宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

再使用観測ロケット・推進系技術実証試験
〜 リサーキュレーション予冷システム 〜

No.410(2015年5月)掲載

 2015年2月から3月にかけて、能代ロケット実験場の極低温推進剤試験設備を用いて、リサーキュレーション予冷システム技術実証試験を実施しました。リサーキュレーション予冷システムとは、ロケット推進系にとって重要な技術課題であるエンジン予冷量の削減(エンジン着火前にターボポンプなど推進系ハードウェアを冷却するために消費する極低温推進薬量を削減すること)の方法として、予冷推進薬を機外に投棄せずにタンクへ戻して再利用するシステムのことです。

 再使用観測ロケットのフライトオペレーションで想定されるエンジン予冷のタイミングは、打上げ前の地上予冷と、着陸直前のエンジン再着火前予冷の二つのフェーズがあります。着陸直前の予冷では、機体上昇時にエンジンの燃焼によって温度が上がってしまった推進系ハードウェアを、極低温推進薬を流動させることで再度エンジン着火が可能な状態まで冷却し、推進薬がエンジンに流入しやすい環境をつくり出す必要があります。その際に、電動ポンプを用いて予冷推進薬をエンジンから再びタンクへ戻す循環流をつくることで、エンジン予冷による無効推進薬量の削減を図ることを考えています。

 今回の地上試験では、再使用観測ロケットの推進系を模した小型のタンクと4基のターボポンプなどから構成される試験装置を用いて、循環予冷に必要な電動ポンプの性能および4系統のターボポンプをバランスよく予冷するオペレーション(予冷が進んだ系統はさらに推進薬が流れやすくなり予冷アンバランスは拡大していく傾向がある)を確認することを目的とし、相模原・角田・調布から職員20名ほどが参加し、液体窒素と液体水素を使ってそれらの評価に必要なデータを取得しました。

 本年度は、このリサーキュレーション試験の結果と合わせて昨年度に角田宇宙センターで実施したエンジンシステム燃焼試験で得られているエンジン予冷特性を評価し、再使用観測ロケットの予冷システム/オペレーションを決めていく計画です。

(八木下 剛)

リサーキュレーション試験装置の推進剤タンク内部

リサーキュレーション試験装置の推進剤タンク内部