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S-310-30号機実験終わる

 S-310-30号機2月6日19時30分に鹿児島内之浦町にある宇宙空間鹿児島観測所から成功裏に発射されました。本ロケット実験は,下部熱圏,即ち高度100km付近の窒素分子から電子への熱の流れを研究する目的で提案されたものです。観測機器搭載部の大部分を窒素分子のエネルギー状態を知る観測器が占めました。この測定器は1996年に初めてS-310-24号機に搭載されましたが,今回はこれに更に改良を重ね,同時にプラズマ密度,温度,および風を測る測定器を搭載して総合的に研究することにしました。従来型のテレメータ,レーダに加え,ミニチュアテレメータ,ミニチュアレーダも搭載しました。このように多くの機器を搭載したために,ロケットの全長は標準型と考えられてきたS-310-24号機より70cm長く,これまでの最長となりました。推進剤もあたらしくなり,ロケットエンジンの寸法も幾分変更が加えられたこともあり,新しく開発されたロケットを試験するという気持で作業を進めました。現地での搭載機器の詳細調整,天候不良などのため,結局,当初予定した2月1日より5日遅れで発射しました。素晴らしく良いデータが取れ,実験班各位,および関係機関のご苦労に応えることができたとホッとしています。今回特に感じたことですが,ロケット発射に至るまでの各機関への迅速な通知の仕方,打上げオペレーション中の各班のチームワークの良さは今後も是非残して行きたいものです。

(小山孝一郎) 


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「ようこう」10周年国際会議,ハワイで開催

 同時多発テロの余波で開催延期された「ようこう」10周年記念国際会議を,1月21日から24日までの4日間,ハワイのコナ市で開催した。COSPAR Colloquiumのひとつとして開催された同会議は,NASAその他の米国研究機関とともに宇宙研がスポンサーとなって実現したものである。

 「ようこう」による太陽コロナ研究の広がりを反映して,この会議には,日米英の「ようこう」御三家,フランス,ドイツ,ポーランド,ロシア,チェコ,インド,ブラジルなどの諸国から約130名の研究者が参加した。日本からの参加者数は40名を超えたが,これも「ようこう」の大成功のなせる業というべきか。SOLAR-Aプロジェクト開始時の小さなグループがここまで成長したかと思うと感慨深い。

 会議では,オープニングに続き,小杉から「ようこう」の近況報告。昨年末に観測が中断した経緯と復旧努力のあらましを説明。続いて,COSPARを代表して,Vice Presidentの西田前宇宙研所長があいさつ。磁気リコネクションの物理学の進展に「ようこう」とGEOTAILが果たした役割が力説され,会議はここから科学モードに突入した。

 「ようこう」10周年の区切りをつけるために,この会議では若手・中堅の研究者を招待講演者とし,それぞれの分野の到達点をレビューしていただいた。また,招待講演者以外でも若手にチャンスを与えることを重視してプログラムを編成した。お蔭で全般に熱気あふれる研究紹介となり,活発な議論が交わされた。日本からは招待講演者3名を含む十数名が演台に立ったが,若手の堂々たる発表ぶりには感動を禁ずることができなかった。また,ポスターも好評だった。

 なお,水曜日の午後にはマウナケア山頂の「すばる」望遠鏡を見学した。お世話になった国立天文台関係者に感謝。この会議が終わって,金曜と土曜の午前は,SOLAR-B科学会議を招集し,約70名SOLAR-B衛星の科学運用方針を討議。こちらの方は,いよいよ正念場にさしかかる。

(小杉健郎) 

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ASTRO-F 観測機器の総合試験

 赤外線天文衛星ASTRO-Fの観測機器の第一次総合試験を,2002年の1月から,飛翔体環境環境試験棟1階のスペースチェンバー室において行なっています。宇宙での高感度の赤外線観測を可能にするために,ASTRO-Fの観測機器は,約-270℃という極低温に冷却されます。この冷却を行なうために,観測機器は全てクライオスタットと呼ばれる大きな真空容器(写真に移っている縦長の円筒型の容器です)に収められています。この容器内に液体ヘリウムを入れて冷却を行なうため,その注液/排液等のための配管がニョキニョキと何本もクライオスタットにつながっています。

