No.272
2003.11

ISASニュース 2003.11 No.272

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3機関統合,新しい刺激

JAXA宇宙基幹システム本部M-Vプロジェクトチーム  
(旧NASDA宇宙輸送推進部所属)  
加 藤 洋 一  


技術者として興味津々

 私は6月から,機関統合に向けたM-Vロケット関係の調整のため,相模原キャンパスに在勤しています。

 飲める“芋焼酎”のことなら,すらすらすらと書けるのですが……。それは別の機会にということで,今,ISASにいる身として感じていることを書いてみます。

 私はNASDAに入社してから,これまで主な勤務場所として,筑波,種子島,名古屋を経験してきました。筑波では衛星・ロケット用の部品開発,種子島以降はロケットの打上げ,開発・製造関連の業務が中心でした。

 ISASには,10年ほど前だったでしょうか,筑波在籍のころ1度だけ訪れたことがあり,6月に転勤してきたときに,「あ,本館入り口の展示室はなんとなく覚えている」と思いました。都合の悪いことはすぐ忘れるように心がけている(?)ので,ちゃんと記憶に残っているところを考えると,何か楽しい仕事で来たのではなかったかなと回想しています。

 いよいよ10月1日機関が統合され,宇宙航空研究開発機構(JAXA)が誕生しました。今,大いに楽しみにしているのは,これまでNALISASNASDAのそれぞれが別に行ってきた研究,ものづくりに近づけるということです。それは,機関統合による合理化・効率化にも結び付くことと思っていますが,これまでのNASDAの業務範囲では担当できなかったNALISASで行われていることについても直接,接触できるようになるのですから,技術系を担当するものとしては興味津々です。


M-Vロケット打上げに参加して

 5月には,M-Vロケット5号機の打上げ作業にも参加しました。私は固体ロケットとしてはTR-1AJ-Iなどを見てきましたが,M-Vロケットは打上げにランチャーを使用する大きな機体ということで,構造,仕組み,オペレーションなど,いろいろな点が異なっています。鹿児島県内之浦の射場にも初めて行ったのですが,まず感じたことは……ロケットも設備も人も,手作り感(別の言い方では“凝っている”ということでしょうか)がにじみ出ているということです。

 私がNASDAに入ったころは,自分たちで実験・試験をしたり,装置を動かしたり,ロケット・衛星の追跡をしたりしていましたので,そのころのことを思い出します。以前は今のISASと同様に,自ら作業をしていた人も多く,それが当たり前であったように思います。種子島宇宙センターが出来たてのころは,出勤したら,まずみんなで射点周辺の砂かきから,という思い出話も聞いたことがあります。統合前のNASDAdash 個人的な印象で,かつ,もちろん全部ではないと思っていますが dash マネージメント的な仕事が中心であるように思います。それが悪いというわけではなく,良き方向を目指した結果,そうなってきたのですが,結果としてメーカーさんに頼るところが多くなり,ものを見る目,見抜く目に,弱いところも出てきたのでは?と,そんな気がしてしまいます。

 H-IIAロケットの打上げも6号機を数えますが,残念ながら,未だに打上げ直前に不具合が確認され,スケジュールが変更されるような状況です。機体およびコンポーネントの製造中,いろいろな観点からものを見て,落ち度はないか,何か不具合につながる背後要因はないか,H-IIロケット8号機の失敗以降,それこそ血眼でものを見てきたと思っています。それでも不具合が最後まで残ってしまっている。やっぱり,未だ,未だ,未だ,未だ……,見たつもりではなくて,確信を持てるまでと痛感,反省してしまいます。


ISASとNASDAの潤滑剤として

 私は引き続き,10月以降も相模原キャンパスでM-V関係の仕事をしています。NASDAに足りないことで,ISASにはあるものを吸収したいと思っています。また,NASDAの役立つと思われることをISASに伝えたり。一種の潤滑剤として機能できればとも思います。

 JAXAでは,M-Vロケットも基幹システム本部のプロジェクトに位置付けされ,H-IIAや小型ロケットなどの他のプロジェクトと横並びの体制となります。この5カ月間ISASM-Vの作業の流れを見てきましたが,日本の中の同じ宇宙ということで,NASDAとの共通点も多いことが分かりました。メーカーさんが同じであったり,使用されるコンポーネントにも同様な設計思想のものがあったり。これからは,他プロジェクトで起きた不具合の横通しがスムーズに行われ,より信頼性の高いロケットが作れるのでは,と期待もしています。

 JAXA誕生がこれまでの3機関に互いの新しい刺激となって,さらなる日本の宇宙航空分野の発展,技術向上,確実化につながればと思っています。dash ちょっと,大きなことを書いてしまいました。

 余談ですが,いつのまにか中国では有人を手掛けています。dash くやしいじゃありませんか

(かとう・よういち) 

H-IIAロケット(左)とM-Vロケットの模型



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