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「のぞみ」地球スイングバイに成功

 1998年7月4日に打ち上げた火星探査機「のぞみ」は,2003年末に予定している火星周回軌道投入をめざして惑星間軌道を巡航中です。去年の年末12月21日に地球に接近し,無事スイングバイを実施しました。地球への最接近は同日午後4時37分ころ,距離は,約3万kmです。一時は,3億6000万kmまで地球を離れたこともある「のぞみ」の久々のご帰宅ですが,最接近時は日本からは見えない時間帯に当たりました。このスイングバイで,探査機は黄道面から多少離れ,地球の北側を進む軌道に移りました。

 「のぞみ」は,昨年4月21日に起こったコロナマス放出を伴う大規模な太陽フレアに遭遇した後,搭載機器の損傷により一部の電源系に不具合を生じ,テレメータが送信できない状態が続いています。そのため巡航軌道上での科学観測は停止しています。しかし,軌道決定のための測距やコマンド受信は正常に動作し,また搭載の自律機能を用いたビーコン電波のオンオフによるテレメトリの代替という裏技も活用して,姿勢制御や軌道制御を実施しています。現在は,不具合の詳しい解析および復旧のための運用の検討を進めているところです。

 今後,「のぞみ」は,6月19日に再び地球スイングバイを行い黄道面内の巡航軌道に移り,今年末の火星周回軌道投入の準備に入る予定です。

(中谷 一郎) 


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第3回宇宙科学シンポジウム

 1月9〜10日2日間にわたり第回宇宙科学シンポジウムが開かれました。宇宙科学研究所の看板シンポジウムとして始まりついに3回目を迎え,そろそろその真価を問われる時期ですが,参加者は約320名を数え,発表件数は150件(内ポスター92件)という盛況ぶりでした。

 1日目は,WG報告を含む将来計画提案,2日目には衛星基盤技術・将来計画提案の一部,そして特に今回は,宇宙科学の進むべき一つの方向を見出すために「小型衛星・小型飛翔体」セッションを設けてみました。結果としてこのセッションへ35件もの発表申し込みをいただき,企画自身は成功であったと言えます。

 しかしながら,このセッションで小型衛星等のレビュー的な講演が無く参加者にとって必ずしも有意義な情報を与えるものとなり得なかった点は反省点の一つです。また,今回提案予定のミッションがSELENE-Bとソーラーセールの2件あったこともあり,Working Group報告への時間配分が大きく,本シンポジウムの基本であるポスター発表の時間が,2時間あまりと短くなってしまったことも残念です。

 なお,今回初の試みとして,山村助手(原始宇宙物理学部門)の努力により,講演会場の様子をTV会議システムによってポスター会場及びSuperSINETに配信することができました。

(世話人一同) 

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M-V-5号機 第1組立オペレーション

 M-V-5号機(MUSES-C)の打ち上げ実験の第組立オペレーションが,2003年1月10日〜19日の期間,鹿児島宇宙空間観測所にて行われました。

 第組オペでの作業は後部筒,第段・第段モータ,ノーズフェアリングの組み立てが中心です。まず後部筒の作業が始まり,並行して第段推力方向制御系の作業,そして第セグメントとノズルの結合へと進み,同時にノーズフェアリングの作業も行われました。第段に後部筒が組みつけられサーマルカーテンが付くと第段の作業はほぼ一段落。続いて第段モータへのノズル組み付け,推力方向制御系の最終整備が行われ,予定の作業を終えました。

 4号機から数えて3年ぶりのオペレーション。性能向上と低価格化を図った段やキックモータは新規開発品です。実験班員の顔ぶれも歳月とともに変わっています。これらのプレッシャーを感じながらも,5号機を必ず成功させるぞという気概が実験班の全員に溢れていました。事故や失敗は気がつかない所に隠されている落とし穴のようなもの。だから,基本事項・安全事項をよく確認しましょう。そう呼びかけ合いました。最後の検討会では皆の安全と無事に感謝し,反省点を検討し,得られた教訓を第組オペやフライトオペに活かし,5号機を成功に導こうと確認いたしました。応援してくださった各方面の皆さんに御礼申し上げます。

(嶋田 徹) 

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南極で大気球を揚げる

 1992年11月14日,宇宙科学研究所では3人目となる第34次南極観測隊員として晴海埠頭から砕氷艦「しらせ」に乗り,大気球を放球するため南極「昭和基地」に向かってからちょうど10年目,今回は気球工学のメンバーである松坂,斉藤と3人で第44次南極観測隊員として再び南極「昭和基地」で大気球実験を行うことになった。

 10年前と変わったことは,「しらせ」が11月14日に晴海埠頭を出航,観測隊員はそれから2週間後11月28日に成田からオーストラリアのフリーマントルに向けて空路で行き,そこから「しらせ」に乗船し南極に向かうことである。

