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大気球を使った成層圏大気の大量採取に成功

2007年6月4日(月)6時00分に、2007年度第1次気球実験の3号機として、成層圏大気のサンプリングと新型成層圏大気採取装置の予備実験を目的としたB100-17号機を三陸大気球観測所より放球しました。

この気球の容積は10万m3であり、およそ毎分300mの速度で正常に上昇しました。高度13kmより排気弁とバラスト弁を操作して上昇速度を毎秒0.5〜5mの範囲で変化させ、大気のサンプリングと新型成層圏大気採取装置の予備実験を行いました。そして放球4時間10分後に三陸大気球観測所東方100km、高度34.6kmで水平浮遊状態に入りました。その後、排気弁を操作して徐々に高度を下げながら大気のサンプリングを継続しました。気球が唐丹湾沖東方30kmに達した13時30分に指令電波を送信し、観測器を気球から切り離しました。観測器は、釜石沖合東方35kmの海上にパラシュートで緩降下しました。観測器および気球はヘリコプターと回収船によって無事回収されました。

本実験では、気球の上昇・下降中に高度14.5kmから34.6kmまでの11高度において希薄な成層圏大気を大量に採取することに成功し、所期の目的を達成しました。採取された成層圏大気試料は、今後、東北大学、東京工業大学、名古屋大学、東京大学、北海道大学において、各種温室効果気体や化学的に活性な気体の濃度と同位体比について高精度分析が行われ、それらの高度分布と経年変化が明らかにされます。本実験によって得られる学問的知見は、温室効果気体の地球規模の収支や成層圏大気の化学・物理過程の理解に直接貢献するものです。

また、今年出発する第49次南極観測隊が昭和基地で実施する成層圏大気採取実験の予備実験として、新しく開発した小型クライオサンプラーの総合性能評価を併せて行いました。その結果、本装置は高度20kmにおいてあらかじめ設定した大気採取シーケンスを実行したことが確認され、所期の目的を達成しました。今後、飛翔データおよび採取された大気試料の解析を行い、南極に持ち込む小型サンプラーの製作に役立てていきます。

放球時の地上気象状況は、天候:晴れ、風速:毎秒2.0 m、気温:摂氏17度でした。

2007年6月5日

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