またもや遅れてしまい,申し訳ありません(汗).
本日…というか昨日の運用もIKAROSの探索に
全力で臨みましたが,残念ながらIKAROSからの電波を
確認することは出来ませんでした.


前回のブログで,Y2さんから
詳細説明願いが出ていましたので,
僭越ながらご説明させて頂きます.

現在,IKAROSとの交信を復帰させるための条件は,
大きく『姿勢』と『軌道』に関するものに分けられます.

①まず,IKAROSが電波を発するためには,
IKAROS自身が電力を確保することが大前提と
なるため,太陽電池(+Z面)をある程度
太陽方向に指向させる必要があります.

②また,現在の地球距離でIKAROSからの電波が
地球に届くほどの強度になるためには,
アンテナがある程度地球方向に向いている必要があります.

この①,②が『姿勢』に関する条件です.

③IKAROSがきちんと電波を出していた場合でも,
地上局側のアンテナを,正確にIKAROSが飛んでいる
方角に向ける必要があります.
そのためには,ある時刻で,IKAROSがどこを
飛んでいるかを正確に知っている必要があるのです.

この③が『軌道』に関する条件です.

①,②,③の条件が全て整って,初めてIKAROSとの
交信が確立されます.
IKAROSが打ち上がって以来,冬眠運用に入るまで,
ほとんど常時,上記の条件がそろっている状態だったので,
IKAROSとの通信が問題なく行われていました.

逆に,通信が行えることで姿勢や,軌道の情報を
随時アップデートすることができ,
より正確な情報を把握することが出来ていたために,
上記の条件を満たすことが出来ていました.


しかし,冬眠モードに入ってからは,姿勢や軌道は,
予測するほかなくなりました.通信できないので,
情報のアップデートが出来なくなったためです.

では,どう予測するかということになりますが,
基本的にはこれまで蓄積してきたIKAROSに関する
知識をフル活用して,運用チーム内みんなで解決策を
話し合い,一番可能性が高いであろうことを解析
したりするわけです.

具体的には,まず姿勢を予測します.
これまでの運用の成果として,得られた姿勢データから,
太陽輻射圧によって,どのように姿勢が遷移していくか
という姿勢運動のモデルが構築されています.

このモデルを応用して,冬眠後の姿勢(スピンレート含め)を
予測します.もちろんモデルには誤差がつきもので,
ある程度,モデルの中のパラメータに幅を持たせて,
シミュレーションしまくるのです(主にY3が…).

その姿勢のうち,運用日当日に①,②の条件を
満たすような姿勢を割り出し,その姿勢を基に,
さらに軌道を予測し,③の条件が満たされることを信じて,
アンテナをその予測方向に振るのです.

難しさは,ソーラーセイル特有ですが姿勢が
軌道にカップリングしていることにあります.

ソーラーセイルは,大きな帆がどこを
向いているかによって,加速したり,減速したりします.
つまり姿勢が異なると,上記の①,②が満足できないだけでなく,
その異なる姿勢によって軌道までが変わってしまい,
③の条件も満足できないことになってしまうのです.


だいぶ長くなってしまいましたし,そろそろ眠いので
帰ろうかと思いますが,このような厳しい条件の中でも
運用者は,誰一人として諦めていません.
(もちろん,厳しいとは言え,これまでの実績をベースとした
解析や運用方針から,発見できる見込みは十分あると
思っているからというのが強いですが)

皆,それぞれ別のプロジェクトを抱えていたりで,
中々手が回らなかったりしますが,常にIKAROSのために
何が出来るかを考えています.

その理由が何かと思い返すと,もちろん我々自身の
IKAROSに対する思い入れというのもありますが,
応援して下さる方々がいるからだと気付かされます.

このように述べている私も,他プロジェクトの業務に
溺れている最中,『ねぇねぇ,ちょっといいかな~?』
と,寄ってくる人の猛攻に耐えかね,
『イ,イカロスシミュレーション…で,できねぇ…』と,
溺死してしまいそうになることが多々あるのですが,
そんな時,送って頂いたメッセージや,Twitterからの
応援メッセージ,このブログへのコメントの数々を思い出し,
背中を押されている気がします.

つまり,こういうことです.
『皆さんの応援,メッセージ』
    ↓
『IKAROS運用者,解析する人の座屈しかかった気持ち』
    ↓
『運用・解析頑張る』
    ↓
『IKAROS見つかる』

皆さんの応援がIKAROSの発見につながっています!
ええ,もちろん,なくても運用者は頑張るのです.
ですが,あった方がIKAROS発見の可能性は上がります.
(少なくとも,私の気持ちは上がります!)

ですので,皆様の暖かいご声援,これからもどうか
よろしくお願い致しますm(_ _)m

あ,ちなみに,前回Y2さんが仰っていた通り,
確実なことは言えませんが,解析によると
数か月前に比べると,①~③の条件が揃う可能性が
少なからず上がってきていると思われます.

次回運用は,6月28日です.
お楽しみに!(Y3)



6/14のIKAROS
太陽距離: 0.91AU
地球距離: 209691003km, 赤経=41.1°, 赤緯=13.0°
金星距離: 1.15AU(171583501km)
姿勢: スピンレート=---rpm,太陽角=---°

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.91AU
Earth Distance: 209691003km, RA=41.1deg, Dec=13.0deg
Venus Distance: 1.15AU(171583501km)
Attitude: Spin Rate=---rpm, Sun Angle=---deg