IKAROSブログの更新が遅くなってしまって大変申し訳ございません.
私は文章がすらすら出てこないので,会議等急ぎの仕事を終えた後に
夜にじっくりブログの構想を練ることが最近のパターンとなっていましたが,
今回は翌日早朝から出張が入っており,さらに・・(以下,言い訳省略)・・

すでに,11/15のブログでRさんから紹介されていますように,11/14,15の
運用にてリオリを実施しています.

推進薬が残り少なくなっているので,いつどのように噴射するか判断が難しく
なっています.本来は,姿勢がどのように変化するかじっくり見極めたうえで
方針を決めたいのですが,スピンレートの絶対値が大きくなっている
(「逆スピンアップをしている」or「逆スピンレートが速くなっている」)
ので,決断が遅くなるほど噴射効率が悪くなるというジレンマが発生します.

そこで,今後やるべき(やりたい)ミッションを改めてメンバーで確認し,
今回のリオリはこれらのミッションの実現にとって有利であるということから
実施することを決定しました.その中にはもちろん,「長期運用を実施し,
ソーラーセイルの航行記録を伸ばす.」というミッションも入っています.

なお,最近は,リオリ中にビーコン等でタンク内の圧力をモニタしています.
これについて少し解説しましょう.
2011/4/8のブログでも紹介しましたようにIKAROSは推進系として
「気液平衡スラスタ」を採用しています.
これは推進薬を液体として貯蔵し,蒸気ガスとして噴射するタイプで,
蒸気ガス噴射後,すぐに液体の推進薬が気化するため,
タンク内は飽和蒸気圧と一致します.しかし,推進薬が残りわずかになると,
推進薬がすべて蒸気ガスとなり,噴射するたびに圧力(推力)が低下します.

これを利用し,タンク内の圧力データが飽和蒸気圧と一致するかどうかで
残推進薬量が一定値を下回ったかどうか確認できます.さらに,
一致しない場合は蒸気圧から残推進薬量を精度よく計算することができます.

残推進薬量を正確に知ることは運用上も非常に重要ですが,気液平衡スラスタ
の性能を知る上でも大事です.この推進系は新規開発品であり,最大の課題は
蒸気ガスと液体を無重力状態で分離し,蒸気ガスのみを噴射することです.
噴射履歴と残推進薬量を組み合わせることで,これまで本当に液体噴射を
していなかったか確認することができます.
これもまた,やるべき(やりたい)ミッションの一つなのです(O).

次回の運用はすでに終わっています・・


11/14のIKAROS
太陽距離: 0.76AU
地球距離: 197991333km, 赤経=-164.0°, 赤緯=-4.4°
金星距離: 1.36AU(207580708km)
姿勢:スピンレート=-3.0rpm, 太陽角=32deg

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.76AU
Earth Distance: 197991333km, RA=-164.0deg, Dec=-4.4deg
Venus Distance: 1.36AU(207580708km)
Attitude: Spin Rate=-3.0rpm, Sun Angle=39deg


P.S.
・はやぶさ映画の試写会に行ってきました.
 IKAROS関連のシーンがたくさんあり感動です.
・たくさんの人に本を読んでいただきうれしく思います.