No.257
2002.8

ISASニュース 2002.8 No.257

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世界に広がった
「星の王子様に会いに行きませんかキャンペーン」

高 岸 敏 雄  

 「小惑星1998SF36」ってなんやねん と敬遠されそうな探査計画を,身近で親しみあるものとして応援してもらおうと,宇宙科学研究所・日本惑星協会が共催で行ったのが「星の王子さまに会いに行きませんか」ミリオンキャンペーンだった。

 当初は5月10日から7月6日の予定だったが,急遽皆様の強い要望により,16日から22日の第二次募集を行った。

 その結果は,世界149ヵ国から877,490人の名前が登録された。目標にした100万人には届かなかったものの,宇宙開発と連動したパブリックキャンペーンとしては世界史上最高の記録を達成することとなった。

 国別では,太陽系科学探査の先駆者アメリカからの登録数が485,453人と多く,次に日本が313,955人。以下カナダ,オーストラリア,イギリスと続き,149ヵ国に及んでいる。

 ミューゼス(MUSES-C)が,世界最初の小惑星サンプル・リタ―ン・ミッションであること,探査機に搭載して3億キロ彼方の小惑星に名前を着地させることも世界初の挑戦であることから,国内はもちろん海外でも注目されたということだろう。CNN.comSpace.comなどの世界的ネットワーク,イギリスのBBC放送にもとりあげられた。そしてこれには,何といっても22年の実績と全世界で10万人以上の会員を誇る世界最大の民間宇宙関連団体である米惑星協会(The Planetary Society)の支援が大きかった。

 日本については,5月10日に記者発表し,その模様がNHKTV朝日,ラジオ,新聞各紙で報じられるや,当初の1週間10万人を超える勢いで登録が行われた。しかし,5月半ば頃から,とくに6月に入るとともにワールドサッカー人気に圧倒される状況になる。その中で,再々度にわたって宇宙科学研究所的川教授も参加いただいたテレビ・ラジオを通じての広報チャンスの設営や,一方地道なメールでの呼びかけ,ボランティアの方々によるリンクネットの協力などを重ね,上記の成果となっていった。

 4年前火星に向かった「のぞみ」に名前がのせられた時は,すべてハガキによる応募だった。今回は時代を反映してインターネット(携帯を含む)からの応募を加えたところ,インターネット関連で28万余(うち携帯からは5%程度),ハガキは3万余と少なかった。ただ,圧倒的に2人3人4人…とグループの申込みが多く,かと思えば,親御さんが2才3才の子供の登録だけをされたり,3ヵ月先に出産予定の子供を仮の名で登録とか,人数制限があるなら子供を優先して下さいとか,20世紀を生きた両親が21世紀こそ子供の時代との想いをこめられているようで,胸にくる思いがした。

 インターネットによる登録も複数が多く,実際に活動可能人数は28万人より少ないにしても,キャンペーンの終り1週間前に,現状報告と合わせて「まだご存知ない方に参加を呼びかけて下さい」とメールしたところ,1日8,0009,000の登録が締切りまで続いた即応パワーには,心底感動してしまった。ミューゼスCが象徴する宇宙活動への強力なサポーターとして,今後とも交流を続けていきたいと考えている。

 「世界から100万人の名前を集めて小惑星に届けよう」と,キャンペーンの話を耳にした人は,必ず「夢のある企画だ」「久しぶりにゾクゾクした」と声をハズませて参加してくださった。老若男女どの人も,やっぱりみんないい心を持っているんだと思えてしまう。

 サン=テグジュペリ『星の王子さま』にも,「夜になったら,星をながめてくれよ。ぼくんちは,とてもちっぽけだから,どこにぼくの星があるのか,きみに見せるわけにはいかいんだ。だけど,そのほうがいいよ。きみは,ぼくの星を,星のうちの,どれか一つだと思ってながめているからね。すると,きみは,どの星も,ながめるのがすきになるよ。星がみんな,きみの友だちになるわけさ。…」

 小惑星1998SF36も現在は太陽のカゲになって見えないが,2004年6月頃から50cm位の望遠鏡で11等位の明るさで見えてくるらしい。その時には,天文台ネットワークをつくり,やがて名前が届く小惑星の写真や作文,イメージ画のコンテストなどウェブ上での展開を考えてみたい。

 今回のキャンペーン経過を大いに活かして,夢のある,ゾクゾクする機会をふやしていくことが,宇宙開発への取組を支援する王道になるだろう。

(日本惑星協会事務局長 たかぎし・としお) 


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