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ごくろうさま、「はるか」
−電波天文衛星「はるか」の運用終了についてー

1997年2月に打ち上げられた、世界初の本格的電波天文衛星「はるか」が、まもなく運用を終了することになりました。

電波望遠鏡衛星「はるか」は、当時の宇宙科学研究所の新規開発のM-Vロケットの初飛行による打上げでした。打上げ2週間後、「はるか」はさしわたし10mの六角の花を咲かせました。梅の花の咲く頃でした。「はるか」は今も金色に輝きながら、地球のまわりを、2万キロメートルまで遠ざかる楕円軌道でまわっています。地球上にひろがって存在する電波望遠鏡と軌道上の「はるか」は、直径3万キロメートルの、超巨大な電波望遠鏡を合成してきました。言いかえれば、地球近傍の宇宙空間が3万キロメートルの電波の瞳になったのです。この瞳は、圧倒的な解像度で遠くの天体の姿をみせてくれたのです。

「はるか」は当初の3年間の運用期間を上回って活躍を続けてきましたが、打上げ後6年目に入った2年前から姿勢保持に困難があって、立上げの努力を続けてきましたが、すでにスラスター燃料も尽きてきたための運用終了の決断です。「はるか」は今、8才と9ヶ月、人間で言ったら88才、米寿でしょうか。

「はるか」をつかった夢のようなまったく新しい考え方の電波望遠鏡を、「スペースVLBI」と呼びます。「はるか」は、世界初めてのスペースVLBIを実証する実験衛星として、平成元年(1989年)に設計製作が始まりました。「はるか」が稼動を始めると、世界中が参加しました。「はるか」との通信、軌道決定のために、世界5ヶ所の追跡局が、また、14ヶ国の88基もの電波望遠鏡が共同観測に参加してきました。この観測計画は、 VSOP(VLBI Space Observatory Programme)計画」と名づけられ、成功裏に続行しました。そして、遠方のクェーサーや銀河の中心でおこる驚くべき現象を目の当たりにさせてくれました。そこには、太陽の何百万から何十億倍もの重さのブラックホールの近傍から光速に近いジェットが噴出しているのです。

スペースVLBIを世界最初に実現し、観測をすすめた国際VSOPチームは、10月16日から福岡で開催されたIAA(国際宇宙航行アカデミー: International Academy of Astronautics)の2005年Laurel賞を頂きました。21世紀にはいって、 ミール, スペースシャトル, SOHO, ハッブル宇宙望遠鏡チームに続いた、VSOPチームへの嬉しいプレゼントです。これは、死につ つある「はるか」への餞(はなむけ)でもあるといえるでしょう。

今年、「はるか」の2作目の映画がつくられました。この制作にわたしたちも心を込めました。題して「3万kmの瞳」、英語版もあります。30分番組ですが、これも今となっては、「はるか」追悼の作品となります。

わたしたちはまた、2012年初打上げをめざして、さらに強力にした衛星による「VSOP-2計画」を提案しています。「はるか」が成果をだし始めてから直ぐ将来を考えて検討し、設計開発を続けていたのです。

ながいこと「はるか」の構想、予算化、設計、製作、試験、打上げ、運用、工学 実験、観測運用、さまざまに関わってこられたたくさんの皆さん、「はるか」を応援してくださった皆さん、ほんとうに永きにわたってありがとうございました。

地球の長楕円軌道を高く翔ぶ「はるか」は、ゆっくりと回転しながら、神話のアリエルのように、ほぼ永遠に宇宙を飛びつづけます。構想から20年にもわたる「はるか」でした。「はるか」の美しい姿が燃え尽きずにいてくれることは、救われる想いです。「はるか」は、ともに歩んだわたしたちの心のから消えることはありません。

JAXA宇宙科学研究本部
「はるか」プロジェクトマネジャー
平林 久

2005年11月8日

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