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トピックス

再使用ロケット実験機・ターボポンプ式エンジン第4次地上燃焼試験(RVT-14)計画概要

試験期間

2009年3月2日(月)〜3月20日(金)
(燃焼試験実施予定:3月13日(金)、3月15日(日)、3月17日(火))
※試験期間、試験回数及び予定日は、天候その他の理由により変更することがあります。

試験概要

JAXA宇宙科学研究本部の再使用ロケット実験機実験班は、将来宇宙輸送系に係る研究の一環として、推力8kN級の液体酸素/液体水素(LOX/LH2)エンジンを搭載した垂直離着陸型の再使用ロケット実験機を製作して繰返し運用の実験を行ってきました。
現在、基礎研究の範囲でより本格的な推進システムの運用に係る技術課題を抽出するため、推力制御範囲が広く応答性の高いターボポンプ式エンジンの開発をJAXA角田宇宙センターの先進技術研究グループ関係者と連携して進めています。

2004年度以降システムの検討と構成コンポーネントの改修、製作、機能確認試験を一通り完了させ、2006年度後半から本年度にかけてエンジンと推進剤供給系を機体に組込んだ推進系システム試験の形態で3回のエンジン地上燃焼試験をJAXA能代多目的実験場において実施しています。
最初の2回の地上燃焼試験の結果、低推力域での低周波不安定燃焼(チャギング)の発生、液体水素ターボポンプ(FTP)の内部機構の脆弱さに伴う運転条件の制約およびローターの過大な振れ回りによる内部損傷が課題となりました。そこで、低推力域においてはエンジンの作動条件を調整して燃焼を安定化させることとし、FTPの内部機構については軸封シールとシャフトを強化して運転の制約を緩和させるとともにローターの運動を安定化させるための改修を行ないました。

さらにポンプ性能向上のためタービンとインペラも改良されています。新FTPは、昨年10月にJAXA角田宇宙センターで良好な単体特性が確認された後エンジンに組み込まれ、12月初旬に能代多目的実験場で成功した3回目のエンジン燃焼試験(RVT-13)において良好な動作を示しています。RVT-13では、起動シーケンスが確立され、準静的、動的な推力制御特性に加えてディープスロットリング特性も成功裏に取得されましたが、推力70%を超える高推力域についてはさらに推力制御特性を確認しておく必要があります。

そこで本計画では、RVT#4号機による垂直離着陸飛行実験で想定される広範な燃焼作動条件下で、特に高推力側の燃焼推進特性、推力制御特性を取得して同機体システムに対する適合性を評価するとともに、完全再使用型LOX/LH2エンジンの実用化へ向けた技術的な課題を抽出することを主な目的として、今年3月にJAXA能代多目的実験場においてエンジン地上燃焼試験を実施します。

図1-1 第3次地上燃焼試験 RVT-13の状況(2008年12月)

図1-1 第3次地上燃焼試験 RVT-13の状況(2008年12月)

図1-2 再使用ロケット実験RVT(Reusable Vehicle Testing)

図1-2 再使用ロケット実験RVT(Reusable Vehicle Testing)

図1-3 ターボポンプ式エンジン地上燃焼試験の試験形態概要(システム燃焼試験)

図1-3 ターボポンプ式エンジン地上燃焼試験の試験形態概要(システム燃焼試験)

エンジン供試体

供試体は、水素燃料をターボポンプのタービン駆動ガスとして用いるエキスパンダーサイクル式のLOX/LH2エンジンで、燃焼器、2台のターボポンプ、バルブ類により構成される。その外観を図2-1に、主要性能諸元(計画値)を表2-1に示します。
推進剤タンクから供給されたLOXは、液体酸素ターボポンプ(OTP)で昇圧されて噴射器から燃焼室に流入します。一方LH2は、液体水素ターボポンプ(FTP)で昇圧された後、エンジン燃焼器を冷却しながら熱を吸収してガス化し、そこで得たエネルギによって両ポンプのタービンを駆動してから燃焼室に噴射されます。エンジンの推力制御は、両ターボポンプの出口に配置した2台の推力制御弁TCVで推進剤の流量を制御することによって行います。

図2-1 RVT#4エンジン供試体

図2-1 RVT#4エンジン供試体

表2-1 RVT#4エンジンの主要計画諸元

表2-1 RVT#4エンジンの主要計画諸元

推力制御方式

図2-2に示すように、本試験でも前回試験(RVT-13)同様ポンプ回転数をほぼ一定に保った運転を実現し応答性が高い先進的な「液側制御方式」を採用します。

図2-2 エンジン推力制御方式の変更

図2-2 エンジン推力制御方式の変更

ターボポンプ

液体水素ターボポンプFTPおよび液体酸素ターボポンプOTPの二台で構成されています。OTPについては従来のものをそのまま使用しますが、FTPについては、前回試験(RVT-13)の成果を踏まえて、ポンプの回転数と吐出圧力を下げるためにタービンノズルの開口面積を拡げる改修のみを行ないました。他のコンポーネントはそのまま用いるため単体の動作特性は精度良く予測できます。

燃焼器

燃焼器は、従来のものをそのまま使用します。点火プラグからノズル出口面までの軸方向長さ約680mm、燃焼室円筒部内径100mm、ノズルスロート径58mm、ノズル開口比3.5で、内筒は無酸素銅製、外筒はニッケル製です。特に外筒は、繰返し運用に対する耐久性を向上させるため、製造において高温工程が不要な電気鋳造(電鋳)技術を使って形成されています。

推進剤タンク

推進剤タンクは前回地上燃焼試験で用いたものをそのまま使用する。LOXタンクはアルミニウム製のRVT#3号機搭載品です。LH2タンクは十分な燃焼時間を確保するため、フライト品より容積が大きいSUS製の真空断熱タンクです。

図2-3 液体水素ターボポンプFTPの概要(タービンノズル開口面積のみ変更)

図2-3 液体水素ターボポンプFTPの概要(タービンノズル開口面積のみ変更)

2009年3月10日

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