No.185
1996.8


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文部大臣賞受賞!!

 宇宙研ビデオ第4巻「ブラックホールをさぐる」が日本視聴覚教育協会主催で,文部省と日本放送協会(NHK)後援の「優秀映像選奨の会」で,最優秀作品賞=文部大臣賞,視聴覚教育協会長賞を受賞することになりました。授賞式は8月22日に有楽町朝日ホールで行われます。この協会(財団)は全国の視聴覚教育に携わる小中高校を始めとして,多くの教材制作団体が加盟し,「視聴覚教育」と題する雑誌を毎月発行しています。このような機関から,我々が最高の賞を受けられたことは,ある意味では視聴覚教育の専門家に内容が認められたことになり,また我々の啓蒙活動も高く評価されたと考えられ,喜ばしい限りです。
 小中高校の天文関連用語としては「宇宙人」につづいて良く知られていながら,普段漠然と使っている「ブラックホール」と言う言葉を,実態を踏まえて理解出来るように作られた良い教材だと考えています。また映像や音の美しさには限りないものがあり,ぜひこの受賞を機会に,多くの人に見て頂きたいと考えます。シリーズ全体を含めて,このビデオは宇宙研の財団から有償で入手することが出来ます。財団の電話は 0427-51-1126 (FAX:0427-51-2165) です。

(村上敏夫,佐々木英俊)

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月探査周回衛星計画-駒場共同事務所開設

 宇宙科学研究所と宇宙開発事業団が共同で準備を進めている月探査周回衛星計画の共同事務所が,駒場キャンパスの14号館の1階に開設された。
 この計画は,H-ロケットを用いて,月周回衛星,着陸実験機,リレー衛星から成る約1.9トンの大型の探査機を月に送り,月の起源と進化の研究,月環境の計測,月からの科学観測,及び月利用の可能性の調査を行うことを目指している。現在の構想では,月周回衛星を高度100Hの準極軌道に投入し,約1年間にわたり,月面全域の元素組成,鉱物組成,地形,表面地下構造,重力,月磁場を,最新の計測技術を駆使して遠隔探査する。また,ダスト,高エネルギー粒子,プラズマ,電磁波動などの月環境の計測とともに,月軌道からの地球周辺プラズマ環境や惑星電波の観測を行うことも考えられている。着陸実験機は,地上からの誘導によらず自動で月面に軟着陸する技術の検証を行う。楕円軌道のリレー衛星は,周回衛星が月の裏側を飛翔する時の軌道情報を中継し,月の裏側の重力場を高精度で決定する。
 7月23日には,宇宙研,宇宙開発事業団,国立天文台,大学,国立研究機関等の関係者が集まり,共同事務所の開所式が行われた。席上,宇宙研の松尾教授と宇宙開発事業団の五代副理事長の手により,共同事務所の看板が取り付けられた。共同ミッションの象徴である共同事務所が開設されたことにより,新しい枠組みで実施されるこの計画も実現への具体的な一歩を踏み出した。

(佐々木進)

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西欧同盟(WEU)議員会議科学技術航空宇宙委員会の文部省訪問

 WEUの加盟国国会議員より構成される標記委員会のメンバー30名が,「日本における航空宇宙産業」と題するレポートを作成し,当該分野における日本と欧州との協力の可能性につき検討するため,去る7月17日に来日し,23日までの間,衆・参科学技術委員会はじめ関係各省庁等を訪問した。なお,標記委員会は73年及び83年にも来日しており,今回は3度目の来日である。
 文部省には7月18日に訪問し,文部省学術国際局及び宇宙研の関係者との意見交換を行った。その概要は以下のとおりである。
 冒頭,文部省林田学術国際局長が挨拶し,我が国の科学技術政策及び宇宙科学研究の現状等について説明した後,訪問団を代表してエナーレス委員長(スペイン)の挨拶があった。次いで宇宙研側の説明に入り,松尾企画調整主幹が宇宙研の概要について,上杉教授がM-Vロケットについて,槙野教授がいままでの研究成果について,そして中谷教授が将来計画及び国際協力について,各々説明した。
 訪問団の委員からは,我が国における基礎研究と応用研究との関係や宇宙研の火星探査及び外国製部品の使用などについて質問があり,活発な質疑応答が行われた。

(穴沢一夫)

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平成8年度一般公開



 8月3日(土)既に年中行事となった宇宙研一般公開が行われました。今年の公開は当初の見込みでは夏の打ち上げ実験とのスケジュール調整が厳しく,展示物やマンパワーの確保の意味で混乱が予想されましたが,ロケット実験の日程変更などで公開側にとっては例年通りの体制で臨むことができました。当日は夏の炎天がとぎれた涼しい日となり,昨年から始めた水ロケットの工作/打ち上げには相変わらずの盛況で長い列ができていましたが,公開する側にとってもされる側にとっても汗だくの一日にならずにすみました。今年の公開では先日無事に回収されたSFUの一部の実際のフライトハードウェアの展示,クリーンルーム内に運良くMUSES-BとLUNAR-Aが仲良く同居しておりこれを公開できたこと,またM-Vで予定される近未来の惑星探査などのミッションの公開,例年通り力作のSPSグループが今年は空中を展示場所として大モノを浮かべたこと等々盛りだくさんでしたが,関係の方々のご苦労のおかげで宇宙研の活発なアクティビティを十分に紹介できたと思います。打ち上げを兼ねた反省会でビールとつまみが少なく多少の不満が残ったことが反省点でこれは次回以降に申し送りたいと思います。

(稲谷芳文)

