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ISASニュース

再使用観測ロケット機体システム技術実証

No.411(2015年6月)掲載

 『ISASニュース』2015年3月号でエンジン試験、5月号でリサーキュレーション予冷システム試験の報告があったように、再使用観測ロケットの各技術実証試験が進められています。再使用観測ロケットでは、機体・エンジンを使い捨てずに繰り返し使う、そのために帰ってきて着陸する、飛翔中にどこかが故障しても安全に帰還する、というこれまでのロケットとは形態が大きく異なるシステムの構築を目指しています。従来のロケットにはない技術的な課題を解決するため、エンジンや機体システムに関する技術実証に取り組んでいます。

 昨年度は主に再使用エンジンの技術実証を進めてきましたが、今年度は機体システムに関する各種技術実証試験に取り組んでいます。これまでに推進システムの技術実証として、推進剤タンク内の液面挙動について極低温スロッシング試験、推進剤の吸い込みについてタンク液流し試験を実施し、機体からエンジンに液体水素/液体酸素を確実に送るための機能について実証しました。リサーキュレーション試験は2回目の試験を実施して、エンジン再起動前の予冷を行うためのシステム仕様とオペレーション方法を決める計画です。

 また構造系の技術実証として、着陸脚の衝撃緩衝試験と推進剤タンク断熱材の繰り返し使用試験を行います。さらに、飛翔中に推進システムから燃料の水素が漏れた場合の検知と安全に帰還するためのヘルスマネジメントシステムの構築を目指し、搭載型の水素センサの開発と検知システムの技術実証を行います。そして最も重要な技術実証の一つとして、小型モデルによる滑空試験を実施します。全長2mほどの小型実験機をヘリコプターでつり上げ、上空から滑空させ、安定した滑空飛行と着陸に必要な姿勢運動の実証試験を行う計画です。現在は、風洞試験による空力特性の取得、運動解析、機体および搭載品の設計・製作などを進めています。

 今年は、各種技術実証試験がめじろ押しの一年になりそうです。チームの皆さん、力を合わせて頑張りましょう。皆さま、応援をよろしくお願いします。

(野中 聡)

風洞試験による空力特性の取得

風洞試験による空力特性の取得