 この試験は3月まで予定されています。それが終わると,続いて衛星全体の一次噛み合わせ試験に,観測機器は参加します。

(中川貴雄) 



試験中の ASTRO-F観測系。
縦長の円筒型の容器が,観測機器を収めるクライオスタット。

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DASHについて

 「高速再突入実験機(DASH)」は,2月4日11時45分H-IIA-2号機のピギーバック衛星として種子島宇宙センターより打ち上げられました。その後,サンチャゴ局において17時40分から18時40分まで電波を受信し,衛星の機能はほぼ失われていないことが確認されました。しかし同衛星はフェアリングと未分離の状態であることがほぼ確認されたため,同日23時過ぎからの鹿児島宇宙空間観測所第1可視において,搭載機器の状態を精査し,復旧の可能性を探る努力をしました。しかしながらフェアリングより分離できず,その後の運用が続けられないため,実験を断念致しました。

 DASH実験では,ロケットの打ち上げは種子島宇宙センター,運用は内之浦の鹿児島宇宙空間観測所,追跡局としてはチリのサンチャゴ局,カプセルの落下域は西アフリカ・モーリタニアの砂漠地帯と,それぞれの実験チームの拠点は地球規模の広がりを持つものであり,それらの準備では,色々,面倒なこともありましたが,関係者の努力により,それぞれの準備もさることながら,打ち上げ後の相互連携も大変に巧くいきました。衛星の機能も,分離ができていないこと以外はほぼ完全であることが確認できているだけに,大変残念な結果となってしまいました。いずれにしましても,DASH実験は,さまざまな方々のご支援,ご協力を得て,実行までこぎ着けたものと考えております。この場を借りまして,関係の方々のご支援と,ご協力に深い感謝の意を表します。

打ち上げ後の分析,解析により,分離ができなかった原因は,メーカーの製造段階における製造図面の誤りによる実験機内信号伝達ケーブルの誤配線に伴う分離信号の不伝達であると特定されました。不具合を発見できなかったことは,この衛星がピギーバック衛星であったための特殊性もありますが,今後,このような失敗の再発防止に向けて,今回の試験方法の妥当性も含め,衛星の研究開発,試験体制について評価,点検し,そのあり方を検討する予定です。

(安部隆士) 


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宇宙学校・相模原を開催

 今回は「太陽系(参加者162名)」「宇宙技術(同142名)」「ブラックホール(同140名)」の三つのテーマで行われました。「太陽系」では,彗星衝突,生命の宇宙起源,火星からの隕石まで,興味ある話が展開し,宇宙環境における生命活動などにも,比較的身近で素朴な質問が出されました。「宇宙技術」では,冒頭で「宇宙旅行をしたい人?」と言う問いに90%以上の人の手があがりました。再使用,往還機など,人が宇宙へ出るためのロケット開発に追い風を感じました。宇宙発電では予想通り,コストと安全問題がたずねられました。最も質問が集中したのはやはり「ブラックホール」でした。最近のメディアの影響も見え隠れし,

ブラックホールは最後どうなるのか
その後は宇宙はどうなるのか
無とは何か

とだんだん禅問答に近くなって行きました。この中で,私達が観測的に確認されたこと,理論的に明らかな帰結以外は「わからない」と答えることが聴衆としてはもの足らない様でした。仮説であっても確定した結論として言い切る方が「安心感」を持たれる様です。このすれ違いは,今後の我々の広報活動の課題の一つかも知れません。

