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Category: Operation
Posted by: IKAROS
たびたび更新が遅れて申し訳ありません.
9/15の運用では,アンテナをLGA1に戻してビーコン運用を行いました.
レンジングやHKデータの取得は,試みていますが電波が非常に弱いためデコードできません.
しかし,何か,何とか引き出せる情報がないか,いろいろ解析を試みています.

その一つ,前回も予告していましたが,推進系を使った運用も行いました.
姿勢制御によって発生電力を確保できるように太陽の方向を向いたり,
十分な通信ができるように地球の方向を向いたりするほどの推薬は残っていませんが,
探査機本体のスピン状態を少し変化させるくらいの推薬は,わずかに残っています.

このスラスタ噴射により姿勢がどのように変わるのか調べることで,
探査機,セイルがどのような状態にあるのかある程度推測できます.

このような背景で,昨年の11月以来,約10ヵ月ぶりの噴射を行いました.

詳細は評価中ですが,少なくともセイルがちゃんと「ある」ことは確かなようです.
(セイルがちぎれて飛んでいってないか,それなりに心配していました.)
そして,推進系が壊れていないことも確かなようです.
このようなことを一次情報として,いろいろな推測が可能となってきます.


さらに,各ミッション機器を立ち上げ,カメラによるセイルの撮影も行いました.
テレメトリが取れないため画像も取得できず,撮影ができたかすら確認できませんが,
全く同じような運用を冬眠直前の昨年の12月13日にも行っています.
http://www.isas.jaxa.jp/home/IKAROS-blog/?itemid=977
同日のブログを読んでいただければ主旨が伝わるかと思いますが,
いつか十分な通信が確保できてテレメトリが取れるようになったときに向けて,
「今」のセイルの状態を撮影して残しておく「未来への贈り物」です.


このように,何とか情報を引き出すための解析のほか,
将来にできそうなことのために今できること,などあれこれ試みています.



さて,IKAROSが見つかって怒涛の10日間が過ぎました.(更新が遅れたので.)
いままでの8ヵ月に及ぶ「応答のない」探索期間は本当につらいものでした.
こどもの頃からの経験からするとこのような探し物は往々にして見つからないものですが,
うまく電波を見つけることができ,本当に嬉しく思います.多くの方のご支援のおかげです.

いつもは閑散としていた運用室にも,賑やかな議論の場が戻ってきました.
かつてのセイル展開運用や逆スピン運用の頃を思い出して感慨深くなってしまいます.
ろくに役にもたっていませんが,このIKAROSチームに所属して運用ができることを
すごく幸せに感じております.


開発期間やコストの厳しい制約の中で,成立解を見出すために妥協しながらも,
IKAROSミッションは常に高い目標を掲げ,それを成し遂げてきたと考えています.
しかし今回,というよりセイル展開成功して以来何かを達成するたび感じてきたことですが,
ひょっとしてもっと高い目標を持ってもよいのでは,とふと思うことがあります.
テストで満点をとることは素晴らしいことですが,それでは実力を測るには不十分です.
問題を作った先生にもっと難しいテストを要求しなければなりません.

昨年の春頃は,「逆スピンをやるなんて,自殺行為だ」とあきらめかけていました.
昨年末には,「冬眠から目覚めて通信なんて,さすがに難しいよね~」とフラグを立ててました.
いずれもちゃんと達成できました.その成功の背景には,ちょっとした「幸運」に加えて,
実現するための方策を丁寧に検討し対策したことが挙げられます.
そして何より,失敗覚悟でより高い目標にチャレンジしてみなければ
達成できるかどうかすらわかりませんでした.


ソーラーセイリングは世界で誰もやったことのない,轍のないミッションですので,
何がどこまでできるのか,参考になる事例がありません.
冬眠運用から明けた今,これからどうするのか.
世界初のソーラーセイルIKAROSは,やればやるほど成果が上がる最高の立場にあります.
「もう十分だ」とは思いません.もっと高い目標を立てて先に進みたいと思います.


...IKAROSが見つかって舞い上がってよくわからない文章になってしまいましたが,
要するに「もっと運用したい!!」ということです.


