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用語解説
世界トラッキング網
電波天文アンテナ網
スペースVLBI観測(VSOP)

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)
「はるか」が観る活動銀河核の円盤

 電波天文衛星「はるか」は,世界トラッキング網電波天文アンテナ網スペースVLBI観測(VSOP)を続けています。1年前に「はるか」の4台のリアクションホイールのうちの1台に不具合が発生したので,現在は,多少の運用制限をつけていますが,通常の観測に大きな問題はありません。

 VSOPでは,活動銀河核でのジェット現象を観測することに多くの時間が使われていますが,ジェットをみていると,それに垂直なディスクが判別できる場合があります。NGC4261という,約1億3000万光年遠方の電波銀河の場合です。この電波銀河では,中心をつき抜けて長大な電波ジェットがあります。

 ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が,この電波銀河のジェットに軸が一致する1000光年ほどの直径の光の円盤を発見しています。最近の地上VLBI観測では,1光年ほどの解像度でジェットの付け根を観測していましたが,付け根は明るく輝きながらも,ジェット軸にそって,中心核の前後で非対称な形をしているということがわかってきました。

 VSOP観測は,電波銀河NGC4261の観測で,説得力のある結果を出しました。中心をとりまくディスクによる吸収の姿がきれいに見えるのです。そのディスクの幅は1光年より狭く,HSTが観たものより,千分の1のスケールのディスクです。VSOPは,比較的長波長の18cm6cmの観測ができるので,ディスクによる吸収(プラズマによる低周波電波の吸収)を敏感に観測できるのです。

(平林 久) 



電波銀河NGC4261中心核の光のディスク(ハッブル宇宙望遠鏡)と,VSOP波長6cmイメージ。
ジェット軸およびディスク回転軸は図に対して左背面から右こちら側に向いている。     

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SOLAR-B「基本設計確認会」開催さる

 SOLAR-B衛星は,基本設計を完了し,プロトモデル及び構造・熱モデルの製作に取りかかる段階を迎えています。このため第10回設計会議は,衛星設計のレヴューを目的として,衛星チーム外の工学・理学の先生方にも参加いただき,「基本設計確認会」として9月12日〜13日に開催致しました。名古屋地方の集中豪雨により伊丹の三菱電機(可視光・磁場望遠鏡担当)や名古屋の三菱重工(ミッションデータプロセッサ担当)の面々が初日に出席できなくなるハプニングもありましたが,プログラムのやりくりで凌いで,衛星の全般にわたって,詳細かつ全面的な検討がきわめて活発に行われました。

 検討のなかで明らかになったいくつかの課題について触れておきます。現状では総重量が900キロの目標値に対して40キロ弱超過しています。衛星構造及び観測機器の軽量化が強く求められています。SOLAR-Bつの望遠鏡は高い空間分解能が売り物ですが,これの達成は衛星の構造・熱安定性,姿勢安定度にかかっています。ゴールはまぢかとは言え,姿勢系センサの熱歪み対策及びアクチュエータの擾乱対策にそれぞれ課題が残っています。打ち上げ直後の初期シークェンス,テレコマ系,地上系などにも検討に積み残しがあることが指摘されました。これらがオープンに議論されたことにより,その後の検討に拍車がかかったことが最大の収穫でしょう。なお,この時点では,打ち上げの1年延期に伴うマスタースケジュールの見直しが進行中でしたが,国際協力に関わる部分も含め,現在までに新しいスケジュールが確定しています。

 出席いただいたSOLAR-B衛星チーム外の先生方からは多くのアドヴァイスを頂きました。ありがとうございました。他の衛星を担当されている幾人かの先生方からは,共通の課題があることを再認識したとの言葉もいただきました。今後の協力・共同の足掛かりになればと思います。

(小杉健郎) 