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LUNAR-A 第一次噛合せ試験

 LUNAR−Aは月面にペネトレータ(月震計等各種計測機器,通信機器等が搭載されている)を打ち込み,月の内部構造の解明を目的とし,1997年度にM-V-2号機で打ち上げが予定されている第17号科学衛星である。
 このLUNAR-Aの第一次噛合わせ試験(通称一噛み)が5月下旬から相模原キャンパス飛翔体環境試験棟の衛星クリーンルームで開始された。第一次噛合わせ試験の時点では,各搭載機器は,まだ最終状態にはなっていない。ここで,機器単体の性能確認そして衛星構体や各機器間の機械的,電気的なインタフェイス試験を行い,問題がないかどうかを確認する。衛星は,いつもでは あるが,とにかく軽量化が最大のテーマである。LUNAR-Aは従来の衛星よりさらに軽量化が厳しく,搭載機器担当者は1Kでも軽くすべく,例えば,配線の長さを1Bでも短くしようと努力をする。その結果,単体では問題はなくても,他の機器と組み合わせると,正常に動作しないという不具合が発生する。一噛みでは,こういった不具合をすべて虱潰しに洗い出し,対策を講じ,修復していく。このため作業が夜遅くになることもしばしばである。試験担当 者にとっては気の休まる暇もないが,ペネトレータが無事月面に打ち込まれ,貴重なデータを地球に送り届けたとき,苦労は報われる。なお,ペネトレータ も7月下旬から一噛みに参加すべく,磁気シールド室でP組試験(組合せ試験)が行われている。
 一噛みは9月上旬まで続く。

(河端征彦)

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LUNAR-A C組試験

 C組の報告をする前に,そもそもC組とは何かについて,まず,お話ししておきたいと思います。ご存じのように,月ペネトレータは減速モータにより月周回軌道を離脱した後,月面到達直前にラムライン制御という方法により貫入方向に向けて姿勢マヌーバを行います。このときに用いられるモータ(DOM)と姿勢制御部(CNT)から成るペネトレータの輸送系をペネトレータ・キャリア(Carrier)と呼んでいますが,C組とは,このキャリアの噛み合わせ試験のことです。
 C組の中心となるのはタイマを含む姿勢制御部の電気性能試験です。ミッション遂行上姿勢制御系の応答遅れの誤差は僅か千分の一秒以下に管理しなければならないため,従来は問題とならなかったような細かいことが試験では顕在化し,その実施方法や結果の評価方法などはかなり特殊なものとなっています。内容的には,3年前に行った気球によるラムライン制御実験や,昨年度と今年度に連続して行った観測ロケットによるキャリア実験の噛み合わせと,基本的には同じものです。気球実験のときには試験の方法すら確立していなくて,どのようにしたら効果的に進めることができるか,皆で一生懸命に考えたものでした。そうしたことを振り返ると,今までの経験がよく活かされて,全てが手際よく,あっさりと見えるほどに終了した今回のC組には感無量の思いがします。
 さて,今回行われたのはキャリア1号機(PCR-1)の噛み合わせでしたが,今年中に,さらに2号機と3号機の噛み合わせも予定されており,冬期の観測ロケットによる最終機能確認試験をもって,ペネトレータ・キャリアの開発も最終段階に到達することになります。

(森田泰弘)

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S-310-25号機,26号機噛み合わせ試験

 6月18日から7月9日にかけてS-310-25号機,26号機の噛み合わせ試験が行われました。前半は25,26両号機に加えて,S-520-18号機の噛み合わせも有り3機同時進行(!)と言うあわただしさの中,人手不足から夜遅くまでの作業を強いられましたが,後半は順調に進み,予定よりも1日早く試験を終える事が出来ました。このロケットは夏場の夜間に出現するスポラディックE層(通称Eスポ)に伴う電子密度の擾乱をロケットと地上観測の双方を用いて明らかにしようという目的の物です。このため,2機を15分程度の間隔で打ち上げるとか,TMA(トリメチルアルミニウム)発光弾と言う日本では20年ぶりの搭載機器が有ったりと,工学の方,事務の方を始めいろいろな方に迷惑をお掛けしています。この場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。
 ちなみにこのTMA発光弾が作る発光雲は15分間程度肉眼でも見られます。月の無い時間帯に打ち上げますので,九州東岸,四国南岸,紀伊半島の西岸ぐらいの広い範囲から,雲さえなければ十分見えると思います。

(早川 基)

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S-520-18号機打上げ延期について

 平成8年度第1次観測ロケット実験として打上げを予定していたS-520-18号機は,フライト品の試験確認において尾翼の一部に強度上の問題が発生し,打上げに万全を記すため尾翼を取替えることとしましたが,その製造・試験に期間を要し,第1次(8〜9月)の打上げは困難と判断するに至ったため,打上げを平成8年度第2次実験以降に延期することになりました。

(中島俊)

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PLANET-B 熱モデルの熱真空試験

 火星探査を目的としたPLANET-B熱モデルによる熱真空試験が飛翔体環境試験棟の大型スペースチャンバにおいて7月5日から16日まで実施されました。
 この試験は高利得アンテナ,母船,推進系および各搭載機器から構成されるPLANET-Bの熱数学モデルの検証と温度制御用ヒータの容量を確認することを目的として行われました。
 試験内容はPLANET-Bが地球を離れ火星周回に至るまでに遭遇する熱環境を模擬しており,主にトランスルナー軌道,トランスマース軌道,火星周回の試験モードについて評価を行いました。また,この試験では500ニュートンの2液推進系の燃焼模擬と伸展マストの伸展試験を合わせて行っています。
 各試験モードの結果は,PLANET-Bの熱設計の検証を行うための有効なデータを取得することができました。また,これらのデータはFMの熱設計に反映することを予定しています。
 写真はPLANET-Bの熱モデルがスーペスチャンバに設置されたところで,上から高利得アンテナ,母船と2液推進系のノズルを示しています。

(大西 晃)


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