 昨年暴風圏で「しらせ」が最大52°という驚異的な揺れに見舞われたが,今年は例年になく海が穏やかで27°の揺れが最大であった。フリーマントル港を12月3日に出港し,12月17日には昭和基地へ30マイルの地点に到着,順次大型のヘリコプターに搭乗し,昭和基地に降り立った。我々の実験をできるだけ早く行うため,全ての気球用の資材は緊急物資としてヘリコプターによる輸送が行われた。気球用物資中最大重量でしかも大量に輸送された物は,7m3型ヘリウムボンベ544本であった。

 大気球の放球は天候および各種のトラブルに巻き込まれたが,1月13日10時45分および同日15時15分快晴の青空に吸い込まれるように1日2機の大気球の放球に成功した。この2機は地球物理観測器で,同時飛翔観測を目的の一つとしており30kmの上空で,1月29日現在,南極大陸をおよそ半周し飛翔を続けている。

(並木 道義) 

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第21回システム研究会開かれる

 月探査周回衛星セレーネは,2005年夏の打ち上げを目指して現在フライトモデルの設計と一部製作を進めています。衛星の構造試験モデルによる機械環境試験はこの春に完了しました。熱試験モデルによる熱真空試験は10月23日から約2週間にわたり筑波宇宙センターの総合環境試験棟で行われました。熱試験モデルには,衛星本体のモデルだけでなく,観測機器チームが準備した15種類の搭載機器のモデルも組み込まれています。写真(右)は大型スペースチェンバー(直径13m)への搬入を待つ熱試験モデルです。セレーネ衛 さる1月24日,宇宙科学研究所の研究・管理棟大会議場において,第21回システム研究会が開催されました。今回は「われわれは宇宙で何をやるのか(その)」で,テーマとして「宇宙開発戦略を語る」が選ばれました。幹事の小林康徳教授の挨拶の後,秋葉鐐二郎先生の「宇宙政策論活発化への期待」と題する講演に始まった8人の講師の話はすべて非常に示唆に富む内容のものばかりでした。最後に講演者と会場の参加者との自由討論が行われ,現在の宇宙開発の課題をめぐって活発な議論がたたかわされました。長期的な戦略を打ち立てるべきこと,国の経済活動の活性化にも貢献できる戦略を打ち出すべきこと,「宇宙のしきい」を低くするための「オープン・ラボ」構想,有人活動始動の提案,有人飛行は当面suborbital flight(弾道飛行)をめざすべきという意見などが述べられました。宇宙開発の展望を拓くための苦闘は続くでしょう。一層の論議の深まりを期待したいものです。

(的川 泰宣) 

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LUNAR-Aプロジェクトの近況

 LUNAR-Aプロジェクトは,MUSES-Cミッションの打上げ延期に伴うスケジュール変更を行った。昨年11月26日にプロジェクトチーム全員が集まり,再キックオフ会議を開催し,2004年度以降の打上げを目指して全員が邁進することを確認した。新しいスケジュールでは,今年2月からはペネトレータと母船の噛み合わせ,10月からは総合試験が行われる予定で,現在それらの試験のための準備が進められている。

 現在もっとも大きな仕事として行われているのは,ペネトレータに搭載される送受信器の調整である。貫入試験用,実機ペネトレータ用の通信機の性能確認が連日,NTスペース社内や宇宙研C棟3階の電磁シールド室や1階の恒温槽内に作られた電磁シールドボックスの中で行われている。ペネトレータに搭載される月震計も通信機と同様に貫入試験用のもの,実機用のものが製作されつつある。それぞれ製作工程確認のために,工程の各段階毎に通信機,月震計の性能確認を行うので,担当者のロードは大変である。

 ペネトレータに搭載される月震計はまた,名古屋大学犬山地震観測所のトンネルの中で,世界標準になっている高帯域地震計と並べて,実際に地震記録を取りながら比較試験も行われている。これまでの結果によると,LUNAR-Aの月震計は地上の地震計に比べて極めて小型軽量,小電力型ながら,地面の震動を極めて精度良く記録している事が判明している。

 LUNAR-Aプロジェクトにとって,2003年は大きな節目になる年になる。プロジェクトチーム全員の力で打上げまでの準備を滞り無く進めたい。

(水谷 仁) 

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カナダ宇宙庁長官来所

 2002年12月3日にカナダ宇宙庁(CSA)長官M. Garneau博士2名が宇宙研を訪問されました。国際宇宙ステーションの会議に来日された機会をとらえた来所でした。

 あいにく所長が不在であったため,私ほか数名で応対しました。最初に,意見交換ということで私が宇宙研の歴史,組織,将来計画等について簡単に紹介しました。宇宙研が行なっている科学ミッションの規模,多様さとその成果に驚かれたようでした。

 長官からは,カナダは国の経済規模が小さいこともあって国際協力を通じて宇宙開発・宇宙科学を進めていること,今後は小型衛星の独自開発も考えているが,限られた経費を考慮し特定の分野に重点化するつもりであること等カナダの宇宙開発の現状の紹介がありました。カナダが独自の宇宙開発戦略を持ち,少ない経費で効率良く宇宙開発を進めていることが印象的でした。

