科学を支えるテクノロジー」と題して行われた。JAXAの各本部がこれまでに培ってきたテクノロジーの集積をレビューし,統合のメリットを生かした発展方向を探ろうとするものであった。

 参加者は,会場の研究・管理棟2階大会議場で数多くの立ち見が出た昨年をさらに上回り,瞬間最大風速で190人を超え,2日間の延べでは350人以上という大盛況であった。

 また,副理事長を含め数人の理事に出席いただいたことは,非常に有意義であった。参加者の数の増大や,JAXA内外に広く開かれたシンポジウムにしていくことを考慮すると,今年は実現できなかった都心での開催を,来年は真剣に検討する必要があるだろう。

(前澤 洌) 


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宇宙学校・倉敷



 1月30日,会場いっぱいの来館者を得て,「宇宙学校・倉敷」がスタート。校長先生は岡山県出身の水谷先生。1時限目の矢野先生と清水先生,2時限目の村上先生と黒谷先生,タウンミーティングを仕切る平林先生,そして総合司会に的川先生という豪華キャストに,会場は興奮気味。Q&Aでは,質問したくてたまらない子どもたちの熱気に包まれ,大人は手を挙げるのもはばかられるほどでした。休憩に入っても各先生を取り囲み質問攻めにする子どもたちの姿を見て,開催までの苦労はすっ飛んでしまいました。3時限目に並行して行われた「宇宙工作教室」の効果もあり,参加者が延べ1200人を超える大盛況のうちに全日程を終了することができました。

 学校現場で子どもたちを指導して感じていたことですが,どんな分野にしろ,“本物”に触れさせることが何より効果的です。素晴らしい絵画でも建造物でも,また音楽でも,本物に接することで子どもたちの心は大きく動かされます。これは,人に対しても同じなのです。何かを極めた“本物の人”の言葉からは,我々の想像以上に多くのことを吸収し,そして自分の生活の中で実践していこうとします。その意味でも,日本を代表する宇宙科学の第一人者の先生方と直接言葉のキャッチボールをすることができた今回の体験は,かけがえのないものになったはずです。理科嫌いが問題視されて久しい今日,子どもたちの科学に対する知的好奇心をくすぐり,我々の生活を支える科学技術の存在に目を向けさせる上で,「宇宙学校」のような試みがまさに求められているのだと思います。

 平林先生に問われて,先生方が今の仕事に就くきっかけになった出来事を紹介される場面がありました。将来,「私が科学者を目指した原点は,子どものころに参加した宇宙学校です」と答える日本屈指の科学者がこの会場から生まれたとしたら,どんなにステキなことでしょう。

 子どもたちに素晴らしい夢を与えてくださった先生方,開催に当たりご尽力いただいたスタッフの皆さまに,この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。

(倉敷科学センター 高木 盛雄) 


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はやぶさ近況 電気がなければ始まらない


「はやぶさ」

 工学実験探査機「はやぶさ」は,電源系にも先進的な技術を取り込んでいます。

 太陽電池には高効率のトリプル・ジャンクション・セルが使用され,電力制御にも太陽電池の最大能力まで引き出す手法が取り入れられています。さらに,バッテリにはリチウムイオン二次電池が使用されています。宇宙用を意図して設計された最初の衛星搭載リチウムイオン電池です。また小惑星イトカワに着陸するローバ「ミネルバ」には電気二重層キャパシタが使用されており,宇宙機ばかりでなく地上用としても先駆的な技術が活用されています。

 飛翔中の「はやぶさ」において,軌道上でのバッテリ容量確認をしました。その結果,良好な容量が得られたばかりか,地上で行った軌道上の条件を模擬した試験でもまったく同じバッテリの放電挙動が得られており,微小重力下でも電池内の電解液が偏在せずに性能を維持することが分かりました。

 これらのデータをもとに,イトカワ到達時の「はやぶさ」の最大能力を引き出したいと考えています。


(曽根 理嗣) 


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