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SS-520-2号機頭胴部本組み〜発送

 SS-520-2号機は,本年11月末,ノルウェーのスバルバードロケット実験場から打ち上げられる予定です。この実験場は北緯79°,北極点まで約1000kmという世界最北端にある射場で,ここが選ばれた理由は勿論このロケット実験の目的,カスプと呼ばれる所を狙ってロケットを打ち上げるためです。カスプには太陽風が直接的に低高度まで侵入してくると同時に上層大気のイオンが地球から大量に逃げ出していることが,「あけぼの」衛星の観測結果などで見つかっています。普通は地球の重力に束縛されているはずの重イオンが脱出するためには,何らかの特別の加速・加熱機構が働いているはずで,それは1000km程度から上の高度で始まると考えられています。SS-520-2号機の目的は正にその加速・加熱の起きているところにロケットを打ち上げて,その物理機構を調べようというものです。この研究は最近注目を浴びているテーマのつで,カナダ,アメリカ,ヨーロッパの研究者達も大きな関心を寄せており,一緒に共同研究するよう計画されています。  このロケット実験が提案されたのは4年以上も前のことですが,遂に最後の詰めの段階になりました。7月末の計器合せ,8月初めのモータ部発送,8月末〜9月中旬の噛み合せを経て,最終的な頭胴部本組みが10月10〜11日に行われました。ここに至る段階では大小様々なトラブルが発生し,最後の最後まで気の揉めるロケットですが,なんとか全てクリアーして13日の夕刻,地上試験装置などの機材と共に宇宙研を後にしました。本号が出る頃には現地にてロケットモータとの結合作業など射場オペの真っ盛りのはずです。

(向井利典) 

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DARTS「AKEBONO」データ公開開始
 http://www.darts.isas.jaxa.jp/akbn/

 PLAINセンターで構築を進めている科学衛星データベース「DARTS」(http://www.darts.isas.jaxa.jp/)では,太陽地球系物理のサービスとして「GEOTAIL衛星データ」と「国際太陽地球物理データベースCDAWeb」の二つを既に提供しております。 これに加え,9月よりAKEBONO衛星のデータ公開を開始致しました。当面公開されるのは

・基礎情報 (関係者連絡先,Reference,衛星情報など)
・軌道情報 (各観測装置のON/OFF情報を含む)
・各観測装置のデータ:低エネルギー粒子計測器(LEP),
           オーロラ撮像装置(ATV),
           放射線モニター(RDM)

です。これ以外の観測データも,公開準備が出来たものから漸次追加する予定です。

 地球・惑星関係の衛星は,国内外の数多くのPIによる複数の観測装置がほぼ独立に搭載され,データ公開もばらばらに行われてきたのですが,「衛星データは公共財である」というDARTSの基本ポリシーに沿う形で,最低限の要請を除いて全ての研究者にデータを自由に使用可能と致しました。1989年の打ち上げ以来,one solar cycleを無事生き抜いてきたAKEBONO衛星のデータが,更に広く使われることを期待しています。

 付記:PLAINセンターでは,上記を含むDARTSの報告を含めた「宇宙科学におけるデータベース」シンポジウムを10/27(金)に開催致し,各所で進行しているデータベース構築の現状と課題を踏まえ,強力な計算機と高速ネットワークを背景とした広域データベースの今後について,議論を行いました。出席されなかった方で,講演集を御希望の方はお知らせください。

(笠羽康正) 

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コーナーストーン
BepiColombo,ESAコーナーストーンに正式認定
 dash ESA/ISAS共同ミッションとして検討中 dash

 “BepiColombo”,多くの方には多分耳慣れない言葉と思いますが,これはESAの水星探査ミッションの名前です。太陽に一番近い惑星,水星は幾つか特異な性質を持っていますが,自転と公転周期が2:3の関係になっていることもそのつです。この事を最初に指摘したのがイタリアの応用数学者Giuseppe (Bepi) Colombo [1920−1984]でした。彼の名前にちなんで名付けられたBepiColomboは,

MPO:Mercury Planetary Orbiter
MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter
MSE:Mercury Surface Element

というつの衛星/ランダーでもって,水星の固体内部,表面から磁気圏に至る謎に一気に迫ろうとするESAコーナーストーン・ミッションです。打ち上げ手段については,2009年にロシアのSoyuz-Fregatを使って2回に分けて打ち上げようとする計画が現在のベースラインです。つはMPO,もうつはMMO+MSEをセットとするもので,いずれも電気推進と金星スウィングバイを使い,水星周回軌道への投入は2液の化学推進というシナリオです。