次回の運用は,かなり間が空いてしまいますが,10/13(土)に行う予定です.
それまで,たくさんのデータの解析を進めたいと思います.(Y2)


9/15のIKAROS
太陽距離: 0.74AU
地球距離: 250566834km, 赤経=160.4°, 赤緯=10.0°
金星距離: 0.97AU(144901422km)
姿勢: スピンレート=**rpm,太陽角=**°

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.74AU
Earth Distance: 250566834km, RA=160.4deg, Dec=10.0deg
Venus Distance: 0.97AU(144901422km)
Attitude: Spin Rate=**rpm, Sun Angle=**deg
Category: Operation
Posted by: IKAROS
本日の運用では,LGA1からMGAに切り替えてビーコン運用に成功しました.
(イカロス君は見慣れないコマンドにちょっと戸惑っていたみたいですね)

このMGAは,IKAROSのために新たに開発した機器であり,IKAROS搭載品で
これまで出番のなかった唯一の機器でした.
今回の成功でIKAROSはすべての開発品で成果をあげたことになりました.

アンテナ切り替えにあたり,タイムラインコマンド(時刻指定コマンド)
を復活させました.また,次回の運用で推進系を使ってセイルの状態を
確認するミッションを行うために,通常のヒータ制御も再開しました.


さて,先週ついに冬眠明けのIKAROSを見つけることができました.
多数のお祝いメッセージをいただき,改めてたくさんの方々に応援して
いただいていたことを実感しました.本当にありがとうございます.

今回IKAROSが見つかった意義について述べたいと思います.

IKAROSは,太陽の光を受けて姿勢および軌道が変化します.
これはまさにソーラーセイルのメリットであるのですが,
逆に,姿勢・軌道がどのように変化するか予測できなければ
IKAROSを見つけることができないことを意味します.

もちろん,1.5年の運用実績からIKAROSの姿勢・軌道がどのように変化
するかはある程度予測することができます.
しかし,これまでは推進系を噴射して積極的に姿勢・軌道を調整する運用
をあわせて行っていたために長期間の予測は未知の領域となります.
また,臼田のアンテナで探せる範囲は非常に狭く,少しでもずれると
IKAROSを捉えることはできません.

それならば,アンテナを予測値周辺でふって網羅的に探したいのですが,
運用日数(運用費)が増えます.すでにフルサクセスを達成したIKAROSの予算
は非常に少なく,いろいろとやりくりして2週間に1回程度の運用がやっとです.

<はやぶさの探査では,軌道変化を考慮する必要はなく,
 ほぼ毎日運用できましたので,はやぶさと比べてもずっと厳しい条件ですね>

IKAROSが見つかったということは,姿勢・軌道を長期的に精度よく予測できる
ようになったことを意味します.IKAROSの運用を今年度延長するにあたり
提示した以下の研究テーマに対し,すでに大きな成果が得られたと言えます.
「IKAROSが長期間制御を行わなかった場合の運動を理解する」

ところで,改めて探索運用を振り返って,最もつらかったのは,
「何も反応がないこと」でした.

IKAROSが見つからない理由として,まずアンテナの向きが悪いことが
考えられますが,どれだけずれているか知るすべはありません.
まだ冬眠から復旧していない可能性もあります.
そもそも,故障してしまったかもしれません.
1回7時間ずつ,何か月にもわたってIKAROSを呼びかけているにもかかわらず
反応がないと,さすがに精神的にこたえます.

そんなチームを支えてくださったのは,皆さんの応援でした.
(お守り・お札もたくさん贈っていただきました)
本当に本当に感謝しています.

たくさんのお祝いをいただき,IKAROSが見つかった一番の意義は,
皆さんとまた宇宙ヨットの旅ができることだと実感しました.

