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ISASニュース

再使用観測ロケット技術実証エンジン試験

No.408(2015年3月)掲載

 角田宇宙センターの高圧液酸ターボポンプ試験設備に新設した、再使用観測ロケットエンジン試験設備にて実施してきた再使用観測ロケット用の技術実証エンジンのシステム燃焼試験を、2015年2月13日に終えました。2014年6月20日より、始動や定常推力などエンジンとしての基本性能を確認する試験、40〜100%推力スロットリングやアイドル燃焼、エンジン再着火など再使用観測ロケットに求められる高度な機能を確認する試験、100回再使用相当の負荷を与え、試験間にオンスタンドでの点検・交換を実践するなど、エンジンの寿命を確認する試験を実施してきました。

 再使用観測ロケットエンジンには、要求される性能と前述の高度な機能に加えて、高信頼化や長寿命化、点検整備性など、ロケットエンジンの低コスト高頻度再使用運用が求められます。これらの要求は将来の大量宇宙輸送システムに共通的に求められるものです。再使用観測ロケットエンジンはこれらを設計段階から考慮し、角田宇宙センターと宇宙研、三菱重工が長年にわたって蓄積してきた技術と最新の高信頼設計技術を用いて設計、製造されました。機能・性能・再使用性の観点で世界一のロケットエンジンです。

 最初はエンジンが言うことを聞いてくれず難儀しましたが、最後にはJAXA理事長ご臨席のもと、設計範囲を超える21%の低推力スロットリング試験に挑戦し成功するなど、エンジンを知り尽くした運転が可能になりました。再使用観測ロケットエンジンに要求される機能・性能・寿命・再使用性を実証できたのはもちろんのこと、再使用ロケットエンジンの設計・運用に関わる技術と知見を多く獲得することができました。得られた技術・知見は新型基幹ロケットエンジン開発にも生かされます。

 新規開発エンジンにもかかわらず事故なく最後まで試験を終えることができたのも大きな成果です。時には1日15回ものエンジンメイン着火をこなし、エンジンシステム燃焼試験回数は57回、累積燃焼時間は3838秒、エンジンの累積メイン着火回数は143回に至りました。今後、試験後のエンジンの詳細な分析・解析を行い、エンジン再使用のためのさらなる知見の蓄積を行っていきます。

(小川 博之)

エンジン燃焼試験の様子

エンジン燃焼試験の様子