IKAROSは2010年6月9日にセイルの完全展開に成功しましたが,その後の飛翔経路の詳細解析により,IKAROSが太陽光の力を受けて加速していることが確認されました.

光子加速確認のプレスリリース
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太陽光圧加速の確認方法は2通りです.
一つ目はドップラー,二つ目はレンジアンドレンジレート(RARR)による軌道決定です.

ドップラーは,ちょうど救急車が目の前を通り過ぎる前後でサイレンの音の高さが変化するのと同じ現象で,IKAROSが地球から遠ざかっているため,IKAROSから発信される電波の周波数が地上で受信されるときには変化します.この変化量から地球相対速度を割り出すことができるのです.
この地球から遠ざかる速さが,セイル展開の前と後で変化したら,それが光圧による加速ということになります.このようにして,ドップラーにより光圧加速が出たことを検出できるのです.

RARRは,上記のドップラー情報に加えて,IKAROSと地球の間の距離の情報を何日分か集めることで,IKAROSの軌道を正確にきめてやることができます.実はこのために,6/9のセイル展開以降の5日間,IKAROSはレンジングという運用をやっていて,これにより地球とIKAROSの間の距離のデータを集めていたのです.

ドップラー計測はほぼリアルタイムでできるため,この加速自体はセイル展開を行ったときに運用室で見られていました.しかしこのドップラーの情報だけでは,「地球から遠ざかる速さ」という一次元の情報が分かるだけです.また,セイル展開直後には,光圧以外にも,セイルに付着していた物質が気化して推力を発生するなども考えられるため,これが真に光圧による加速であると言えるためには,RARRによる軌道決定による必要がありました.

このほど得られた軌道決定結果により,IKAROSは宇宙ヨットとして,太陽光圧をしっかり受けて,まさに太陽系空間を「ソーラーセイリング」していることが確認されたのです.