「君も太陽系をヨットに乗って旅しよう!」(O)


9/13のIKAROS
太陽距離: 0.73AU
地球距離: 1.67AU(249137896km), 赤経=158.1°, 赤緯=10.8°
金星距離: 0.96AU(144329539km)
姿勢:スピンレート= ** rpm, 太陽角= ** deg

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.73AU
Earth Distance: 1.67AU(249137896km), RA=158.1deg, Dec=10.8deg
Venus Distance: 0.96AU(144329539km)
Attitude: Spin Rate= ** rpm, Sun Angle= ** deg


P.S.
・次回の運用は9/15(土)の予定です.
・最近,相模原キャンパス内で捕まえたカブトムシが卵を産みました.
・最近,水ロケットを作って息子と一緒に飛ばしました.とても楽しいです.
・イカロス君グッズの紹介です.
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Category: Operation
Posted by: IKAROS
 IKAROS-Blog.をいつもご覧いただきありがとうございます。KYです。

 だいぶ遅くなってしまいましたが、9月8日(土)のIKAROSについて、ご報告させて
頂きます。

 平成24年1月6日までに冬眠モード(発生電力低下による搭載機器シャットダウン)に
移行したことを確認して後、今年度に入ってからは月2回の運用ペースでIKAROSが冬眠
から明けて元気な声を送ってくれないと確認する運用を続けてきました。

 そして、平成24年9月6日(木)にIKAROSらしき電波を発見し、同8日(土)にIKAROSで
あることを確認しました。

 ここまで頑張ってこれたのも、IKAROSチームの皆が決してあきらめず試行錯誤を繰り
返しながら作業を続けてきたこともありますが、支え、後方支援してくださった関係者
の皆様、そして何より応援し続けてくれた皆様のおかげです。

 この場をお借りしまして、お礼を申し上げさせて頂きます。


 本当にありがとうございました!!!

 今後は、膜面形状データ及び姿勢運動データの取得を可能な限り行い、並行して
各種解析作業を実施していく予定です。
 これらの成果は将来のソーラー電力セイル宇宙機検討に繋げていきます。

 どうか今後とも、皆様の応援をよろしくお願いいたします。





さて、9月6日(木)、9月8日(土)は現場は、実際以下のような感じでした。


【9月6日(木)】

 この日もいつもと変わらぬ始まりでした。
 運用開始1時間前頃に、その日の担当がワラワラと集まり出し、おもむろに運用前の
全体作業方針、運用手順、主な作業担当の確認が行われました。
 
 そして探索運用の始まりです。

 1回の運用時間内で探索できる方向は非常に限られているので、数パターンの考えに
基づいた探索方向を見極め、コマンド(指令)を送りつつも探索していきます。
 いつもは、一通り確認した後、別データでも確認しながら、怪しそうな信号があれば、
再度その方向に向けて同じ信号が確認できるかを確かめるのですが、運用も後半に差し
掛かった頃、この日はY2さんが血相変えて叫びました。

 「明らかにいつもの見え方と違う信号がありました。」

 確認すると、確かにいつもの信号と明らかに違うものです。
 臼田局の運用者の方にも確認しました。

 「同感です!!」

 早速、再度同じ信号が確認できるか確かめてみました。

 「やっぱりある!!」
 「確かにいつもの見え方と違うねぇ」
 「よし!!このままモニタを継続!!」

と叫んでいる裏で、みんな顔は疑心暗鬼・・・。「IKAROSではない可能性」を否定する
ための、あーだ、こーだ、あーだ、こーだが続きます。

 「他の人工衛星や探査機という可能性は?」
 「通っている軌道が皆違うので、こんなに継続して見えるはずはない」
 「近くで同じような電波を発している可能性は?」
 「アンテナが比較的上向きなので、その可能性も低いだろう・・・」


                                (...ふにゃ?)


運用が終了しても、議論が続き、残るは頼みの綱、IKAROS VLBI機器担当THさんの解析
作業による確認結果を待つのみ・・・。

 夜も更けた頃・・・。THさんが一枚の紙を持ってきてくださって。

 「IKAROSに間違いなさそうです!!綺麗に見えてます!!」

 あとは、次の運用でIKAROSからの信号が予想しているあたりに見えていることを期待
しつつ、運用作業中に何をすべきか必死に検討・準備して臨むのみ・・・。


【9月8日(土)】

 いつもよりIKAROS運用室の人が多い!!
 運用開始前の確認作業では、前日にチーム内で議論した運用作業中にやるべきこと、
運用中の様々なステップと確認事項、その確認結果がOKだった場合やNGだった場合の
次にやるべきことを再度確認します。  

