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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第83号

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ISASメールマガジン   第083号       【 発行日− 06.04.11 】
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★こんにちは、山本です。

 週末に雨が降ったり強風が吹いたりしたのですが、ISASの桜は未だ散りきっていません。今年は朝晩の気温が低いので、花のもちがいいようです。

 先日、廊下で川口教授とすれ違ったので、ここぞ!とばかりに「先生、ISASメールマガジンに何か書いてください」とお願いしました。「他の人たちがもうイロイロと書いているでしょ」と言われてしまいましたが、「川口先生のファンがたくさんいます。是非お願いします。」と言って別れました。

 川口先生にこんなことを書いて欲しいと希望がありましたら、読者の皆さんからのメールをお待ちしています。

 今週は、宇宙情報・エネルギー工学研究系の朝木義晴(あさき・よしはる)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:終わり行くプロジェクトの記録
☆02:宇宙科学講演と映画の会
☆03:「第5回 君が作る宇宙ミッション」参加者募集!
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★01:終わり行くプロジェクトの記録

 メールマガジン059号[2005/10/18]で村田が電波天文衛星「はるか」を中心としたスペースVLBI観測プロジェクト「VSOP」のチームが国際宇宙航空学会のチーム栄誉賞を受賞したことについて報告しました。その2ヶ月後の068号では、平林が「はるか」の最終運用の報告をしました。そして、VSOPプロジェクトは「はるか」の運用終了にともない、2006年3月31日で終了を迎えました。プロジェクト開始から満17年目の春になります。

 少し遡り、2004年度末にVSOPの衛星やロケットの開発と打上げ、そしてその科学成果をまとめた「3万kmの瞳」という映画を宇宙研で製作しました。VSOPは「はるか」と地球上の電波望遠鏡を組み合わせて仮想的な巨大電波望遠鏡を作るという計画で、宇宙研研究者を中心に、世界中の電波天文学者、衛星およびロケット開発などのメーカー、予算要求などのマネジメントを支えるスタッフなどが協力して作り上げてきたものです。私は「はるか」が打ち上げられて2ヶ月後に当時研究員としてVSOPチームに加わったこともあり、その過程を体験として知りませんが、その後の研究生活でそれがいかに大変なことであったかは容易に想像できます。この映画の内容はその中でも特に天文研究に重点を置いていますが、有り難いことにこの映画をご覧になった方々から良い評価をいただいています。この作品が2006年度の科学技術映像祭の科学教育部門で文部科学大臣賞を受賞することになりました。

 正直に告白しますが、この映画製作の企画があがった時に私はあまり関わるつもりはありませんでした。企画は宇宙研ですが、実際に撮影や編集を行うのは映画製作会社です。企画開始時の打ち合わせではその会社にやる気のなさを見抜かれていたようで、「朝木さんは打ち合わせで平林さんから時々話を振られるとそれに答えていたくらいで、こんな人が関わるのかと思っていました。」などと後日言われたものです(その後の仕事ぶりで評価が良い方に変わったというお褒めの言葉と、言われた当人は受け取っています)。

 映画では「はるか」やM-Vロケット1号機開発当時の映像や、衛星初期運用時のものを多く使っていますが、物語をつなげるために研究者自身による再現ドラマをやるはめになります。やる気のない素人にとって演技するのは苦痛なので、私は可能な限り出演しないようあれこれ言って逃げていたのですが、そこは恒常的人不足の宇宙研ですから半端な言い訳が通じずに、結果的にはいろいろなシーンでちょこちょこと出るはめになってしまいました。

 最初は逃げ腰で関わっていた仕事でしたが、ロケの手配を行い、シナリオをチェックして何回も書き直させ、編集作業やアフレコにも立ち会い、
・・・など結果的には様々な仕事をこなして完成した作品を鑑賞してみると、やはり愛おしいものです。正直に言うと、VSOPが終了したことについて平林、村田ほどの感慨は湧きませんが、「3万kmの瞳」がVSOPの記録作品として完成したことが私にとってはとても嬉しかったです。

 この作品、VSOPに関わってきた人々の苦労や努力の一端しか映すことができず、また製作上仕方のないことですが、打上げまでの過程を知らない人間(私)が画面に多く出ているため、開発時の非常に大変な時期に関わった方々に申し訳ない気持ちがしています。一方で終わり行くプロジェクトをこのような形で一つの記録として残すことができ、しかもプロジェクトが終了するタイミングで映像祭の賞を受賞することは何と素晴らしいことだろうと感じています。

 「3万kmの瞳」は通常の流通にはのらず一般の映像ソフト販売店ではお目にかかることはできませんが、日本の宇宙科学研究に関心のある方は是非機会を得て観ていただけたら幸いです。

(朝木義晴、あさき・よしはる)

「3万kmの瞳」科学技術映像祭、科学教育部門で賞を受賞:
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2006/0314.shtml

宇宙科学振興会「宇宙へ飛び出せ」ビデオシリーズ:
http://www.spss.or.jp/promotion/video.html

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※