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「はやぶさ」搭載のイオンエンジン快調

 2003年5月9日に鹿児島宇宙空間観測所から打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)は、順調に航行を続けています。現在地球よりはるか7,500万km後方に位置し、これは地球と太陽の距離の半分にも達します。
 ここまでの経緯をお話しします。あの日13時29分に“MUSES-C”を乗せたM-Vロケット5号機は梅雨直前の青空に轟音とともに消えて行きました。ゴールドストーン追跡局のテレメータ受信によりほぼ正確に軌道投入がなされたことが判明し、「はやぶさ」と新しい名前がつきました。この探査機には4台のイオンエンジンが搭載され、これから始まる地球から小惑星「イトカワ」間の往復10億kmの旅の原動力となります。
 月末から1日1台ずつ、プラズマ点火とイオン加速を慎重に行いました。通信波のドップラーシフトからイオンエンジンが「はやぶさ」を加速している有り様をリアルタイムに捕らえることができたのは予想外の喜びでした。地球から監視のない状態でも一人黙々と加速がなされるように運転パラメータの調整やコンピュータのプログラム書き換えを行い、7月から巡航運転が始まりました。
ほとんど毎日イオンエンジンは運転され、1日当り秒速約4mずつの増速が行われました。11月末には史上最大の太陽面爆発も経験しこれを安全に乗り越えました。12月22日に本年の加速目標を達成して年内の運転を終了し、作動合計時間は8,147時間・ユニットとなりました。年が明けた1月後半から軌道修正のためイオンエンジン加速を再開しますが、「はやぶさ」は2004年6月頃に地球と再会合するための軌道をほぼ確保したと言えます。この地球接近時に、地球重力を使って「はやぶさ」の速度ベクトルを小惑星に到達するようねじ曲げます(地球スウィングバイ)。さらにその後もイオンエンジンを噴射し、2005年に小惑星「イトカワ」にランデブーすることになります。
 ここで改めてイオンエンジンを紹介します。推進剤キセノンを電離して電荷を帯びたイオン粒子を1kV以上の電位差で加速した後、下流で電子と混ぜて中性プラズマとして高速噴射を得てその反作用を推進力とします。推進剤の利用効率が高く、深宇宙航行には必須の技術です。このイオンや電子を作る方式にはいくつかの種類があり、「はやぶさ」では宇宙科学研究本部(旧宇宙科学研究所)電気推進工学部門で研究開発したマイクロ波放電式イオンエンジン「ミュー・テン(μ10)」が応用されています。最大の特徴はプラズマ発生に放電電極を用いず、劣化の心配がないため長寿命・高信頼が期待できるということです。2003年中に達成した8000時間・ユニットの宇宙作動実績は、世界各国が実用化にしのぎを削る電気推進技術の中で、世界水準を達成したと言えます。(國中 均)

2003年12月26日

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