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イプシロンロケット模擬射点音響環境計測試験の実施結果について(第3シリーズ)

宇宙航空研究開発機構は、イプシロンロケットプロジェクトチームを中心に設計解析を実施して設定した発射台形状による音響環境を確認するため、ロケット音響環境のピーク周波数帯をカバーする実機換算で500Hz相当までのロケット機体近傍場および遠方場の音圧データを取得することを目的として、スケール比1/42の模擬射点と小規模固体モータによる模擬射点音響環境計測試験を下記のとおり行ないました。

本試験は、音響計測技術を有するJAXA 航空プログラムグループ(APG)と音響解析技術を有するJAXA情報・計算工学センター(JEDI)の協力のもと、イプシロンロケットプロジェクトチームからの要請に基づき、宇宙科学研究所が主体となって能代ロケット実験場にて実施したものです。

【試験実施日】2012年4月10日(火)、12日(木)、13日(金)、14日(土)
【試験場所】 宇宙航空研究開発機構 能代ロケット実験場
【試験回数】 6回 (推力1kN級,燃焼時間2.4秒の小規模固体モータによる)

今回の音響環境計測試験実施にあたり、ご協力頂きました関係各方面に深甚の謝意を表します。
なお、昨年度より実施した3シリーズの本試験結果を評価して、イプシロンロケットの発射台形状と音響環境を設定します。

模擬射点概略図

試験の様子

イプシロンロケットプロジェクトチームは、従来に比べて発射時のロケット噴射ガス流(プルーム)による音響環境を緩やかにする発射台(射座・煙道)形状を選定することに取り組んでおります。

打ち上げ時の音は、周辺の生活環境だけでなく、衛星等ロケットに搭載された機器類の機能にも影響を与える決定的な存在です。特に秒速2000mを超える高温高速のロケットプルームは、通常の流体機械の騒音問題とはかけ離れたレベルの高音圧の源となります。具体的には、ロケットの噴射ノズルから排出されるプルームは、それ自身が音源となるとともに、排気流と射場(例えば、火炎偏向板や煙道)と干渉して新たな音源を形成します。こうして発生した音は、射場の構造物による反射や空気伝播を経て上昇中の機体に到達し、フェアリング内部に搭載された衛星などを振動させます。

予想される振動が大きいほど、搭載物の耐振設計余裕を増やさなければならないため、ロケット打上げ時の様々な音源の特性を射場設計の段階で把握して適切な音響対策を施すことができれば、信頼性、コスト、使いやすさにおいてイプシロンロケットの競争力を高めることができます。

そこでイプシロンロケットプロジェクトチームは、宇宙科学研究所および情報・計算工学センターと共同で数値流体力学(CFD)技術を活用した射点音響設計を進めてきました。また、固体モータ地上燃焼試験の機会を利用して実践的な音響計測を実施し、航空プログラムグループのジェットエンジン騒音研究における音響場計測の知見をもとに解析結果の検証を行いながら、外部音響環境緩和の実現を目指してきました。

今回を含む3回の試験シリーズにより、音響環境が緩やかになる発射台形状が見出され、目的を満足する良好なデータを取得することができました。

[参考]

2012年4月17日

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