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国際宇宙会議(IAC)ブレーメン大会に参加して技術開発部機器開発グループ 清 水 幸 夫
さて,ブレーメンはサハリン北部と同じ北緯53度の高緯度にあり,今夏地球との大接近で注目された火星が日本で見るよりもかなり低く輝いて見えたのが印象的だった。また,グリム童話の「ブレーメンの音楽隊」でも有名な都市である。ブレーメンは中世から芸術と貿易でにぎわう豊かな港町であったし,今でも「自由ハンザ都市ブレーメン」を標榜し,世界有数のビール工場と航空宇宙産業の拠点の一つとしても知られている。
初日の情報では,今大会の参加国数は30カ国,正規参加登録者数は2500人以上とのことであった。また聞くところによれば,今大会の全経費は日本円換算でおよそ4億7000万円とのことで,その金額の大きさには驚かされた。 開会式には開催地ドイツ連邦共和国のブルマン教育相も参加されており,教育にかけるブレーメン大会の意気込みものぞかせた。教育活動の視点から今大会を見れば,ESA,IAFおよびJAXAの支援を受け,国際宇宙大学など世界各国から参加した530名以上の学生が,展示会場の一角を活動の中心として宇宙に関する新しく柔軟なアイデアを競い合っていた。また,地元ブレーメンの周辺約100km半径の地域にある40の学校からの見学研修会が行われていた。見学した地元学生の年齢は15歳から19歳までで,20数名の学生グループを展示事務局専属の5人の案内者が引率していた。展示事務局の話では総計800人以上の地元学生がこの見学プログラムに参加したそうで,彼ら若い学生には将来の航空宇宙産業の担い手または支援者になることを期待しているとのことであった。 展示会場は,4日目を除く全開催日にブレーメン市民へ広く開放された。最終日の10月3日はドイツ統一記念日という休日でもあり,終日一般公開された。その日の入場者数は,会場施設管理者の話では(実は誰も入場者を数えておらず実際の数字は不明であるが)およそ3000人とのことであった。
ハローJAXA!今大会のISASの展示は,小惑星探査,金星探査,月探査,火星探査およびM-Vロケットのモデル展示を中心に,地球近傍観測,水星探査,「ようこう」「あけぼの」「のぞみ」「はるか」などの計画・観測成果をパネルなどの造作物や印刷配布物にして,統合ブースにふさわしい調和した展示構成になった。他本部・機関からもH-IIAロケット,ETS-VIII,「こだま」「みどりII」「きぼう」,成層圏プラットフォーム,準天頂衛星,ウエアラブルアンテナなど,数多くの魅力的な展示品が用意された。10月1日には新生JAXAの統合記念行事が展示会場を中心に行われた。ボン駐在員事務所のリットヴェーガーさんの機転で,各国の展示会場スタッフ,ブレーメン市長シャーフさん,ウクライナ共和国の宇宙飛行士をはじめ多くのグループから「ハローJAXA!」と呼びかけてもらうビデオレター・キャンペーンを行い,それが功を奏してか,夜の町中でレストラン探しをしていた我々を見つけた参加者から「ハローJAXA!」と声をかけられるなど,新組織名が浸透しつつあることを実感した。 日本ブースには活発な取材もあり,個人的にもドイツ最大のラジオ局WDRやフィンランドの科学雑誌など4件の直接取材を受けた。学会開催期間中は,地元欧州のアリアン5による通信衛星2機と月探査機SMART-1のトリプルロンチの成功や,中国の有人ロケット打上げ直前でもあったことから,大変活力のある学会・展示となった。新生JAXAは誕生したばかりだが,世界の趨勢を見極めつつ将来の科学技術の発展や真理の探求に寄与できるよう,より一層の努力が必要と自ら気を引き締め直す機会にもなった。 (しみず・ゆきお) |
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