 みんな、ドキドキ・・・ワクワク・・・。今日も見られるかな・・・あの信号・・・。

 不安そうな顔している人や、笑顔が絶えない人、無表情な人、いろいろです。
 でも、運用作業はたんたんと冷静に進める必要があります。

 そして運用開始。
 しばらくして、臼田局の運用者の方から音声が届きました。

 「信号確認しました!!」

 みんな大騒ぎ!!・・・とはいきません。まだまだ作業はたくさんあります。
 臼田局から発信された電波が、IKAROSから折り返されて帰ってきたのを確認した途端、
みんなの動きが慌ただしくなってきます。。。

 「スピンレートは?」
 「姿勢の状態は? 太陽角は?」
 「もうちょっと信号が綺麗に見えるように、スペアナの設定変えられないか?」

   ・
   ・
   ・
   ・
   ・

 「おおぉぉぉっ!! 綺麗に見えた!! IKAROS!! (イッカロス♪♪)」

 「これなら、ビーコン運用もできそうだね♪」 
 
 



 次回の運用は9月13日(木)の予定(もう明日)です。


( KY )


P.S.
 9月6日、8日の現場の様子は、私の記憶をたよりに書いていますので、若干大袈裟な
表現としてチーム員からクレームが入るかもしれませんが、そこは何卒ご容赦ください。

 暴走(妄想?)する前に見つかって良かったです。(いや残念・・・) 
 そろそろ、督促されてる健康診断受けにいかなきゃです。。。





9/8のIKAROS
太陽距離: 0.73AU
地球距離: 1.64AU(245539275km), 赤経=152.1°, 赤緯=12.9°
金星距離: 0.95AU(142835463km)
姿勢:スピンレート= ** rpm, 太陽角= ** deg

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.73AU
Earth Distance: 1.64AU(245539275km), RA=152.1deg, Dec=12.9deg
Venus Distance: 0.95AU(142835463km)
Attitude: Spin Rate= ** rpm, Sun Angle= ** deg





9月8日は何の日?

 ・IKAROSチームで良かったなぁ♪と実感した日

 ・日米安全保障条約調印(1951年)





Category: Operation
Posted by: IKAROS
本日,IKAROSの探索運用を行いました.
臼田の64mアンテナの方向を定め,コマンドを送っては
電波が返ってくるのを祈る運用.
IKAROSが地平線にしずむ時間になると運用を終えますが,
そのあとも受信電波の記録をひっくり返して,信号を探す作業が
続きます.

ぼくたちは何故IKAROSを探し続けているのだろうか.
それは,執念のようなものです.
ソーラーセイルの研究を立ち上げて,9年が経ちます.
IKAROSの開発開始からは5年が経ちます.
それだけ心血を注いで作り上げたのがIKAROSです.
今でもIKAROSの運用は,そのときからのチームメンバーが携わって
います.

それは,IKAROSを計画して,作り上げた人間の意地のようなものです.

もう十分以上の成果があがったではないか. いやいや.
もう十分多くの皆さんから応援をいただいたではないか. だからこそ.
まだまだぼくたちはやれます.

見つからない可能性は低くはありません.
しかし,見つかる可能性もまたゼロではありません.
そこに何かを賭けることができるメンバーが,今のIKAROSを支えて
います.

ひとたび電波が見つかれば,点と点を結んで線になるように,
IKAROSが冬眠中何をしていたか,がわかります.
誰に知られることなく,IKAROSのセイルは,光を受けて,加速を続けています.
それができるのは,太陽光をエネルギーとして推進するIKAROSならではです.
加速はIKAROSがやってくれている.あとはそれをぼくたちが確認するだけなのです.

光圧加速の一端を知るために,IKAROSの人知れずの努力を何とかわかってあげるために,
IKAROSへ問いかけ,祈るように信号を解析する作業が,今日も続いています.(Y)

※以下の軌道情報は,参考値です.
9/6のIKAROS
太陽距離: 0.73AU
地球距離: 1.64AU(244659037km), 赤経=150.6°, 赤緯=13.4°
金星距離: 0.95AU(142493414km)
姿勢: スピンレート=---rpm,太陽角=---°

Today's IKAROS
Sun Distance: 0.73AU
Earth Distance: 1.64AU(244659037km), RA=150.6deg, Dec=13.4deg
Venus Distance: 0.95AU(142493414km)
Attitude: Spin Rate=---rpm, Sun Angle=---deg