 一方,今回の宇宙学校での質問のいくつかは,一般のたちの興味の有り様を教えてくれるものでした。統合される新しい宇宙機関として,一般の方々から支持される得るテーマはやはり「知的好奇心」であり,「宇宙への人類の展開」であると感じたのは私一人ではないと思います。関係者の皆様の御協力を感謝致します。

(國枝秀世) 


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宇宙学校(東大駒場)

 東大駒場での宇宙学校は2月9日(土),ソールトレーク.シティ冬季オリンピック開会式の朝でしたが,平均して200人以上の出席で,いい雰囲気でした。相模原での陣容からちょっとかわって,講師では佐々木さんのかわりに成尾さん,校長が国枝さんから平林になりました。

 1時限,吉川さんの探査プラニングと黒谷さんの生きものの話。お互いに関連がなさそうな分野ですが,話題は適当な割合でわかれます。最後の幼稚園児の質問は,軌道と生きものをつなぐ秀逸なものでした。

「あのぅ。ブラックホールにぃ」(はぁーー)
「イモリがぁ」(えっ)
「落ちたらぁ」(へっ)
「どうなるんですかぁ

 2時限,澤井さんの再使用型宇宙輸送機と成尾さんの太陽発電衛星の話。澤井さんは有翼型,成尾さんは垂直離着陸型を熱心に研究開発中のこともあって,両者熱心にでてきます。再使用型飛行,有人飛行,太陽発電衛星計画は,経済性や政治性もふくめた国民的議論が必要です。2時限目はそんなわけで,たいへんユニークな時間になりました。最後の質問は,DASHについて。澤井さんと校長の答えを受けて,的川さんが最後を,じっくりと締めくくって語ってくれました。聴衆もシーンと聴き入っていました。

 3時限,前田さんのブラックホールと山村さんの赤外線観測の話。いやぁ,おどろきましたね。始めから終わりまで,ほとんどブラックホールに食われました。前田さん大わらわ。山村さんにも前線に出ることを促し,時には校長も引き取ります。

「ブラックホールに入ったらどこに出てくるか。入りっぱなしで何で悪いと考えることもできますがね。愛するひとたちが亡くなると,どうなるんだろうって考えるでしょう。そんなとき,僕たちは,どこかにこころが残ってつながっているように考えますよねぇ」

わけの分からない高僧の説教みたいです。

 一部始終を阿弥陀様のように見まもった的川さんの評;懐かしい駅前でビールを飲みながら,

「若い先生たちの答えに苦しむところ,誠意が感じられてよかったねぇ。それに今回は,校長のつっこみや講師いじめ(質問者への応援)がめだったねぇ」

 今回は若い子供たちからお年寄りまでまんべんなくいろいろな人が集まりました。変に困ったり,しつこかったりする質問がなく,質問に対して1回で素直に「ありがとう」と言っておられました。「それなら」と,次の質問に展開してもいいのかも知れません。最後に,講師をする機会がないとなかなか気がつかないことですが,この催しのために,多数の管理部の皆さんが働いていることも,研究部の皆さんにお伝えしておきましょう。

(平林 久) 


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第6回宇宙3機関統合準備会議

 2月28日(木)に第6回の宇宙機関統合準備会議が開催された。

 テーマは,「新機関の組織の骨格の在り方について」で,独立行政法人としての新機関の組織の骨格と,主要な業務についての事務局案が示され,議論が交わされた。

 業務については
・ 基幹システムの整備・運用に関する業務
・ 衛星等利用システムの企画,開発及び利用促進に関する業務
・ 基盤的・先端的技術開発に関する業務
・ 宇宙科学研究・教育に関する業務

とされ,特に宇宙科学研究・教育については,「大学共同利用」システムを制度的・組織的に整備し,新機関長は,これらの「大学共同利用」システムによる組織運営を尊重することが必要であるとされ,現行の宇宙研における評議員会,運営協議員会に相当するものを設置することが適当とされた。

 今回大筋の合意が得られたので,次回(3月27日)に最終報告となる予定である。

(松尾 弘毅) 


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