No.283
2004.10

ISASニュース 2004.10 No.283

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北京  〜経済発展する中国の象徴〜 

宇宙輸送工学研究系 大 山 聖  


計算工学国際会議WCCM

 第6回計算工学国際会議(World Congress on Computational Mechanics;WCCM)で開かれるミニシンポジウムのセッションチェアをするため,9月初旬に北京に行ってきました。

 WCCMへの参加は,今回が初めてです。3日間にわたるミニシンポジウムおよび一般セッションが,一人の発表時間20分という非常にタイトなスケジュールで,朝8時半から夜の6時まで,18の会場を使って組まれており,とても大きな会議であることに非常に驚かされました(2日間のPlenary lecturesも入れて合計5日間,会議は行われた)。講演者は,中国はもちろん,日本・北中南米・ヨーロッパ・オーストラリアなど世界中から集まり,計算工学に関する基礎から応用まで幅広い研究内容が発表されました。


進む近代化

 中国に行くのは初めてだったので,事前にいろいろと中国に関する情報を集めました。トイレが個室になっていない,タクシー運転手に英語は通じない,衛生状態が悪いなどと聞いていたので,北京に着くまでは,初めての海外旅行のように非常に心配でした。しかし幸運だったのか,タクシーの運転手には英語が通じましたし,ホテルは日本とまったく変わらず清潔でとても快適でした(ただし,今回泊まった北京飯店はとても良いホテルなので,安いホテルがどうかは分かりません。また,空港からホテルまでのタクシーで平均的な運賃の3倍の料金を請求された学会参加者もいましたので,やはり注意は必要です)。

 学会の会場になった北京飯店がある北京中心部は,いくつものデパートやショッピングモールが立ち並び,行き交う人々は皆おしゃれな服装をしており,日本や米国・ヨーロッパと変わらないほど近代化されていました(建物がすべて新しい分,中国の方が近代的かも)。デパートやショッピングモールではさまざまな物が売られていたので,好奇心からいろいろ物価を調べて歩いたのですが,車は数百万円,携帯電話やデジカメなどの電化製品は数万円,輸入物の衣類は数千円,スターバックスやマクドナルドは数百円と,日本とほとんど変わりがありませんでした。平均月収4万円程度だという北京の一般家庭から見るとこれらは非常に高価で,北京の中心街は中国の一部の富裕層,および外国人観光客のために再開発されているということなのでしょう。新しいお店は現在も次々作られており,新車は数カ月待ち,郊外にはディズニーランドも建設中だそうです。オリンピックも4年後に控え,中国経済はこれからますます発展していくのだろうなと強く感じる一方で,中国では貧富の差の拡大がますます重要な社会問題になっていくのだろうと痛感しました。また,北京に限っては(大都市はどこもそうでしょうが)自動車の急激な増加による交通渋滞,貧しい地方からの流入者による犯罪の増加も大きな社会問題になりつつあるそうです。


北京を訪れるなら

 ホテルが故宮に近接していたので,学会の合間を縫って故宮博物院を訪れてみました。初めて訪れた故宮博物院には圧倒させられました。1km×2kmくらいの広大な敷地の中に東大寺大仏殿のように大きな建物がいくつも連なり,その両脇には歴史を感じさせる建物が無数に並んでいました。スケジュールの関係で2時間程度しか見学することができませんでしたが,明・清時代の宮廷の壮大さに思いを馳せることができました。すべてを見るためには,おそらく丸2日はかかるのではないでしょうか。

 1989年に天安門事件があった天安門は,故宮の正門に当たります。50万人を収容できるという広場の広さに驚かされました。現在も制服を着た警官(軍隊?)が監視しており,中国の緊張した一面も垣間見ることができました。  これから北京に行かれる方に少しアドバイスを。北京の冬は非常に寒く,春は風が強く黄砂が飛んでくるため非常にほこりっぽく,夏はまた非常に暑いそうです。ですから北京を訪れるなら9月,10月をお勧めします(時期を選べればの話ですが)。また,北京では歩行者優先という考え方はなく,横断歩道を渡っている歩行者たちに向かって車や自転車,バスですら突っ込んできますので,北京を歩く際は十分注意してください。それと北京料理はとてもおいしいのですが,日本人には脂っこいので,胃薬を持って行かれることをお勧めします。

(おおやま・あきら) 

景山から見渡した故宮


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