 BepiColomboESAの計画ではありますが,ESA/ISAS共同ミッションとするための協議が両者の間で行われてきました。その結果,宇宙研がMMOのシステム設計・製作・運用を担当,サイエンス面では(MPOMSEも含めて)日欧を中心とする国際協力で計画を推進しようとしています。宇宙研の衛星にNASAやヨーロッパの観測装置を搭載したことはこれまでにもありましたが,(この計画が実現すれば)宇宙研がESAの大型ミッションの一翼を担うという,新しい形の国際協力になります。9月中旬に行われたESASSAC (Space Science Advisory Committee)の結論を踏まえて,10月11〜12日に行われたSPC (Science Program Committee)で第5番目のコーナーストーン(CS-5)に正式決定され,検討にも拍車がかかってきました。

(向井利典) 

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ハッブル宇宙望遠鏡(HST)
紫外線観測衛星IUE
X線天文台Einstein
赤外線天文衛星 IRAS
X線天文衛星ROSAT
田中・井上先生サイテーション・ローリエット受賞

 米国ISI Thomson Scientific 社は自然科学全分野に渡り全世界8000誌1981 - 1998年間の論文を調査し,引用回数が多くその分野において大きな影響力があったとされる論文(ハイ・インパクト論文)を継続的に多数発表した科学者,サイテーション・ローリエット(引用最高栄誉賞受賞者)を発表した。ここで,ハイ・インパクト論文とは各年ごとに22の各分野で引用された回数が世界の上位200に入る論文と定義される。日本からは,この18年間13編以上のハイ・インパクト論文を発表した科学者30名が公表され,去る10月30日に東京アメリカンクラブで表彰された。

 天文学/宇宙物理学の分野からは当宇宙科学研究所名誉教授田中靖郎氏と同教授井上一氏がこの30人の中に入り表彰された。元来天文学/宇宙物理学の分野は世界における日本の論文のシェアが比較的少なく,また全論文数に比べハイ・インパクト論文の割合が少ないとされており,この度両先生がハイ・インパクト論文の多い日本の科学者上位30人の中に名を列ねられたことは大変な快挙であり,お二人には心からお祝申し上げたい。

 両先生のハイ・インパクト論文を少し分析すると,まずお二人の共著のハイ・インパクト論文が比較的多く7編ある。これは両先生が当宇宙研で「てんま」以来衛星の製作・運用のみならず,成果の導出においても二人三脚で日本のX線天文学を主導してこられたことを如実に物語っている。次にお二人のハイ・インパクト論文のそれぞれ約半分が,宇宙研の4番目X線天文衛星「あすか」の成果が出だした初期の1994 - 1996年に集中していることである。「あすか」は世界の歴代天文衛星の中でも,ハッブル宇宙望遠鏡(HST)紫外線観測衛星IUEX線天文台Einstein赤外線天文衛星 IRASX線天文衛星ROSATなどに次ぐ高い論文生産量を誇っている。しかし今回の田中,井上両先生のサイテーション・ローリエット表彰は,図らずも「あすか」が論文の数だけではなく質においても,天体物理学に強いインパクトを与える重要な成果を出していることを検証する結果となった。お二人に喝采を送りたい。

(長瀬文昭) 

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CNES総裁の来所

 フランス国立宇宙センター(CNES)のアラン・ベンスーサン総裁が,CNES国際部長セルジュ・プラタール,CNES顧問ベルナール・ルシアーニ,CNES国際局エリク・セルフメイヤー,フランス大使館科学参事官ミシェル・イスラエルの各氏とともに,さる10月13日に宇宙科学研究所を来訪された。松尾所長,鶴田企画調整主幹その他が対応し,お互いの活動の概略を紹介し合った後,エントランス・ホール,飛翔体環境試験棟,構造機能試験棟,「ようこう」データ解析室,イオン・エンジンなどをご案内した。イオン・エンジンについては特に関心が深く,ミューゼスにおける利用の計画などを国中助教授に熱心に質問されていた。

(的川泰宣) 

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