 日本とカナダはこれまでも惑星間プラズマ等を中心に活発な国際協力が行なわれてきましたが,今回の訪問を機会に今後もっと枠を広げ,いろいろな分野での協力の可能性を追求することでお互いの意見が一致しました。

 意見交換のあと所内見学をしていただきましたが,クリーンルームで試験中のMUSES-CSOLAR-Bにとりわけ強い興味と関心を示されました。

 カナダ宇宙庁長官の宇宙研訪問は初めてのことでしたが,活発な意見交換がなされ,今後の協力関係を一層発展させる上で大変有益な機会となりました。

(松本 敏雄) 

カナダ大使館参事官
Dr. T. Philip Hicks
CSA科学部門長
Dr. David J. W. Kendall
CSA長官
Dr. Marc Garneau


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ジャッコーニ氏ノーベル賞受賞

 2002年のノーベル物理学賞が,小柴氏,デービス氏と並んで,リカルド・ジャッコーニ氏に授与された。ジャッコーニ氏の受賞理由は「X線天体の発見に導いた,X線天体物理学への先駆的貢献」であった。わが国では小柴氏の受賞がたいへん大きく取り上げられたため,ジャッコーニ氏の受賞が目立たなくなってしまったが,宇宙科学にとっては,X線天文学とのかかわりや,スペースからの科学観測の成果が受賞対象になっている点から,たいへん大きいニュースであった。

 ジャッコーニ氏は,まさしくX線天文学の観測の最前線を切り開いてきた方である。太陽より遠い宇宙からのX線を初めて検出した1962年のロケット実験,主な宇宙X線源の種類と性質を明らかにした史上初の X線天文衛星「ウフル」,宇宙X線観測にはじめて反射望遠鏡を導入しほぼあらゆる種類の天体からX線を検出した「アインシュタイン」衛星と,X線天文学の大きな飛躍をもたらしたこれらの計画に,強いリーダーシップを発揮し,直接の大きな貢献をした。さらには,可視光観測の最高分解能に匹敵するほどの解像度を実現した現在活躍中のX線天文衛星「チャンドラ」のアイデアをはじめに提案したのもジャッコーニ氏であった。

 このように,X線天文学を切り開いてきた科学的先見性,目標を実現してきた実行力,計画を推進する際のリーダーシップ,これらのどれをとっても,ジャッコーニ氏はノーベル賞に値する世界一流の科学者であると言えよう。

 ジャッコーニ氏がX線天文学の黎明期を切り開いてきた第一人者であることを疑うものはだれもいないが,X線天文学の発展には,当然ながら他にも多くの貢献があった。ジュッコーニ氏が宇宙X線観測の最前線を切り開いた第一人者とすれば,その天体物理学としての重要性を確立する重要な貢献をした第一人者は,元宇宙科学研究所所長で一昨年急逝された小田稔先生であった。

 事実,ジャッコーニ氏の受賞講演でも,再三小田先生の名前があげられその功績が紹介された。もしご存命でおられたら,同時に受賞された可能性もあったかと思うと,そのご逝去がいまさらながら惜しまれる。さらに,ジャッコーニ氏は,小田稔先生・田中靖郎先生に率いられた日本のX線天文衛星群の,X線天文学の発展への寄与についても,言及された。それらの開発にかかわってきたものとして,たいへんうれしいことであった。

(井上 一) 

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  MUSES-C 月報−2


熱真空試験で宇宙空間を体験

 12月に機械環境試験を終えた探査機は,模擬推薬を排出・乾燥させ,いま再度の機能確認試験を行い,1月半ばから熱真空試験が始まった。

 試験は巡航中だけでなく,小惑星への降下と着陸フェーズを模擬して行われる。もっとも熱的に厳しいのは,実はこの着陸フェーズである。探査機下面は約100℃あるいはそれ以上と想定される高温の表面に正対することになる。解析された熱数学モデルが正しいことが確認されるはずである。

 これに引き続き,イオンエンジンを探査機本体にマウントした実装状態で,チャンバーの中で稼働させるというユニークな試験が予定されている。おそらく世界でも類をみない実装状態での運転試験であり,最終のイオンエンジンの動作確認を飛行状態で行おうというものである。

 一連のチャンバ内の試験が終了するのは2月半ばになる。その後,熱真空試験後の機能確認と,センサアライメント,慣性諸量の計測が終わると,いよいよ鹿児島へ輸送される予定である。

 若い担当者にとっては,実機の試験から打上げに通ずる貴重な経験であり,意欲的になるのは当然であるが,一方では老練の担当者が退官を目の前にしつつも着実な作業を心がける姿が対照的である。数々の修羅場をくぐりぬけてきた先輩たちから,少しでも経験に裏付けられた仕事ぶりを学べればこれに越したことはない。MUSES-Cは,新型エンジンを搭載する自律性の高い最新鋭の探査機である。探査機もともに世代を交代しつつあるといえる。

(川口 淳一郎) 


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ISASニュース No.263 (無断転載不可)