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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第141号

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ISASメールマガジン   第141号       【 発行日− 07.05.29 】
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★こんにちは、山本です。

 毎週話題の「はやぶさの大いなる挑戦」の放映は、今週末の6月2日の予定ですが、東京6大学リーグの野球中継の予定が有り、再延期されるかも知れません。
楽しみに待っていられる方、科学技術映像祭サイト
(⇒ 新しいウィンドウが開きます http://ppd.jsf.or.jp/filmfest/index.htm
では予定どおりになっていますが、念のためNHKの番組表を確認することをお勧めします。

 今週は、2006年の3月以来の登場、固体惑星科学研究系の岡田達明(おかだ・たつあき)さんです。
実は、昨年暮れにメールマガジン用に原稿を書いていただいたのですが、ちょうどその時は、『セレーネ「月に願いを」キャンペーン』の真っ最中で、 キャンペーン用の記事になってしまいました。
(⇒ 新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/j/new/event/selene_camp/topics.shtml
 「月に行きましょ!」参照)

── INDEX──────────────────────────────
★01:いよいよ本番、SELENE@種子島レポート
☆02:ひので全観測データ公開スタート!
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★01:いよいよ本番、SELENE@種子島レポート

 今は5月の半ば(記事を依頼された日)、いよいよ迫ってきたこの夏の打上げに向けて、SELENE衛星は今まさに種子島の射場での電気総合試験を迎えています。これは、10年間に及ぶ開発期間の総仕上げとなる重要な試験であり、ミッション開始以来ずっと関わってきた者として、地上で念入りにチェックできる最後の機会でもあります。

 これまで経験した科学衛星の場合、内之浦からのM-Vロケットによる打上げでは、衛星が射場に到着してから打上げまでの期間は1ヶ月から1ヶ月半程度でしたが、SELENEは3月末に搬入し、打上げが8月という長丁場です。今後の科学衛星をH-IIAロケットで種子島打ちにすると、 こうなってしまうのかと溜息交じりに余分な思いを巡らせてしまいます。

 種子島の射場に行くには、羽田から鹿児島空港まで飛行機で飛び、そこでプロペラ機(少し前に、車輪が出ずに胴体着陸した例の機体と同型)に乗り換えて、島の中央部にある種子島空港に降り立ちます。そこから車をとばして島の南端にある射場へと向かいます。

 種子島の幹線道路は舗装状態のよい2車線の路面、広く植え込みのある歩道、街路樹や植え込みに咲く可憐な花などがよく整備されていて、思いのほか綺麗で快適な旅となった。2006年に開港した新空港と合わせて、島中の道路網はここ数年で急速に整備されてきているようで、あちらこちらに幅員拡張工事が急ピッチで進められています(種子島は金回りがよいようで?)。

 種子島の射場は、白い砂浜と浸蝕崖がむき出しになった岸壁が青い海と空と向き合い、陸の緑とのコントラストが映える絶景のシーンの中に、忽然と聳え立っています。砂浜ではサーファーが太平洋岸の心地よい波に乗って楽しんでいます。射場がなければ、南の楽園リゾート(?)という快適な場所です。

 さて、SELENE衛星の試験は現在のところ大きなトラブルもなく、順調に進んでいます。今回は個別の観測機器の単体での機能・性能を確認する試験を順番に行い、それに引き続いて全搭載機器を一斉に立ち上げて、衛星にとっての最大負荷の状態をつくり、その状態で衛星本体や各機器の機能を確認する試験や、機器相互の干渉が無いことを確認する試験などを行っています。

 SELENEには、科学観測機器14に加えて、教育番組用のNHKのハイビジョンカメラを入れて15の観測機器が搭載されます。これらの試験を順にこなすだけでも相当な日数と時間がかかります。総合試験では朝集合でも、全機器を立ち上げ終わったころには夕方になってしまいますが、そこからが本番になります。終了時に日付が変わることはごく日常的です(もはや日単位での作業ではないので、「日常」とは呼べない?)。

 SELENEの目的は、月の起源と進化を探究するため物質、地形、構造、重力場、磁場などの情報を、リモートセンシング観測によって史上最高の精度、分解能で月の全球を詳しく調べるというものです。その観測項目のひとつは表面の元素組成を調べるもので、私の担当機器は、月の表 面がどのような元素で構成されているかをエックス線で調べる装置(蛍光エックス線分光計)の開発と打上げ後の観測です。同様の観測機器を小惑星探査機「はやぶさ」でも搭載して小惑星イトカワの観測を行いましたが、今回はその発展版です。

 SELENEはこの夏の打上げ、秋の本観測運用にむけて、チーム一丸となって準備を着々と進めています。SELENEは旧NASDAとISASの共同ミッションとして開始し、設立、体制、運用方法など、これまでの科学衛星とは一味も二味も違うところがありますが、その科学的な成果については乞う!ご期待を。また、一般公開用のWWW用データは各機器ともに作る予定になっていますが、SELENEの成果を使って教育啓蒙活動にも力を注いでいければよいなと考えています。

(岡田達明、おかだ・たつあき)

新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/j/new/event/selene_camp/index.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※